深淵の中の蝶
- カテゴリ:自作小説
- 2025/02/08 01:41:31
第三十二章
彼は、ゆっくりと酒から白湯へと飲むものを移行し、酔いが醒めて来たかの様に私の話に真剣に向き合ってくれていた。少しづつ彼はいつもの彼を取り戻しつつある中、…「そうだったんすね…」と神妙に考えながら言葉を選ぶかのようにゆっくりと口を開いた。「…なんか、すんません…俺…盛大に勘違いしちゃってて…」と…「ううん、何も話してなかったもんね、…ごめんね?」と彼へと言葉を返した。…「でも、そんな深刻に考えないでね?」と私は笑顔で彼へと伝えた。…「あ、はい…」といつになく元気をなくしてしまっている様に見えた彼に…「私は大丈夫だよ、悠さん、いつも悠さんから元気貰ってる、ありがとう」と伝えると、彼は少しだけ微笑んで…「それは俺もっす、あざす」と答えてくれた。彼はどこかしらで安堵したように、…「あー俺、酒なんて普段飲まねーのに…みっともねー所由佳里さんに見せちゃいました」と笑いながら恥ずかし気に言っていた。…「そうなんだね、ふふ」と私もつられて笑ってしまっていた。…「すんません、酒に頼っちまって…俺、正直戸惑ったんすよね…はは、かっこ悪ぃ…」…「全然だよ…いつもと違う悠さんだったけど、優しい悠さんに変わりなかったからね…ふふ」と私は彼へと伝えた。…「ちょっとベランダで一服させて貰って良いっすか?」と突然の提案をしてきた。…あ、うん」と私は返事をし、彼をベランダへと向かわせた。いつの間にか2つに増えていた灰皿の1つを渡し、ほんの少しの冷気を纏いながらも彼はベランダへと出て、煙草へと火を点けていた。
そんな彼の後姿を見つめながら私は部屋の中で煙草へと火を点ける。部屋の中と外で煙草の煙が揺れる頃、彼はゆっくりと煙草の煙を吐き出し、部屋へと振り向き私と同じ目線になる様にしゃがみ込みながら、…「俺、由佳里さんの事好きみたいっす」とにこやか且つ爽やかささえ帯る様に言葉にした。…「…え?」私は唐突に簡潔に言われた事に驚きを隠せず、にこっと笑う彼の顔を見て、ぽかんとしてしまった。…「もー認めざるを得ないんすよね、ははは…正直に言います、きっと俺今日嫉妬したんすよ、由佳里さんが男の人といるの見て…そんで勢いで酒に逃げちゃったんす、はは…ほんと、かっこ付かないんすけどね」と笑いながら言ってくれた。「…そう、だったの…?」私は戸惑いながらも言わなきゃ、と私も思い…「…ごめん、私も悠さんが好きみたい」と伝えた。…「へ…?マジすか!?」とお互いに戸惑いながらお互い好意を抱いて居た事を伝える事になった。…伝える事はないだろうと思っていた私の好意。こんな風に伝える日がくるなんて思ってもなかったな、と思い私は話を少し続けた。…「…でもね、悠さんには恋人さんの事を忘れては欲しくないとも思っててね、と言うより一生恋人さんの事を想い続けて欲しいと言うか…だから、なんて言ったら良いんだろうね」と纏まらないまま言葉にした。…「俺も上手く言えないんすけど…恋人の事は一生忘れらんねー存在なんすよ、でもその上で由佳里さんが好きっす、はは」…「なんだか似た様な事、考えてるね私達って…ふふふ」と笑った。…「そうっすね、ははは」お互いに笑い合った後に、彼は部屋へと戻り私をそっと抱き締めてくれた。
…「都合の良い事言っちゃってんのは申し訳ないっすけど、俺恋人の事は忘れたくないっす、それでも由佳里さんに俺の恋人になって欲しいなって思ってます」…「うん、お願いします」と私は応えた。悠さんにはどうしても突然いなくなってしまった恋人さんを忘れて欲しくなかった私は、そう返事をした。私は何故か泣いていたらしく、悠さんは「嫌っすか?」と尋ねて来た。「ううん、逆に嬉しくて…」…「そうっすか?」…「うん、私もそう願ってたし、凄く嬉しくてね」と私は答えた。…「ありがとうございます」…「すげー嬉しいっす」…「私も、嬉しい」二人だけの優しい時間が過ぎて行くように私達はお互いを抱き締め合い、…「早急過ぎるかもしれねーんすけどキスしてもいーっすか?」と尋ねた。…「ふふふ、本当、早急ね」と私は返し、…「ははは、すんません」と言い、…「良いんだよ…ふふふ…少しだけ、一緒に煙草吸ってからにしようか」と、私は彼へと伝え、二人だけの空間の中で、お互いにしっかりと目を見つめ合いながら軽く話をした。「彼は私の涙を優しく拭いながら、微笑み…「俺ら、一緒に暮らしません?」と言ってくれた。私はゆっくりと頷きキスを交わした。
素敵すぎます!!!
誤解が解けて ホッとして また日常に戻るのかと思ってました
一歩踏み出せたからこそ 思いを告げる
ああ バレンタイン前になんて素敵なお話 ありがとうございます
心が温かくなりました
ありがとうございます(*ノωノ)