Nicotto Town



【小説】愛里の恋2 その⑭ 高橋先輩と愛里



病院の待合室に残された私と高橋先輩。
会話のないまま 時間が過ぎていった。
時計は、もう22時を過ぎていた。
そんなとき、高橋先輩がポツリと聞いてきた。
「あの二人、別れさしたのは、間違いだったのかな...」
私は少し考え込んで、
「間違ってないと思います。自信を持ってください。」
「でも、湖桃は自殺未遂をしたんだ...」
高橋先輩は憔悴していた。
「自殺未遂?違うと思います!」
「平松?」
「手首切ったくらいで、簡単に死ねませんよ!」
「平松、なに怒ってるんだ?」
「人前で手首を切るなんて、強迫と同じです!」
「つらい、苦しい、誰かにわかってもらいたいパフォーマンスですよ。」
「自分の身を犠牲にして大切な人を強迫してるんです。」
高橋先輩は苦しそうな顔をして言った。
「湖桃は、死にたいくらいつらかったんだな...」
「俺のしたことは、そこまで湖桃を追い詰めたんだな...」
「高橋先輩!しっかりしてください!」
「高橋先輩が二人を別れさせたから、今度は梶先輩がしっかり湖桃先輩を受け止める決心をしたんじゃないですか。」
「...そうだな。」
「そうですよ。」
高橋先輩は少し笑顔で
「俺、平松のこと、天真爛漫な幸せいっぱいなだけの女の子だと思ってたけど、俺より、大人だな。」
「そんなことないですよ。」
高橋先輩は立ち上がりながら
「ありがとう。俺は、もう、大丈夫だから、送っていくよ。」

「愛里!」
そこに私のパパが来た。
「パパ!どうしてここに?」
「朝倉さんって言う人から連絡をもらたんだ。」
「だいたいの話は聞いている。大変だったな。」
「でも、高校生が出歩いていい時間じゃないな。」
高橋先輩が慌てて
「申し訳ありません。俺が取り乱してて、愛里さんが付き添っていてくれたんです。」
「とにかく、君も、今日は帰りなさい。送っていくよ。」
パパは私と高橋先輩を車に乗せると無言で走り出した。
車内の空気がピーンと張りつめていた。
パパは、高橋先輩を高橋先輩の家の前でおろし、家に帰った。

――――愛里の家

「愛里、お帰りなさい。」
ママが駆け寄って私を抱きしめてくれた。
「ママ、心配かけてごめんなさい。」
パパが難しい顔で言ってきた。
「愛里、最近こういうことが多いな。応援団に入ったせいなのか?」
「違う!たまたまなの。」
「ママは愛里に応援団やめてもらいたいと思ってるのよ。」
「パパも同じ意見だよ。」
「パパ!ママ!」
「門限守るから、応援団させて!お願い!」
パパはしばらく考え込んで、
「今回だけだぞ。今度、こんなことがあったら、応援団はやめさせるからな。」
「ありがとう。パパ。」
「愛里、ごはん食べれる?」
ママが心配そうに聞く。
あっ、そうか、お昼から何も食べてなかった。でも...
「ごめんなさい。今日はもう、寝てもいい?」
「そうね、ゆっくりおやすみなさい。」

この日は悪夢ばかり見て、ちゃんと寝れなかった...
それでも、朝は来る。

「おはよう。パパ。ママ。」
「愛里、大丈夫?」
「大丈夫。」
私はご飯を食べて、学校に行った。





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