Nicotto Town



【小説】愛里の恋2 その⑬ 湖桃先輩



次の瞬間、湖桃先輩はカバンからカッターナイフを取り出し、
じぶんの手首を切った!
「きゃあーーーーーーーーーーーーーーー!」
その様子を目の当たりに見たやよいが叫んだ。
そこに居た人の視線が湖桃先輩に集まった。
かなり深く切ったように、血がぽたぽた落ちていた。
浅倉先輩は持っていたタオルで傷口を抑えて、やよいに救急車を呼ぶように指示した。
やよいの叫び声は、帰りかけた私達にこ聞こえた。
慌ててもどると、
血を垂らしながら薄笑いをしている湖桃先輩がいた。
...狂ってる
高橋先輩は、反射的に湖桃先輩を叩いた!
「何バカなことしてるんだ!!」
「湖桃先輩、大丈夫ですか?」
私が声をかけると、湖桃先輩は、泣き出し、私にしがみついて
「浩平...浩平...助けて。」
そういって、気を失った。

救急車が来た。

私と浅倉先輩が付き添いで救急車に乗って行った。
「病院決まったら、連絡するから。」
「高橋君、辛いけど、このこと、梶君に伝えて連れてきてね。」
こんな状況でもテキパキと行動していく浅倉先輩。すごいな。

――――病院

幸いにも傷口は7針ぬったけど、大事には至らなかった。
でも、精神のほうは崩壊していた...
気が狂ったように泣き叫び、浩平って、梶先輩のことを呼び続けていた。
そこに、高橋先輩と梶先輩が駆け付けた。

胡桃先輩を見るなり、梶先輩は何も言わずに、ただ湖桃先輩を強く抱きしめた。

「もう、大丈夫だから!僕は何処にもいかないから!」
「これからは、ちゃんと湖桃のこと守るから。」
「ずっと一緒にいてるから。」

湖桃先輩が少し落ち着いたところに、ご両親が駆けつけてきた。

湖桃先輩の様子を見て抱きしめて泣いておられた...
梶先輩は、ご両親に謝っていた。
「僕が至らないせいで、湖桃さんのこと傷つけてしまいした。」
優しいご両親で、梶先輩を怒ることはしなかった。
「娘から梶さんのことは聞いています。いつも娘によくしてくださっていて、ありがとうございます。」

「高橋君、平松さん、私たちは1階の待合室でまちましょう。」
それからどれくらい過ぎたか...すごく長い時間が経ったような気がした。

ご両親が降りてこられて、私たちに挨拶された。
「気持ちが落ち着くまで、入院することになりました。」
「娘を助けてっくださってありがとうございました。」

「あの、梶君は?」
浅倉先輩がきいた。
「娘が手を離さないんです。今夜はこのまま娘のそばにいてくれるそうです。」
「私たちも、入院の用意もってまた来ます。」
「もう遅いですし、あなたたちはお帰り下さいね。」
ご両親は頭をさげて病院をでていった。

「私たちは帰りましょうか。」
高橋先輩は、ずっと、しゃべらなかった...
自分のしたことを悔いているのだろう。

「高橋君、こんな結果になってしまったけど、高橋君のしたこと、まちがってなんて思っていないわよ。」
浅倉先輩が高橋先輩を慰める。
高橋先輩は何も言わなかった...言えなかった。

浅倉先輩は少し考えて、
「平松さん、高橋君のこと頼んでもいいかな?」
「私じゃダメみたいだから...」
そう言って、浅倉先輩は一人で帰って行った。




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