【第4話】シン・ラジオ・ガール
- カテゴリ:自作小説
- 2024/08/25 21:51:37
★前回までのあらすじ
(クラスに馴染めない俺は、幽霊部活の天文部に在籍していた。
ある日、ラジオから流れた、同じ年の地元の同じ年の女子からのリクエスト曲をラジオで聞き、ちょっとやる気が出たのか部活に行きだした。新しい顧問の槇原”コミュ障25歳独身女顧問”と、新入部員の美少女甲斐名都と3人の部活が始まった)
「先輩っ!木星ってめっちゃ衛星あるんですってね!私何も知らなかったんですよ!その中でもエウロパが一番生命の存在可能性が高いんですって!」
新入部員の甲斐女子が、のんびり部室で(久しぶりに一人でいた。マッキーは教育委員会の会合で不在だった)ラジオ聞いてた俺の近くに飛び込んできて一気にまくしたてる。
「ぇ?あ、そうなの?悪い 俺何も知らねーしさ」
「部長なのにそんな事でいいんですか?ダメダメじゃないですかー…」
ぷっ、と頬膨らませてやや紅潮した顔で此方を睨む甲斐女子。
俺、こういう熱い系苦手なんだよね。
ラジオで聞いた忘れられない曲をスマホでヘビロテしつつ、それでも部活サボるわけでもなく、何となく部室に来ては、時間を持て余さないように勉強してたりする。そういうのが甲斐女子には何だか物足りないらしい。
でもな。
頼むからそんな短い制服ミニ姿で俺に近寄らないでくれ。
無邪気って反則だぞ?
など…と言えるはずもなく。俺は飛び込んでは何も考えずに俺の顔にまで接近する下級生部員を持て余していた。
実は昨日。
授業が終わった後、遊び人系の同じクラスメート男子数人がコソコソと俺の噂話をしてるの聞いちゃったんだ。
やつらはわざと聞こえるように話してたんだろうな…
『あいつさ…部活真面目にやってるらしいぞ』
『あれだろ。槇原先生とか新入生の女の子が新しく入って来たからだろ』
『だな。なんか調子に乗ってるみたいだな。あんなにもてねーやつなのにさ』
『人生初の女子との会話ターンに舞い上がってるんだろ』
しかしね
陰口をこんなにまともに食らうなんて思ってもみなかった。
けっこーダメージデカい。
こんな俺だって、やっぱきっついよね。
聞こえなかった振りして、部室に駆け込んだのは言うまでもない。
ラジオ流しながら、部室に常備してあるBOSSの缶コーヒーのプルトップを開けて、いろんなことを考えてた。
つまんねー陰口に動揺してるってのも、なんだかかっこ悪くてさ。
でもそのうち雑念が消えてね。いつのまにか、俺はぼんやり、あのリクエストをしたソニーさんっていうラジオネームの人の事を考えてた。
俺の地元市だよな。
振られた彼って、どんな奴だったんだろう?
どこの学校なんだろう?
ハッピーエンド、本当に好きなんだろうか…
振られて、それで平静でいられるって、俺には想像もつかないし。おれなら きっと泣き叫んですがりつくだろうし…
なんて考えてて。
そこに甲斐女子が来たんだよな。
分かる、分かるよ。
甲斐女子が男子に人気あるのがさ。
美形だし、150センチと小柄だし。瞳なんて透き通るように茶色いし。
(制服の上からも、甲斐女子の胸もかなり大きいのが分かったのは内緒だw)
「先輩っ 何をぼんやりしてるんですかっ!」
甲斐女子は俺にのしかかるように,眦釣り上げて詰問してくる。
俺が椅子に座ったとこに、畳みかけるように言葉を投げかけてくる。
「あ、いや…」
答えを言いよどんで。
何なんだこの子は… て(正直なとこ)思ってた。
その時、部室のドアが開いた。
誰? と振り向くとそこに
マッキーがいた。
「先生?今日は会合だったんじゃ?…」
そう言いかけた俺に、マッキーのパンチが飛んできた。
そりゃそうだ。
俺と甲斐女子、椅子の上で抱き合ってるようにしか見えなかったんだろ。
(その時は気付かなかったが、あとで分かったんだけど)
マッキーのグー突撃は利いた。
「だから言っただろっ
断れってなっ!」
でもなんで俺が殴られるんだろう… って 強烈な痛みを感じた瞬間。
そう思ったんだよね。
(続く)
青春…って感じがしてきました。