【小説】 初恋 その④ 生徒手帳
- カテゴリ:自作小説
- 2025/03/08 09:50:18
――――3年5組の教室
「あっ、中山君、生徒手帳落としたよ。」
私は中山君の生徒手帳を拾った。
何気に裏の身分証明証のところが目に入った。
ラッキー、誕生日見ちゃお♡
ん?1985年???????
「中山君、この身分証明証、誕生日間違ってるよ(クスッ)」
「1985年っていっこ年上になってる。」
「ん?間違ってないよ。」
「俺、小学校のときに1年ダブってんねん。」
平然とそう言った中山君。
放課後、麻美たちにその話をしたら、
「しずく、知らなかったの?」
「えっ?みんなは知ってたの?」
「彼、隠すタイプじゃないからね。」
私は複雑な心境だった。
いっこ、年上なんだ...
なんか大人っぽいって思ってたけど...
「しずく知らないんだったら、教えといてあげる。」
と言って麻美が、中山君のこと教えてくれた。
「中山君、1年ダブったときは、相当荒れてたみたいで、学校にも行ってなかったらしいの。」
「そんな中山君を毎日迎えに来てくれてたのが島田君らしいの。」
「そのうち、中山君は島田君と学校へ行くようになったんだって。」
「中学入ってからは、そんなことあったなんて思えないくらい、明るくなったんだって。」
「だから、中山君が島田君の嫌がることするはずないんだけどな...。」
「きっと、中山君がしずくのこと『島田君の奥さん』っていうのも、なにか理由があるはずよ。」
私は、話をきいて聞いて、ちょっと泣いてしまった。
「島田の奥さ~ん!なんか暗いけどどないしたん?」
また、廊下の端から中山君が叫ぶ。
友達とも普通にいてるし、1年ダブってるようになんか見えないよね。
私はいつものように中山君のところに行って
「大丈夫だよ。なにもないし。」
普通に答えた。
「あれ?今日は、どないしてん?いつもみたいに怒ってこないやん?」
「あっ、そうだね(笑)」
「私は島田君の奥さんじゃありません(笑)」
中山君は「はれっ?」って顔をしていた。
「おまえ、普通にしてても、かわいいやん(笑)」
「ちょっと、それ、どういう意味?--;」
「言葉のまんまだよ。」
中山君が言った。
「からかって怒らさないとしゃべんないのかと思ってたから。」
「私のこと、そんなふうに思ってたんだーー;」
「じゃあ、もうからかわない?」
「いや、星野の反応は楽しいから、続行w」
中山君は嬉しそうにそう言った。
「続行って、なんで『島田君の奥さん』って言ってからかうのか、謎。」
私は、ちょっと怒った表情で言った。
「島田がさぁ、おまえのこと好きなんだよ。」
って、中山君が小声で言った。
私は、真っ赤になって固まった。
「はははっ、嘘だよ(笑)」
「もお!」
って怒って、中山君を叩く真似をした。
「おい、中山、帰るぞ。」
島田君たちが中山君を呼んだ。
「じゃな、島田の奥さん♡」
「本当に、島田君、しずくのこと好きなんじゃない?」
いつの間にか私の横に来てた麻美がぼそっと言った。