Nicotto Town



横浜大空襲と大岡川の桜


5月29日は横浜大空襲の日。
母方の親族は中心部から外れた郊外に住んでたおかげで生き残り、
そのおかげで私も生きているわけなのだと自覚するのが恒例の行事。

終戦間際の7月、母と伯母は海岸で偵察機から射撃を受けた。
岩陰に隠れ命を拾った話を聞いた。そういうものなんだよな、と思う。
父は疎開先で地元の子供と喧嘩に明け暮れ生き延びた。これまた、そういうもの。

瓦礫の山だった市街地に米軍の重機が轟音と共に現れ、
あっという間に瓦礫を片付け整地し臨時の飛行場を作るのを見て、
こんな国と戦争して勝てるわけないと考えた父は米兵相手の商売を始めたそうな。

母の生家近くで結核が流行ったころ、闇で抗生物質を手に入れてくれたのは、
戦後日本人の侮蔑と軽蔑の対象、洋パン(米兵相手の売春婦)だった。
オンリーさん(米軍下士官あたりの囲い者になった女性)も尽力したそうな。

ハマが復興し繁栄するのを眺め、大岡川周辺に桜が植えられ名所となり、
ハマの人間なら春になると大岡川の桜を眺めにいくわけですが、
おお今年も綺麗だなぁ、という感慨以外にもうひとつ、よぎる想いがある。

桜の樹の下に屍体があるのかは知らないが、
戦争の残滓が山ほど眠っているのは確かである。
そのため河畔の桜は長持ちせず、定期的に植え替えが必須。

まさにこれこそ人の生である、と嘲笑したくなる。
悲惨の上に仮構された偽りの美しさが大岡川の桜だ。
この想いを共有できるものだけがハマっ子を名乗れるという偏見がある。

あらゆる美辞麗句で飾り立てられた偽りの生が世界を席巻する。
力はただ示される。財も才覚も無いものは滅んで宜しい。
この世界を築き上げたのは疑いもなく、我々という瓦礫なのである。





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