Two Unknown Minutes (1)
- カテゴリ:自作小説
- 2024/09/24 09:47:30
金曜の夜、ロンドンのダルストン地区にある”Damian69“という新進気鋭のクラブはダブステップの新星、ウラジミール・ドストエフスキーという謎のミュージシャンのシークレットライブで盛り上がっていた。
ドストエフスキー(もちろん、偽名、アーティストネームだ。)は、のっぺらぼうの黒い仮面を被った、プロフィール非公開のミュージシャンで、その音楽もかなり実験的であった。
彼は、中国の大きなドラにたくさんのパッチをつけて、そのわずかな震えを音にしたり、自らの心臓の鼓動や観客たちの歓声までもリアルタイムで音楽に反映させて、極端なエフェクトをかけ、エンドレスで音を変えていくというスタイルの音楽をやっていた。
その日は特に過激にぶっ飛んだ演奏で、若者たちはMDMAをキメて大盛り上がりして、中には上半身裸になってる女の子たちまでいた。
ところがここで着目するべきは、そのドストエフスキーなるミュージシャンでも、おっぱいを出して騒いでる女の子たちでも、ドラッグをキメて目が飛んで大声をあげてる若者たちでも無い。
奇妙な仮面を被って過激な音楽を奏でて悦に入ってるドストエフスキーがいるステージ上から、観客たちが盛り上がってるフロア、そして、クラブのコンクリートの壁に、注目を移していただきたい。
コンクリート打ちっぱなしの壁の角、、、
いや、そっちじゃなくて、反対側の壁の角だ。
そう、その角の下、床の方にゆっくりと目線を下げていってほしい。
そこにこそ着目するべきなのだ。
もちろん、彼からすれば地球人が宇宙人である。しかも、とても奇妙な。
みょうちきりんな騒音を大音量で奏で、体に良くない「ドラッグ」「テキーラ」などを過剰に摂取し、極端な大声を出して、自身の生命活動を自分で妨げて、身体を不健康にしている行為は全く理解の出来ないことであった。
彼は私たちと形態があまりにも違い、宇宙「人」と呼ぶには少々無理があるので、正確には宇宙生命体というべきか。
子供の指くらいの太さの黒く長いものが「ぬ」の形になってると思ってもらって差し支えないだろう。
しかし、ここで誤解していただきたくないのは、「ぬ」の形から解けて、長い伸ばし棒「ー」や「〜」になったり、「ね」になったり「あ」になったりはしない。ということだ。
「ぬ」はあくまで「ぬ」であり、そのままの形の生命体だ。
人間の形が急に4本腕になったりしないのと同様、別に宇宙生命体だからといって、“そんなふうに”なるというのは地球人たちの勝手なイマジネーションに過ぎず、現実の宇宙生命体はそんな変化(へんげ)などしない。
そして、他にも2種類、アラビア文字の「س」(sin)に似た形のと、ハングル文字の「요」(ヨ)に似た形の同じ種族の宇宙生命体がいたが、そのクラブ“Damian69”の隅っこの壁の穴の中には「ぬ」だけがいた。
彼は、この地球の歴史上、初めて地球に来た宇宙生命体であった。
つまり、地球が誕生してから、古代の時代から2024年の9月xx日現在まで、たった一つの宇宙生命体も宇宙の乗りものも、この地球に来たことなど無かったのだ。
あんなクラブミュージックやおっぱいなんかより、アメリカ大統領選挙より、何よりも、最も今、注目するべきなのは、そのコンクリートの壁の小さな穴の中なのだ。ということをご理解いただけたと思う。
しかし、残念ながら(いや、幸運と言うべきか)、現時点で誰一人としてこの事実に気づいているものはいない。
その「ぬ」は、一体どこから来たのか、どんな生物なのか、気になるところであろう。
まずその「ぬ」や「س」、「요」が存在しているのは、地球から遠く離れた銀河にある@@星、とみなさんは想像するかも知れないが、そうではない。
地球や水星、太陽などという惑星が島で、宇宙空間が海と考えていただければわかりやすい。
皆さんもご存知のすばる星雲の宇宙空間に彼らは暮らしている。
実は宇宙空間には、すばる星雲に住んでる彼らの種族の他にも、多種多様の宇宙生命体が宇宙空間のさまざまなところで暮らしている。
私たちの住む地球の海を考えていただければ、良い例だろう。
北極海にはオヒョウやアザラシが住み、沖縄の海にはエブラウミヘビやマンタが暮らしていると考えると、とてつもなく広い宇宙空間に何の生命体もいないと考える方が不自然では無いだろうか?
北極圏のオヒョウと沖縄のエブラウミヘビのように、お互いのことは知らないが、あらゆる生命体が宇宙空間で暮らしているのだ。
もちろん、宇宙空間のみならず私たち地球の生き物のように星に住むものもいる。
しかし、ここではその途方もない数の宇宙生命体たちについて語ることはこれくらいにして、話を戻そう。
(続く)
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