最期の夜月
- カテゴリ:自作小説
- 2025/06/04 22:48:28
第三十一章
食事は採れなかったが、身体が疲れていたのだろう…彼はうとうととし始め、…「肇さん?そろそろ眠ろうか?」と尋ねた。…「美月さん、今日も一緒に眠ってくれるの…?」と目を擦りながら聞く彼に…「うん」と私は答えた。…「…今日は美月さんの方向いて寝ても…良い?」と聞く彼に対し、…「大丈夫よ」と私は答えた。…「それじゃあ、そろそろ寝よっか?」と私が聞くと彼は素直に…「うん」と二つ返事で答えていた。…同じタイミングで寝るのはまだ怖いかもな…と感じた私は…「肇さん?先にベッドに横になってて?」と彼を睡眠へと促す様に言った。彼はいつも以上に素直に…「うん…」と疲れた身体と共に寝室へと向かっていた。…「美月さん、それじゃあ僕先に寝かせて貰うね…」と言葉を残し、寝室へと入って行った。…「おやすみ」と声を掛け、私は数本の煙草を吸う事となる。1本の煙草を取り出し、私が考え始めたのは…リスカか…どうしたもんだろうか…先ずは、リスカで逃げてしまっている事に気付いて貰わないとかな…それから…下手したら死も有り得る…これは危険すぎるな…兎に角私が肇さんの身体を労わってあげなくては…と考えだした私の思考だ。…それと、もっと自分を大事に出来るようにして貰わなきゃな…と2本目の煙草へと手が伸びていた。…後は、きっと癖になってしまっているだろうから…私の目に常に届く様にしておかなくては…と考えに耽って行く。…病院にも行って貰うべきだろうか…色々と考えが巡る。…兎に角彼を「一人」にしてはいけない…そんな考えに耽りつつ3本目を吸っていた。大きく呼吸をする様に煙草の煙を吸い込み、細く長く煙を吐き出していく。少しづつ纏まって来た思考に…私もそろそろ寝ようかな…と考えをそちらへと向かわせ、寝る支度をし始めた私だ。…さて、歯磨きでもしよう…そう思い洗面所へと向かった。私は歯磨きを済ませ、寝室へと行く事にした。…肇さんはもう寝ちゃったかな…と静かに寝室を覗く。…彼は私の方を向きぐっすりと眠っているかの様に見えた。私はホッとし、…一緒に寝よう、とベッドへと腰を静かに下ろした。…あぁ、そうだ…香水でも纏おうかな…と思った私はドレッサーにある数本の中から、フォーメントの香りを選んだ。軽く香水を纏い、ベッドへと潜り込む…。私も彼の方を向きながら、横になった。彼の少し長めの髪を触り、頭を撫でた。…「今迄良く頑張ったね」と小さな言葉を彼へと言い、返って来るはずのない言葉を呟いていた。…ぼんやりと彼を眺めつつ、頭を撫でながら私も深い眠りへと落ちて行った。その言葉を彼が聞いていた事は知る由もない。…良い香り…と僕はぼんやりとしていた。…美月さんの…香りか…と頭の回らない思考で考え始めた。美月さんは僕を労う様な言葉を言ってくれていた。…とても優しい香りと言葉に僕は涙が流れていた。美月さんはすっかりと眠ってしまっていた様だった。…僕の頭を撫でていてくれた手もとても温かい…。僕は彼女を起こさない様に、そっと彼女に触れてみた。頬に手を当て、撫でた。…美月さんはとても優しい人だ…僕は彼女の寝顔にそっとキスをした。…僕は、彼女のとても心の広い優しさに惹かれたのかもしれない…。そんな事を思いながら、彼女に触れ続けていた。…んんん…と少しば
かり起してしまい兼ねない感じがした僕は、そっと彼女に触れていた手を離す事にした。