Nicotto Town



イカリ食堂の細腕繫盛記

アライグマ族の郵便配達員「フミオ・アライ」がメンドーサ隊事務所に来ていた。
「よぉ、看護兵さん。アンタに手紙が2通来とるよ」
「ありがとうございますぅ~。あっ、ミカルさんとアイちゃんからだ」
「それと、ムジーククインテット宛てにも手紙が来とるんだが…誰に渡せばいいかな?」
「私です」「マリンさん」
「アンタが「マリン・アンドリュース」かい?おお、忘れる所だった。ほれ、アンタ宛ての手紙だよ」
「え?私に?差出人は、エリカ…」「エリカさんってマリンさんの妹さんですよね?」

フミオの今日の配達は終わりらしく、食堂でマリアと話し込んでいた。
「メンドーサ隊、しばらく見ねぇうちに、また人が増えたなぁ…。ところで、例の虎人族4人組はどこでぇ?」
「ラシードさんたちは、ケモナモフ地方の「ボッコロ・バレンタインデーまつり」に参加してますぅ~」
「ボッコロ・バレンタインデーまつりか…。今年も赤いバラとチョコレートが派手に飛び交うんだろうなぁ…」
「飛び交うって…赤いバラとチョコレートを好きな人と投げ合うお祭りなんですかぁ?」
「アハハ…互いにトマトを投げてぶつけ合う「ツインレークスのトマト戦争」じゃあるめぇし…。
『ボッコロ・バレンタインデーまつり』は「トマト戦争」みてぇに過激なまつりじゃねぇよ。
ボッコロの日は、男が愛する女に一輪の赤いバラを贈る日。
バレンタインデーは、女が愛する男にチョコレートを贈る日だ。
でもって、そいつを合体させたんが『ボッコロ・バレンタインデーまつり』ってぇワケだ」
「赤いバラとチョコレートを互いに贈り合うんですねぇ~。
ああ、だから『赤いバラとチョコレートが飛び交う』って…そういうことだったんですかぁ~」
「おう。今頃、ケモナモフ地方は、赤いバラとチョコレートでいっぱいだろうな」
「おおっ!それだけ、愛に溢れてるってコトですねぇ~」

「満月の夜、月に一度の「モフモフまつり」だけじゃないんですねぇ~」
「おうよっ!ケモナモフ地方の獣人族は祭りが大好きなんでぇ!年中、お祭り騒ぎでぇ!
オッちゃんは郵便配達の仕事があるからよぉ、なかなか故郷に帰ェれねぇんだが、
「大モフモフまつり」の時だけは、ケモナモフ地方へ里帰りするんだ」
「大モフモフまつりが行われるハロウィンの時期は、マカマカイの「お盆」にあたるんですよね?」
「お盆の時はご先祖様も実家に帰ってくるかんな。賑やかにお迎えしてやらなにゃあな」
「この前の「大モフモフまつり」の時は、里帰りしたんですかぁ?」
「ああ、もちろん。まつりが終わった後は「イカリ食堂」で朝飯食べんのが定番でなぁ…
ドハツの奴、元気でやってるみてぇだな」
「ドハツさん?」
「ドハツ・テン。イカリ食堂の店主の親父さ。
『よう!定食屋!』『おう!郵便屋!』ってな感じで、昔っからのダチなんでぇ。
娘のキッショウちゃん、いい子だよなぁ。まだ小さいのに店の手伝いして偉いよなぁ~」
「はいっ!キッショウちゃんはお水を運んだり、注文取ったりしてましたぁ~!」
「看護兵さんも「大モフモフまつり」に来てたのかい?」
「クシュン!」
キッショウはマリアの代わりに、くしゃみで返事をした。
「おや?噂をすれば、キッショウちゃんじゃねぇか!一人かい?一体、どうしたんでぇ?」
「ゆうびんやのオジちゃん!メンドーサたいのみんな!おねがい!たすけて!
父ちゃんが「よーつー」で、あかつき兄ちゃんがみせをぐるぐるまわして、おくすりがしなぎれなの!」

ところ変わって、ここはマカマカイのケモナモフ地方にある「イカリ食堂」。
「キッショウ!どこ行ってたんだい!?」「ごめんなさい…」
キッショウの母「マリシ」は、キッショウを叱りつつも抱きしめていた。
「母ちゃん、メンドーサたいをつれてきたよ」
「メンドーサ隊って、この間の大モフモフまつりの時に名刺をくれた…」
「ええ、私が渡したその名刺を頼りに、キッショウちゃんはメンドーサ隊まで来てくれたんですよ」
クレアが簡潔に説明した。
「ココアお姉ちゃんに「めーし」を見せたら「ばしょをしってる」っていうから、
メンドーサたいのところまで「しゅんかんいどー」でおくってもらったの」
「そうだったのかい…。おや?アンタはフーたん!郵便屋のフーたんじゃないか!」
「よぉ!マリちゃん!で、ドハツは、どこにいるんでぇ?」
「てやんでぇ!いつまでも寝てられっか!料理は作れなくても、アカツキに指示を出すくらいは…!」
「アンタ!また勝手に動き回って!安静にしてないと、治るものも治らないよ!?」
「相変わらずだなぁ、ドハツ。たまにはカミさんの言うことを素直に聞いちゃどうだい?」
「誰だか知らんが余計なお世話でぇ!…って、フミオじゃねぇか!ウェルカム王国の郵便屋が、何でここに!?」
「定食屋の旦那が腰を痛めたってキッショウちゃんから聞いてな」
「へっ!『コシ・ナオール』さえあれば、腰痛なんざ…!」
「アンタ!何度言えば分かるんだい!?『コシ・ナオール』は今切らしてて、入荷待ちなんだよ!」

「コシ・ナオールの材料は~、
『コシフリ草』『コシク茸』『スウェール・オ・キューブ』『リョウヤクリンゴ』です~」
チュニスが『コシ・ナオール』の材料を言い並べた。
「あら!エルフのお嬢ちゃん!『コシ・ナオール』の作り方を知ってるのかい!?」
「はい~。私「衛生士(メディック)」ですから~」
「リョウヤクリンゴなら…ほら、そこに たんとあるよ。
うちの人の腰痛のお見舞いにって近所の人が持ってきてくれたんだ」
マリシは、店の隅にある「リョウヤクリンゴ」がいっぱいのカゴを指差した。
「リョウヤクリンゴは、万病に満遍なく効くから、腰痛には気休めなんだけどね。
それでも、リンリンゴの森に行ってリョウヤクリンゴを採ってきた人達の気持ちが何よりも嬉しくてさ…
コシ・ナオールの代わりに毎日うちの人に食べさせてるんだ」
マリシの話を聞いていた看護兵のマリアは、真剣な面持ちでチュニスに聞いた。
「チュニスさん!あとの材料は、ザギン山にあるんですよねぇ~」
「そうです~。さっそく、採りに行きましょう~」

ザギン山は、いつも雪で真っ白。当然、森の中も真っ白。チュニス達は、雪をかき分けつつ材料を探していた。
「ちょっと!何なのよ!寒すぎるわよ!」
「そんな網タイツなんか履いてるからよ、タンゴちゃん」
「この網タイツと脚線美は、アタシの美学よ!ポリシーよ!どんな場所に居ようと、そこは譲れないわ!」
「うるせぇぞ!アニス!タンゴ!ちったぁ手伝え。『スウェール・オ・キューブ』ってのは、コレか?」
シンジローは、黒いサイコロ状の塊をチュニスに見せた。
「はい~。そうです~」

コシク茸は、サルノコシカケのように木の幹に生えていた。
「コシク茸を採る時は、できるだけ優しく採って下さいね。でないと…」
トリオン隊長は、マリアの忠告を無視して乱雑にコシク茸をむしり取った。その途端…。
「な、何だッ!? 粉々に砕けちまったぞッ!?」
「そうやって、すぐに「腰砕け」になってしまうから『コシク茸』って呼ばれてるんですぅ~」
「ダジャレかよッ!?」
「どのみち~、粉にして使うから~、腰砕けになっても支障ないですけどね~」
そう言いながらも、チュニスは「コシク茸」が『腰砕け』にならないように優しく採っていた。

「何でアタシまで薬草採りに?」
「タンゴさん~。コシフリ草を捕獲するためには~、あなたの力が~、必要なんです~」




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