Nicotto Town



【小説】愛里の恋2 その㉑ 後夜祭



ー―――後夜祭

グラウンドの真ん中にはキャンプファイヤーの火がともされた。
そのまわりでフォークダンスを踊る人達。
雑談を楽しむ人達。
写メを撮ってる人達。

私はやよいたちとグラウンドの端にあるベンチで座ってしゃべっていた。
「興奮したね。」
やよいが言った。
「あれ?愛里、泣いてるの?」
「ち・ちがうよ。キャンプファイヤーの煙が目にしみただけだよ。」
私はあせって目をふいた。
「煙、ここまできてないよ(笑)」
やよいがからかってくる。
私は感傷にひたりながら、つぶやいた。
「みんな燃やしちゃうんだね...」
「みんなががんばって作った看板とか、使った小物とか...」
「体育祭、おわったからね。」
って、あっけらかんと、まりちゃんが言った。
まりちゃん、あんなにがんばって看板作ってたのにドライだなって思った。
「はじめての体育祭、いろんなことがあったね。」
やよいがしみじみ言った。

そこに高橋先輩が来た。
「あっ、高橋先輩、ひっきりなしに、女子につかまってましたね。(クスッ)」
やよいが、高橋先輩をひやかした。
高橋先輩はこっぱずかしそうに、頭をかいた。
そして、私に声をかけてきた。
「平松、ちょっといいかな。」
やよいたちは、気をきかせて、その場をはなれた。

2人になって、高橋先輩は、私の隣に座った。
なんだか、ふたりともぎこちなかった。
「平松、応援団、最後までやってくれて、ありがとうな。」
やっぱり、笑顔がぎこちない高橋先輩だった。
「私の方こそ、いい経験ができました。ありがとうございました。」
私は胸がどきどきしてきた。
「本当は看板係、助けたかったんじゃないのか?」

看板係...いろんなことを思い出していた。
湖桃先輩のこと。
梶先輩のこと。

「気にならなかったって言ったら嘘になりますけど、応援団してよかったって、今は心から思っています。」
私は恥ずかしくて、少し下を向いていた。
そんな私に追い打ちをかけるかのように、高橋先輩は質問をしてきた。
「平松は、今でも...その...梶のこと好きなのか?」
私は驚いて高橋先輩の顔を見た。
高橋先輩は何とも言えない表情をしていた。
ちょっと返事に困ったけど正直に答えた。
「好きですよ。ただし、先輩としてですけど。」
「そっか...」
そう言った高橋先輩は黙ってしまった。
なんとも、落ち着かない時間を過ごした。
しばらくして、高橋先輩はこう言ってきた。

「俺...おまえのことが好きなんだ。」

炎のせいじゃない、高橋先輩は、真っ赤な顔をしていた。
それでも、私の顔をしっかり見つめて言ってくれた。
こんどこそ、時間が止まった。

私は恐る恐る聞いた。
「高橋先輩の好きな人って浅倉先輩じゃなかったんですか?」

高橋先輩は意外そうな顔をして聞いてきた。
「そんな風に見えていたのか?」
私は黙ってうなずいた。
「朝倉とは気が合うしいい友達だよ。でも、それだけだよ。」

高橋先輩が改めて私に聞いてきた。
「平松は、俺のこと、どう思ってるんだ?」
高橋先輩、視線を私から外さない。
私は、すぐに返事ができなかった。
そして、やっと出た言葉は...

「ごめんなさい。」

高橋先輩は静かに
「そうか...」
と言って立ち上がった。

私は高橋先輩のすそをつかんで立つのをとめた。
「平松?」
私は必死で声をしぼりだした。

「私も高橋先輩のことが大好きです!」

高橋先輩は目を見開き私のことを見てきた。
「でも、やよいの気持ちや湖桃先輩のこと考えたら、私だけ幸せになっちゃいけない気がするんです。」
高橋先輩は一言一言わたしを諭すように言った。
「やよいちゃんの気持ちは受け取れなかったけど、やよいちゃんはわかってくれたよ。」
「湖桃のことは、明日、一緒にお見舞いに行こう。」
そういって、高橋先輩は私の手を優しく握ってくれた。

あれ?これって、OKしたことになってるの?
自然と涙がこぼれ落ちた。

余韻に浸る間もなく、やよいたちが戻ってきた。
私と高橋先輩はひやかしたおされた。

そんなこんなで後夜祭も終わりを告げた。




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