Nicotto Town



【小説】浩平の恋 その④ 看板係



――――S高等学校3年10組

夏休みも終わり2学期。スポーツの秋だ。
S高等学校でも体育祭が催される。
体育祭のことは、体育委員の大地と浅倉さんが仕切っていた。
「応援団長は、高橋君でいいですね。」
「あと、応援団に立候補者いますか?」
女子が多く立候補したけど、
「高橋君目当ての人は却下ですよ。」
「女子より男子の応援団員がほしいな。」
大地と浅倉さんのこの言葉で、ほとんどの女子は辞退した。w
「次は、看板係を決めたいと思います。」
「立候補、いますか?」
伊藤さんが立候補した。
「池田さんと看板係します。」
嫌な予感がした。
「池田さん、看板係しますか?」
浅倉さんが聞いてくれた。
僕は湖桃がうまく断れるように願った。
「えっと...」
湖桃は返事ができなかった。
「池田さん一緒にがんばりましょ。」
伊藤さんが笑顔でさそった。
「看板係なんか雑用だし、池田でいいんじゃねえのか?」
心ない男子の声も聞こえた。
「外野は静かに!」
浅倉さんが怒った。
「池田!やりたくないんだったら、断っていいんだぜ。」
大地も湖桃が断りやすいように助け舟を出してくれた。
「池田さん、私とはやりたくないのかしら?」
そう言われて、「はい。」と言えなかった湖桃。
看板係を引き受けることになった。
それも伊藤さんと、その友達と...
僕は何もできなかった。
ただただ、また、湖桃がいじめられないように祈るだけだった。

放課後、1年と2年の応援団のメンバーと看板係のメンバーが教室に来た。
他の生徒は帰ったけど、僕は湖桃が心配で帰れなかった。

看板係の3年生は女子ばっかりだったから、
看板の土台は、男子生徒が作ってくれた。

応援団...大地と浅倉さんがいてるときの伊藤さんはおとなしかった。
でも、応援団が教室を出ると、一変した。
「池田さん、下書きお願いね」
「一人で大丈夫だよね」
「ということで、残りの人は解散ね。」
僕は、そんな伊藤さんを怒ることが出来なかった。
僕が湖桃を守れば、いじめがひどくなる...
僕は一人残された湖桃を慰める事しかできなかった。

そこに副会長の川端さんが僕を呼びに来た。
「梶会長。体育祭のパンフレットのことでちょっと生徒会室に来てください。」
「わかった。すぐ行くから、先に戻っておいてくれ。」

「湖桃、終わったら、すぐ戻ってくるからな。それまで大丈夫か。」
全然大丈夫そうじゃなかったけど、生徒会の用事をほったらかすこともできず、僕は湖桃を一人にして教室を出た。

僕が教室にもどるのがかなり遅くなって、戻ってみると、
大地と愛里ちゃんともう一人1年生の女の子が、湖桃と看板の下書きをしていてくれた。
「梶!おまえ、もう少し湖桃のこと大事にしろよな!」
僕は、大地に怒られた。
僕を見た途端、湖桃は泣き出した。
大地たちの心使いで、僕は湖桃を抱きしめた。
儚い湖桃を僕は守れているのか...
僕が湖桃を悲しませているんじゃないのか...





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