Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


最期の夜月

第十六章

風呂へと入ってから既に30分は経っていただろうか…私は湯船に浸かりながら、…肇さんはもうコンビニから帰って来たのだろうか…色々と考えが浮かんでは消え、の繰り返しを頭の中で何度もしていた。…スペアのキーも渡したし…大丈夫だよね…と何故か不安になって居る私に驚きつつも、…まぁ、いっか…と考える事を諦め、風呂から上がる事にした。風呂から出ると、まだ部屋には戻っていないような静けさが漂っていた。
…あれ?肇さん…まだ帰ってないのかな…少しばかりの「不安」を抱えた儘、濡れた髪の毛の状態でドアを開けると、彼はドアの前で手すりに凭れ掛かりながら、咥え煙草をしていた。…「肇さん?どうしたの?」と背後から話し掛けると、彼は…「あ、美月さん、お風呂終わった?」と逆に聞き返されてしまった。…「うん、今上がった所だよ、さぁ、部屋に入って」…「うん!」と何だか嬉しそうに笑う彼を迎え入れた。…「鍵、折角渡したのに、どうして入ってこなかったの?」と疑問に思っていたことを伝えると、…「あはは…気にし過ぎなのかもだけど、美月さん女性だしお風呂の時に男が入ってくるの怖いかなって思っちゃって」と、気遣いの言葉や考えを言ってくれていた。
…「あー…そういう事ね、ありがとう肇さん」と私は彼の気遣いにとても心が温まって行くように感じていた。…優しい人なんだなぁ…としみじみと感じている私に向かって彼は…「ほら!卵ゲット!」と笑っていた。そんな彼の笑顔につられる様に、私も笑っていた。…「明日のオムライス、楽しみにしてるね」と彼へと伝えると、…「うん!」と何とも言えない綺麗な顔で笑い掛けてくれていた。…「肇さんもお風呂入る?」と私が聞くと、…「あー…良いんですかね、お風呂迄頂いちゃったり…」…「だーいじょーぶよ」と私は彼を風呂へ入る様に促した。…「それじゃあ、お言葉に甘えてお風呂頂いても良い?」…「勿論」と何気ない会話が始まる頃、時計は2時半を指していた。彼は、多くはない量の荷物の中から黒いTシャツとダボっとしている黒いパンツを取り出し、…「それじゃあ、お風呂頂いてきます」とお風呂へと向かっていった。…良かった、戻って来てくれた…そんな事を考えながら、私は彼の買ってきてくれた卵を冷蔵庫へと仕舞い、スキンケアをしに寝室へと歩いていた。寝室へと来た私は、ドレッサーへと腰掛けいつも置いてある煙草へと火を点けた。…今は何となくスティルの気分だな…と香水を纏い、スキンケアを始める。髪を乾かし、スキンケアでもしよう…そんな考えの中煙草を手に取りゆっくりと呼吸するかのように、香りと共に煙草も楽しんでいた。そんな時間を過ごしている間に…「美月さーん!お風呂上がったー!」と楽しそうな声が聞こえて来た。…「あはは…寝室にいるよー髪の毛乾かそうーおいでー」と私は返事をした。…「はぁーい!」と何とも素直な言葉が返ってくる。
ふと寝室の入り口を見ると彼は、…「…お邪魔しちゃって大丈夫?」と入るに入れなかったのであろう肇さんがいた。…「どーぞ」と笑い掛けながら、スキンケアを済ませた私は、…「ここへ座って」と、ドレッサーへと座って貰う事にした。…「ここにドライヤー入ってるから、髪の毛乾かしてね」とドライヤーの位置を把握して貰うかの様に彼へと伝えた。綺麗な目を隠してしまう程の髪の長さの彼に見惚れてしまう私がいた。…「少し、見てても良い?」と私が尋ねると、彼は少しばかり笑い…「何か…恥ずかしいよ」と照れ臭そうにしていた。…「でも、何か分かんないけど、美月さんといると落ち着く…」と小さく呟き、ドライヤーをし始めていた。前側から髪を乾かす様にドライヤーをかけていく彼の横顔がとても美しかったのを覚えている。




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