Nicotto Town



【小説】浩平の恋 その① 転校生・湖桃



――――S高等学校

僕は梶浩平(かじこうへい)。生徒会長をしている、3年生だ。
今年の入学式で祝辞を読んだんだけど、それを見た1年生が、僕を訪ねて3年の教室まで来てくれた。
教室の前で中を見てるから声を掛けたら、僕に用事だって言って、赤くなった。
僕は、思わず名前を聞いた。
「平松愛里(ひらまつあいり)です。」
赤くなった笑顔がとてもかわいかった。
それから、彼女は毎朝、僕に朝の挨拶をしに来てくれた。
大地...僕の親友の高橋大地(たかはしだいち)も、毎朝、彼女がくるころには、僕のそばにいた。
今、思えば、大地の奴も平松さんのことが気に入ってたんだろうな。
平松さんは僕に会いに来てくれてるのにって、少しムカッとしていた。
僕は平松さんのことを思い切って、
「愛里ちゃん。」って呼んでみた。
愛里ちゃんは、赤くなって、まんざら、いやそうでもなかった。
僕も愛里ちゃんのこと気に入ってた。
池田湖桃(いけだこもも)に出会うまでは...

6月の半ば、転校してくるには珍しい時期に池田さんは転校してきた。
綺麗なロングヘアに透き通るような白い肌。
僕は一目惚れをしてしまった。

クラスのみんなも池田さんのことが気に入ったように、休み時間になると、彼女の周りに集まってきた。
「湖桃って、可愛い名前ね」
「今頃の転校って、やっぱり、お父様のお仕事の関係とか?」
「池田さん、おうちどの辺?」
「趣味は何?」
みんなが色々質問をしてきた。
でも、池田さんはうつむいたまま、返事をしなかった...できなかった。
池田さんを囲んでいた人がひとり、また、ひとりと離れて行った。
数日後には、池田さんは、ひとりでぽつんとするようになっていた。
そして、へんなうわさが広まった。
「池田さんの転校の理由って、いじめらしいわよ。」
「あーーー、池田さん見てたら、そんな感じよね。」

僕は池田さんのことが気になって、何か理由を作っては話しかけるようにした。
そのうち、池田さんは、一言二言返事をしてくれるようになった。
そして、休み時間一緒に過ごすことが増えた。

でも、クラスメートの伊藤真奈美(いとうまなみ)は、それを快く思っていなかった。




Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.