最期の夜月
- カテゴリ:自作小説
- 2025/02/20 23:04:42
第三章
…あ、そうだ、と私は煙草を消し、…「ハジメさんは煙草の煙大丈夫ですか?」と少しばかり遅い確認になってしまった事を聞いていた。
彼は少しばかり考えに耽る様に目を伏せ、…「煙草の匂いには慣れているので、僕は大丈夫です」そう答えてくれた。…何かあったんだろうな…聞いた方が良いんだろうか…そんな事を考えながら、…「煙草吸わせてくださいね」と確認を取り、煙草へとまた火を点けた。
私は考えに考えを巡らせ、…「ハジメさんが話したいと思った事を何でも言って下さいね」…「ありがとうございます」…「一つ聞いても良いですか?」ハジメさんは少しづつ身体も温まって来たのか、会話が成り立っていなかった頃よりも安定している様に私には見えた。
…「どうしました?」…「えっと、お姉さんの名前を教えて欲しいです…」と私へと尋ねて来た。…「あー勿論です、私はミツキって言います。美しい月とかいてミツキです」と答えた。…「美月さん…綺麗なお名前ですね、了解です」…「はい、ハジメさんはどんな字を書くのですか?」…「ハジメ…えっと、チョウとも読むんですけど、肇って書きます」…「へぇーチョウと読むハジメって漢字がある事を知りませんでした」私は携帯で直ぐに「肇」という感じを調べ、…「何だかとても素敵なお名前ですね」…「いやいや、そんな事ないですよ…はは」…肇さんは笑顔迄零れる程には元気になって居るのだろうか?そんな事を考えながら、換気扇の下にいた私は後1本煙草へと火を点けた。…「あの、美月さんはお時間ありますか…?」と、か細い声で私へと問いかけて来た。…「明日は仕事休みなので大丈夫ですよ」と返事をし、…「少し聞いて貰いたいお話しがありまして…」…「私は大丈夫ですが、肇さんは大丈夫ですか?」…「僕は大丈夫です…少しお話ししたくて…」と不安気に小さく呟いた。…「大丈夫ですよ、何でも話してくださいね」と伝えた上で肇さんは話出す事になった。「突然の事で驚かれると思うんですけど、僕…女性も男性も行けるタイプでして…」…「ほう?」と私は聞き耳を立てていた。私は特にLGBTに関して何とも思っていなかったが故であろう、普通にすんなりと受け入れる事が出来た。…「それで、今日バイト終わって、彼と一緒に住んでたここに戻って来たんですけど…彼…女性を連れ込んでいて、ちょっとショックな事って言っても簡単な話SEXしている所を見かけちゃって…」…「あー…それはかなりのショックじゃないですか?」…「そう…ですね、18から付き合っている彼で、5年付き合ってたんですよね…」…「そうだったんですか…大分辛くないですか…?」…「今、頭の中の整理をしている最中です、お付き合い願えれば有難いです…」…「分かりました、色んな話を肇さんの思っている事、疲れない程度に話してください」…「僕怒っちゃって、それ見て何してんの!?って言ったんですよ…」私は肇さんの疲れない程度を観察しつつ、話を聞く事に徹していた。…「そしたら彼、笑いながら3Pでもするか?…って言ってきて…僕、そんな趣味ないんで激怒して、もー別れるって咄嗟に言っちゃったんですよね」…「それは彼氏さんが悪いと私は思うので、肇さん別れて正解なのでは?と思ってしまうのですが…肇さんの中で後悔でもしているのですか?」…「んー後悔なのかは分かりませんが、その後に直ぐ家出て玄関先で恐らく彼が迎えに来てくれるって期待しちゃってたのかも知れません…でも結局彼は僕を迎えに来る事もなく…其の儘放置されてしまって…」…「ごめんなさいね、肇さんには酷い事を言ってしまうかもしれないんですが…彼氏さん、最低だと思います…」…「そうですよね…どう考えても…」…「傷付けてしまっていたら本当にごめんなさいね?…肇さんが別れを選んだ事は私は間違っていないと思います」そんな会話を続けながら夜は段々と更けて行った。