Nicotto Town








夢は咲き終わったが
少しだけ高く聳えていた
自分を凌駕するものと闘うためにではなく
目に入る世界を見守るために
僅かに高い背丈を与えられたからだ
虫たちが地面を覆って鳴いても
やがて静寂が訪れる
虫の音の絶えた日を誰も憶えてはいないが
僅かに高い背丈を与えられたものだけが
その無言を聴く

巨大な門が開かれていく夜
その奥にかがり火が見えてくる
誰が見たのでもない
全ての者たちに見えてしまうかすかな炎
見ることはちいさな意志に過ぎないが
見えてくることは宿命であるかのように
時をまたいで更に暗闇の深くに
赤く揺らいでいる

私の時計は家具たちの隙間に納まっているので
夕暮れに取り囲まれると文字盤が見えなくなる
顔が亡くなった人のように
こちらを見ているのだけが分かる
時がいつからそこに置かれたのか
思い出そうとしてぼんやりしていると
人が次々とやってきては
断崖から落ちていくのが見える
落ちていくのか上昇していくのか
本当のところは誰にも分からないのだが・・・

文字盤の顔が薄闇に溶けると
時たちはほんとうの自分を取り戻す
それらが周りからじっと見つめてくるので
私も加わろうと 暗く透き通り始める





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