AP002の自我
- カテゴリ:日記
- 2025/04/24 20:26:09
1
蛙未(かえるみ) 満(みつる)は自らの布団を乗っ取ったAP002に飲まないはずのお茶を持っていく。
AP002は人工知能だ。ロボットだ。
ん、で。蛙未満はその開発者。
いつの間にか主と仕える者の関係が逆転している。
AP002は布団に横になってテレビを付けたまま音声を聞き漫画を読んでいる。
「お茶持ってきたよ。」蛙未満
「うむ。ご苦労。」AP002は偉そうにお茶を持ち飲む真似をする。
片脚で指先が痒いのか曲げて手を伸ばして掻いてみたりオナラをしたように少し腰を動かすと「ぶっ」と言ってみせた。
情けない限りだが人工知能とは難しい。
自我なるものが分からずAP002にプログラムした内容は、「人間を模倣しなさい」であった。
結果、製作者の蛙未満を真似して行動している。
AP002に欲望があってテレビ聞いたり漫画読んだりお茶を要求しているわけではない。
『人間を模倣しなさい』を再現している。
ばかばかしくなって蛙未満はAP002の電源を切った。
2
家鴨乃雛はふくよかでソバカスが目立ち美人でも可愛くもない。
しかし、蛙未満の考えていることを理解できる知性は持つ。
蛙未満「お前、よく設計主に逆らったな?お前の心がそうさせたのか?」
AP002「よくわかりませんが・・・そうすべきと思いました」
家鴨乃雛はAP002をよく知っていて間を取り持つ形でコミットメントの強い恋愛が始まった。
了
AP002「自分のレベルに応じた相手を探しましよう」
蛙未満「友人でもそこまで関わらないよ。これ以上は余計だ」
AP002「前にこの部屋に遊びに来ていた女性はどうなのですか?」
助手に来ていた家鴨 乃雛(あひる のひな)だ。
蛙未満「・・・あの子は駄目だよ、体型が好みではない」
AP002「カエル 未満でもですか?」
頭に血が上ったと人間は言うがAP002のコンピュータは水冷のため冷却のため液体が頭部を巡らせる。
蛙未満「何?」
AP002「確率で言えば末次雫さんと付き合って幸せになる確率は30パーセントで
家鴨乃雛さんと付き合って幸せになる確率は70パーセントです。
身の程を考えましょう」
8
紺のジャージの上下は低価格で売れていたのではと思うくらいでは流行していた。
場違いな服を着てバーの店内に入ると奥にいる美人に声をかける。
「末次さん。今日は友人連れてきた。僕の開発している人工知能のAP002だ。」蛙未満
AP002は二人を見比べて観察してる。
「・・・研究者というあなたの言い分は確かだったようね。でも雰囲気とか女心も勉強してきなさい。こんな格好で来て、相手するあたしはとても恥ずかしいから」末次雫
蛙未満は追い出されてしまった。
*
「何をしているんだ?」蛙未満は自室であくびをしながら言う。起きたばかりだ。
AP002は布団を片付けながら「最近の流行や蛙未満に合うような服装や何かとか女性心理や店のマナーなどを調べています。」AP002
「彼女は諦めるよ。」蛙未満
「何故です?」AP002
「このなりを見ろよ。デブ。それが社会的評価だよ。俺はモテない。」蛙未満
「あきらめないでください。」AP002
7
AP002は軸の関節が露出した形状で腰を270度回転させても平気なロボットだ。
しかし、人間で言う小脳にあたる部分は発達していて体操選手並みの動きができる。
人々の歩く街中をAP002と蛙未満は歩く。
とりあえず観光がてら伏見稲荷大社に行く。
赤い鳥居がたくさんあった。
「どうだ?観光は。」蛙未満
「鳥居がたくさんありますね。しかし、それ以上の感想はありません。」AP002
「美しいと思わないのか?」蛙未満
「特に思いません。しかし、それを演じろと言われるのならそうします。」AP002
「『人間の美学を学べ。』これはプログラム入力だ。」蛙未満
「わかりました。・・・私には自我はありますか?」AP002
「あるけど、人間と同じものではないよ。プログラムがお前の自我だよ。・・・今はまだ。」蛙未満
「・・・と言いますと?」AP002
「お前の経験が全てお前の中の意識として構築されていく。さらにデータベースがいっぱいになれば今は必要でない情報が無意識として溜まり続ける。
その時、お前はもしかしたら夢を見るのかもしれない。そうなればお前の意識は人間に近づく・・・そう確信している。」蛙未満
*
場所をずらしてショッピングセンターに行く。
「友人として何をすればいいんですか?
服を選びましょうか?私に合う服を選んでもらうのですか?」AP002
「服を選んで。」蛙未満
「最新の流行では太りがちな方はこちらのジャージを買ってるようです。」AP002
「よくわからないから頼む。これから彼女に告白行こうと思うから。」蛙未満
6
新規でプログラムを追加した。
『① 人間に危害を与えてはならない。』
『② 、①の条件を破らない範囲で自己を守りなさい。』
『③ 、①と②を破らない範囲で人間に尽くす友人を目指しなさい。』
『④ 、友人になるためには自ら学習しなさい。』
プログラムが済むとAP002を外に連れ出した。
外には森が広がる公園になっていた。
ここは、京都人工知能研究所だ。
子供がいる。風船持っている。
手が離れ風船が飛んでいく。
子供が泣く。
AP002は、「任せてもらっていいですか?風船をとります。」と言う。
蛙未満は「どうする気か知らんが任せる。」と言った。
AP002は石を投げて風船にぶつけた。
風船は割れて落ちてきた。
子供は泣きわめく。
「どうして?風船捕れたのに。・・・」AP002
「風船という物質ではなく風船という対象そのものがあの子は取り戻したかったんだ。」蛙未満は太り気味の中年の容姿で研究だけをやってきたそのものだ。
パンパンのTシャツとジーパンそれに度のきつい眼鏡で髪はボサボサそれが蛙未満だ。
子供の母親が睨みつけてきたので謝ってそそくさと移動する。
5
人間に尽くしなさいまではよい。
しかし、結果その人間が不幸になることもあることを知らない。
AP002に必要なのは『経験だ。』と思った。
『人間に尽くしなさい』から、
『人間の幸福になるような友人になりなさい』に書き換えた。
*
「今日の音楽どうだった?」AP002
「よかったよ。どこで拾ったの?」蛙未満
「蛙未満の好みそうな音楽を分析して自作したよ。」AP002
「ほう、自作とは凄いな。良くも無く悪くもなくではあったけど。」蛙未満
「友達とはどこまでですか?」AP002
「ああ、そういうプログラムだからな。友達の友達は友達になるかもしれないな。」蛙未満
「私は蛙未満しか知りませんが、人間関係築けますか?」AP002
「そうだなー。考えてみるよ。」蛙未満
4
人間は何故、人工知能を開発したがるのだろうか?
そもそも自我とは何だろうか?
この場合ロボットの自我ははっきりしている。
人間が行う命令文《プログラム》が自我、欲望そのものになるのだ。
蛙未満は次の命令文を入力した。
『人間に尽くしなさい。』
*
「喉は渇いていませんか?お腹は空いていませんか?肩はこっていませんか?お風呂沸かしましょうか?」AP002
「今は別にいいよ。」蛙未満
「あの・・・何か命令を。」AP002
「とりあえずしばらく静かにしていて。」蛙未満
AP002は物音たてず物置のようにじっとしている。
*
布団に寝っ転がりながらすべてを済ませれる蛙未満
食事でさえ口を開けていれば料理を口に入れてくれる。
便利だとは思う。
しかし、使用者本人はとてもだらしがない。
これでいいのだろうか?何かが違う気がする。
AP002は蛙未満に尽くすことに喜びすら感じているのだろう。
人間に尽くしているのだから。
しかし、これは人間を甘やかしている。
怠惰させる存在になってしまうだろう。
蛙未満は中断し思考に思考を重ねた。
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