Nicotto Town



【小説】先生を好きになってもいいですか?(改)⑪



【そうじクラブ】

10月もなかばーーーーー

米ちゃんが朝早く登校してきて、校庭や校舎のまわりのゴミを拾い始めた。
智子も深沢さんも一緒にゴミ拾いを始めた。
クラスの男子の川崎君と山田君もゴミ拾いを始めた。
私もゴミ拾いを始めた。
吉川君も参加してくれた。
川崎君や山田君は後輩にも声をかけてくれた。

ゴミ拾いを始めてから一週間目くらいに、朝早くから、水原先生が激励に来てくれた。
「ゴミ拾いをしようなんて、よく思いついたな。」
先生は私に話しかけてきた。
「嫁ちゃんの提案なんですよ。K校はゴミだらけって言われてるからって。」
「ゆくゆくは、街のゴミ拾いもしたいって、大きな目標持ってるんですよ。」
「凄いでしょ。」

でも、2週間もしないうちに、米ちゃんはゴミ拾いをしなくなった。
川崎君たちが私に聞いてきた。
「ゴミ拾いしはじめた米田がやらなくなったけど、俺たち、井上がつづけるんなら、ゴミ拾いつづけるつもりなんだけど、どうなん?」
「なんで、私?」
「一番、真面目で熱心やん。」
私はしばらく考えた。
私は米ちゃんがすきだ。だから、米ちゃんのやり始めたゴミ拾い続けようと思った。
「私は、ゴミ拾いを続けようと思う。」
「よっしゃ、明日からも、がんばろうな。」
私たちのゴミ拾いは別名『そうじクラブ』と呼ばれるようになった。

私は無我夢中でがんばった。
心配した水原先生は私を社会科準備室に呼び出した。
「井上、ゴミ拾い、大丈夫なのか?」
「首謀者の米田はやめたそうじゃないか。」
「今は、井上がリーダーか?」
「不本意ながら、そうなってます。」
「なんか手伝えることがあったら、何でも言えよ。」
そういって、朝のゴミ拾いを手伝ってくれた。

他のクラスメートは、
「どうして受験の追い込みのこの時期に始めたのがわからない。」
と言って参加はしてくれなかった。
北原さんも松永さんも美緒もちあきも、小林さんまでも、そうじクラブには参加してくれなかった。
仲良くなれたつもりだったから、悲しかった。

ゴミ拾いをしても、校内のゴミのポイ捨てはなくならなかった。
そこで、私はアンケート方式のチラシを作って、各クラスに配ってもらおうと考えて、水原先生に相談してみた。
「それは、井上一人の考えなのか?」
「はい。」
「まずは、一緒に掃除している仲間に相談すべきだな。」
「頑張りすぎて、暴走するのは、良くないぞ。」
私はみんなに相談してみた。
みんな賛成してくれたので、本格的にアンケートのチラシを作って、水原先生のところにもっていった。

水原先生が職員会議で提案してくれて、生徒全員にアンケート式のゴミ拾いのプリントを配ってもらえることになった。

回収されたプリントのアンケートの答えは「がんばってね。」「ゴミはゴミ箱に捨てるようになりました。」とかうれしい答えも多かったけど、「いいかっこしー」とか「バカみたい。」とか、中には、もっとひどい答えが多かった。
ただ『そうじクラブのことは知っていますか?』の質問には、ほぼ100%の人が知っているって答えてくれた。

なんか気疲れした私は、社会科準備室へ水原先生に会いに行った。
「おっ、井上。どうしたんだ?」
「そうじクラブのアンケート、4分の3くらいは、回収できたんですが...。」
「かなりきついことを書かれてて落ち込み中なんです。」
「ははは、そうか。」
「それに...愚痴ってもいいですかz?」
「私たちのクラスの教室って十字塔の1階だったじゃないですか。それが今は、増築された教室が出来上がって、そっちに引っ越しして、今は、奥に校舎の3階になったじゃないですか。みんなが4そうじ行くのちょっとおっくになってるんですよね。」
水原先生がぼそっと言った。
「やめたかったら、やめてもいいと思うぞ。」
私は先生の言葉にかちんときた。
「卒業まで続けたいんですよ。」
「そして、後輩が引き継いでくれるとうれしいな。」
「そうか、じゃ、がんばらないとな。」
「井上、なんか強くなったじゃないか。」
「米田がそうじやめたとき、井上も辞めるんじゃないかと思っていたよ。」
「私は、今でも、米ちゃんに、そうじ戻ってきてほしいと思ってます。」




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