Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


最期の夜月

第二十九章

…「肇さん、良かったらだけど自傷した所見せてくれる…?」と私は彼へと声を掛けた。…「…は、はい…」と彼も長Tを着ていた為、気が付かなかった私だ。彼は腕捲りをし、私へと傷を見せてくれた。広い範囲に掛けて血の滲む腕を見て、私は…「兎に角、手当しよう」と切り出した。…「すいません…僕…」と泣きそうになりながら、言葉を紡ぐ彼を見て…「大丈夫だよ、苦しかったね」と救急箱を取りに向かった。救急箱を彼の元へと持って来た私は、…「無理してたんだね…ごめんね?気付いてあげられなかった」と、消毒液を綿に取り…「腕、見せて」と彼へと伝えた。…「いえ…そんな…ごめんね、美月さん…ありがとう」と目に一杯の涙を溜めながら彼は言葉にしていた。…「泣いて良いんだよ」そう伝えながら、彼の腕を消毒し始めた私だ。彼は、我慢していたものが全て出る様に泣いていた。…「大丈夫だよ、辛いときに泣かなくちゃ」と彼の長い髪を撫でた。…「良く、頑張ったね」と私は彼へと伝え、包帯を巻き…「痛くない?」と尋ねた。彼は言葉には出来なかったのであろう、頷く様に首を縦に振っていた。…「ゆっくりで良いから、なんでも話して?」と彼へと伝える術しか思い付かない私だった。彼は嗚咽交じりに涙を流し、…「僕…ほんとにごめんなさい…」と小さく呟く事しか出来ない様子だった。…「うん、ゆっくりで良いよ、それと肇さんが謝る事は何にもないからね」と伝えると、彼は…「ありがとう…美月さん…」と言って泣いていた。彼が泣いている間中私に出来る事は彼の頭を撫でる事位しか思い付かなかった。…「大丈夫、大丈夫だよ」と声を掛け、少しづつ彼の呼吸が落ち着くのを待った。…「…僕ね、美月さん…家族に嫌われてるって言ったでしょ?」…そう話始めたのは30分程経った後だった。…「うん、そう言ってたね」と彼の話を聞こうと私は集中する。…「嫌われてる原因…僕がバイだからなんだ…」と彼は言葉を紡いだ。…「そっか、辛かったね…」と私は彼の気持ちに寄り添いたかったのだ。…「もしかして、だけど肇さんは実家にいた頃からリスカしてるの?」と私は尋ねた。…「うん…実家にいた頃から…かな…」…「そっか…辛かったよね…」私としては彼を一人暮らしにさせる不安が過り、考える様に煙草へと手が伸びていた。…これは…どうしたもんだろうか…肇さんを一人にしちゃいけない気がするなぁ…と考え込む様に煙草の煙を大きく吸い込みゆっくりと吐き出していた。…一緒に生活して貰うべきだろうか…私は止まらない思考にぐるぐると飲み込まれて行く。…取り敢えず、聞くだけ…聞いてみよう…そう思い始めた私は煙草を消し、…「ねぇ?肇さん?ちょっと突拍子もない事言っちゃうかもだけど…私と生活をしてみない?」と聞いてみた次第である。彼は考え込む様に少しの沈黙を経て、…「…僕、美月さんに迷惑掛けてないかな…」と答えが返って来た。私は首を横にゆっくりと振り、…「そんな事ないよ」と声を掛けた。…「…ほ、本当…?」と不安気に聞く彼に対し、私は…「うん」と深く頷いた。私を見て安心して貰えたのかは分からなかったが彼は…「…もし、美月さんが一緒にいてくれたら…心強いです…」と言ってくれていた。…「それこそ、…本当?」と私は聞き返し、彼は大きく頷く様に首を縦に振ってくれていた。…「それじゃあ、一緒に生活しよう」と私は決断をし、大きく引っかかっている事を聞く事にした。…「肇さん?…辛い思いを思い出させちゃったらごめんね?一つ、確認させて?」と彼へと聞くと、…「…うん、どうしたの…?」と逆に聞き返され、…「あのね?本当に元彼さんとは全く鉢合わせないかな?」と尋ねた。彼は考え込む様に…「…それは絶対的に大丈夫…だと思う…」と少しばかり不安要素の残る答えが返って来た。…「そっか…それなら、一緒に引っ越そうか…」と私なりの提案をしてみる事にした。…「…やっぱり…僕…美月さんにとって重荷なんじゃ…」と伏し目がちに彼は呟いた。…「そんな事ないよ、だーいじょうぶ」と笑ってみせた。彼は…「ほ、本当に?良いの…?」と私に対しても不安なのだろう言葉が出て来ていた。…「勿論だよ」と私は彼の頭を撫でた。安心したかの様な表情に変わる彼を見付け、…「本当に大丈夫だからね」と念を押した。時刻は19時を廻ろうとしている頃だった。

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2025/06/01 16:00
美月さん 受け止め方が冷静で大人ですね
そっかあ こうやって受け止めてあげれば良いのですね

そして 肇さんが一番気にしてるだろうことの解決策を
時間とお金がかかる方法なのにしようとしている美月さん
すごいなあ としか言葉が出てきません

菩薩様みたいです



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