3月11日
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/05/29 22:21:47
大地はあの日
自分の肌に刻み込まれた無数の傷を
洗い流すため
はげしく身を震わせ
大きな波を呼び寄せた
その夜はとても美しい星空だったというが
見上げた者はいない
夜空の星を妨げる明かりもネオンもないというのに
地上が火に包まれ
暗闇が恐ろしいほど世界を支配した
人々は自然を本当に恐ろしく感じた原始の世界に迷い込んだ
朝の光の中で
誰かが泣きながら言った
使い物にならなくなった土地は捨て
どこかへ行くしかないのか
きのうまで住んでいた地面は
どこまでも続く浅い海に変わり
ただ空を映している
あの海の底で人が呼んでいる
だから風がこんなに強いのか
あの日から
心を通り過ぎていく「時」の測り方も忘れた
かつて時間は風のように
私たちや木々の中を吹きぬけたものだが
たしかあのあとやってきたのが
春というものだったのかだれも分からない
距離も時間も飛び散ったあと
目に見えないものを測り続ける日々が始まった