【小説】初恋 その⑩ しずくの卒業式
- カテゴリ:自作小説
- 2025/03/08 18:55:04
――――卒業式
校庭の早咲きの桜が満開だった。
仰げば尊し~♪
「卒業証書授与!」
――――校庭
「卒業式おわっちゃたね。」
私達6人、私・麻美・幸ちゃん・ノン・よしえ・美紀たんは、校庭で集まっていた。
「帰りますか?」
ノンが声をかけた。
「6組の前の廊下、寄って帰りたいな...」
私がつぶやいた。
「そうだね。今日で最後だし、行きますか。」
麻美が賛成してくれた。
6組の前の廊下に行くと、同じように、中山君たちも8組の前の廊下に集まっていた。
私たちと中山君たち、お互い会話はなかった。
今日は『島田君の奥さん』ってからかってもこない。
自分から、中山君に話しかける勇気もない。
私は、ただ、遠目で中山君を見ていた。
「好き」の一言が伝えられずに...。
私はいろんなことを思い出してた。
『島田君の奥さん』ってからかわれてたこと。
中山君に彼女がいるって聞いたこと。
私が笹野君に告白したこと。
夏祭り、ふたりで露店回ったときのこと。
修学旅行のこと。
文化祭のこと。
体育祭のこと。
いろいろな思い出が走馬灯のように流れていった。
私が「好きです。」って伝えたら、中山君は、どんな顔する?
断られても、伝えなくても、明日から会えないことは一緒やん。
断られても、明日から会うこともないんだから、平気やん。
それでも、伝えられないでいる。
中山君の居てるとこまで、十数メートル。
こんな近くにいるのに、なんて遠いんだろう...。
「しずく?泣いてるの?」
美紀たんが聞いてきた。
「泣いてないよ。感傷にひたってただけ。」
「中山君、呼んでこようか?」
美紀たんの言葉にビックリした。
「ううん、このままでいい...。」
それから、どれくらいの時間が過ぎたんだろ。
私は帰れなかった。
麻美たちも付き合って残ってくれていた。
中山君たちも帰らずに残っていた。
学年主任の先生がきた。
「君たち、いつまでも残ってないで、帰りなさい!」
私たちは、帰ることになった。
明日からは、もう会えない!
切ない想いがあふれ出す...。
それでも想いを伝えられなかった...。