【第2話】シン・ラジオ・ガール
- カテゴリ:自作小説
- 2024/08/20 22:54:56
実は俺は、こっそり(と言うほどでもないけど)文化部に入っていた。
今時、まったく流行らない天文部だ。
とは言っても部員は2年の俺だけ。 なぜ俺がこの部にいたかって言うとね…
同じ出身市の先輩が、新入生だった俺を無理やり引きずり込んだって簡単な話で。
熱心でもない先輩が何で?って思ったけど、まあ揉めるのも面倒くさいし、いいですよって入ったものの、その後ずっと幽霊部員。
唯一のその先輩が卒業してからは、俺だけになっちまった。
一応顧問の先生はいて、定年間際の古文の先生が務めていたんだけどね。
俺が2年になってから、その先生も転勤しちまって。顧問空席状態。
だから俺は、時々部室に行って誰もいない狭い部屋の椅子に座って
窓の外見ながらイヤフォンでラジオ聞いたりしてた。
天文学の事なんて全く興味なかった。
ラジオでメッセージ読まれたあと、俺はネットでバックナンバーの曲を入手して。
そして思い出の曲、スマホに入れた『ハッピーエンド』 を聞きながら部室に向かったのは単なる気まぐれ。
部室は旧校舎の4階の一番端っこで、そこは他の文化部の部室もない場所なので、寮の部屋に戻るのが億劫な時は部室で過ごすのが案外楽だったってことでさ。
曲を聞きながら部室のドアを開けた瞬間、何か柔らかくてデカいものが俺の顔に飛んできた。
ビックリして中を見ると、そこには英語の槇原めぐみ先生が肩を怒らせて立っていたんだ。
「あんたねっ! 何日 部活サボってるんだよっ!」
デカい声で怒鳴られた時は何が何だかわからなかったなあ。
「マッキー…何投げてんだよ…」
「いやしくも教師のことをマッキーだなんて呼ぶ馬鹿がいるかっ!」
またクッションが飛んできた。
俺が部室で使ってるミッキーマウスのクッションが2つ投げ飛ばされて、俺はまともに食らって、あおりで真後ろにぶっ倒れちゃったんだわ。
先生を落ち着かせて話聞いてみると、空席だった天文部の顧問が職員会議で問題になってたらしい。 部員一人の幽霊文化部に顧問なんていらねーよ、って感じなんだけど、部費も生徒会から支給されているから顧問は必要!って教頭に押し切られて、やる気ない槇原先生が押し付けられたのが先週らしい。
でもまずいことに…俺は暫くこの部室に来てなかったんだが、先生は毎日真面目に通ってたそうだ。
スパーク状態からやや平静に戻ったマッキーから聞いたのがそんな話で。
「先生って、俺よりやる気なさげじゃね?なのになんで顧問になんてなったんだよ」
「うるさいバカ。私だって顧問になんかなりたくなかったわよ!」
怒りに油注いじゃったみたい。
槇村先生は、顔を真っ赤にさせて
「私が何日ここに来たと思ってるんだよ!たった一人の部員を待ってさ…顧問になんてならなきゃ、夕方から居酒屋で焼き蛸つまみに、焼酎飲む愉しみがあったんだよ!」
「先生…独身女子、一人でしょうちゅうに焼き蛸って。それって 痛くね?」
眼から火花が飛び散った。
後頭部を蹴り上げられたらしい。
こっちの方が痛いぞ。
女のくせに(これはヤバい表現?w)、小柄で150センチにも届かないくせに、回し蹴りは見事だったなあ。
あんまり蹴り続けられると、スカートから下着が…ってことになるしさ。
踏ん張って、ここは俺が大人にならなきゃって口噤んだ。
先生って言ってもまだ3年目の新米に毛が生えた程度の教師だ。
「分かったから落ち着いてよ。これからはマメに来るからさ。で、先生…天文学の事に詳しいの?」
「そんなわけないでしょ!あんたこそ部員だから詳しいんじゃないの?」
25歳のくせに、なんでこんなに子供っぽいんだ。
俺はため息をついた。
何だかんだ言いながら、先生は机の上に置いてあったバッグからお握りを取り出した。
「これでも食べろ。部員とちょっとでも仲良くなろうって思ってた私がバカだったよ… でも捨てるの勿体ないからやるよっ」
「せんせー これコンビニの梅お握り…」
「お前みたいなやつに、手作りのお握りなんて作ってやれるかぁぁぁ!」
またしても回し蹴りが後頭部を襲ったのは言うまでもないか。(続く)
1話の、ラジオが懐かしいなと思いながら読みました。
他の方も書かれてますが、先生登場と部活動で前の話とはまた違う雰囲気ですね(^^)
楽しい!
2話目、ガラッと変わった感じ。
先生登場ですね。
そして先生らしくない先生・・・
今後、どうなっていくのかこの関係?!
ラジオは何処に行ったのかな~??
続き待ちますね