【小説】先生を好きになってもいいですか?(改)⑫
- カテゴリ:自作小説
- 2025/05/30 23:55:36
【らくがき】
12月ーーーーーーー
その事件は、ある日、突然、起こった。
黒板の上の真新しい白い壁に真っ赤なペンキででかでかと、
『愛しあってるかい!』
って書かれてあった。
書いた犯人は、すぐ分かった。
米ちゃんだった。
みんな、米ちゃんがどうして書いたのか聞いたけど、
「書きたかったから。」
って、返事。
朝のホームルーム。
担任の土田先生が、誰が書いたか聞いた。
米ちゃんは
「私です。」
と答えた。
土田先生は
「わかった。」
の一言だけだった。
放課後、私は米ちゃんを責めた。
米ちゃんは大声で泣き叫び教室を飛び出していった。
私はしばらく、米ちゃんが戻ってくるのを教室で待った。
でも、米ちゃんは戻ってこなかった。
―――自殺!
の、一言が頭をよぎった。
私は慌てて、米ちゃんのカバンをもって、米ちゃんの家に行った。
でも、米ちゃんは帰っていなかった。
カバンをもって押しかけたことで、米ちゃんの家族にも心配かけてしまった。
私はどうしていいのかわからなかった。
そんなとき、水原先生の「何でも相談にこいよ。」の言葉を思い出した。
私は学校に戻り、社会科準備室に行った。
私はノックもせずに社会科準備室に入って、水原先生に
「米ちゃんが自殺するかも知れない!!」
って、叫んだ。
「井上!落ち着け!話がわからん。」
「今朝、新しい教室の壁に落書きがあって、それを書いたのは、米ちゃんで、私は放課後、米ちゃんを責めたんです。」
「そうしたら米ちゃん、大声で泣き叫び教室を出て行ったんです。」
水原先生は難しい顔をして、
「わかった。とりあえず、教室にいってみよう。」
教室ーーーー
泣きながら白いペンキで落書きを消している米ちゃんがいた。
「米ちゃん――――」
声をかけようとした私を水原先生は止めた。
そして、米ちゃんが落書きを消し終わるまで、黙って見守っていた。
米ちゃんが消し終わった。
水原先生が
「米田は俺が送っていく。井上は俺が戻ってくるまで、待ってるか?」
「はい。」
先生は米ちゃんに声をかけた。
「えらかったな。家まで送っていくよ。かばんは井上が家に届けたそうだ。」
米ちゃんは水原先生と帰って行った。
誰も居なくなった教室。
真っ赤な文字は、米ちゃんの心だったのだろう...。
それを消させたのは、私だ...。
それから、どれくらいの時間が過ぎたのだろう。先生が戻ってきた。
「先生!」
「米田は、大丈夫だ。」
私は我慢していた涙があふれ出た。
そんな私を、先生は優しく抱きしめてくれた。