Nicotto Town



「しをかくうま」読了

「しをかくうま」は、
「死を欠く馬」であると同時に「詩を書く馬」だろう。

この本自体が詩のような構成で、筋を必ずしも読者に知らせる事を強く意識しておらず、まるで詩を味わうように読むことを勧めているように思われる。
読解ではなく、感じる事を優位せよと。

同時に、死を欠く馬の方は、明らかにニーチェの思想に依拠している。
いかに人間が死するべきものだったとしても、その虚無を前に、それでも向上せよと訴える、極めて硬度の高い哲学だ。

作者の「東京都同情塔」に置いては、世界のフラット化への違和が書かれていたが、本作では、サラブレッドが血の改良を行っていったように、向上すること、を強く意図する、垂直性への賛美が見られる。

その是非は置くとして、世の中が多様性とポリコレでがんじがらめになった現代に置いて、稀有な思想、稀有な文学であることは間違いないと言えるだろう。




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