トノスカとマカ 5
- カテゴリ:自作小説
- 2024/07/22 05:06:57
トノスカたちは洞窟から町へ戻るとすぐにブルーの家に行った。
アーシャンだけは今日はブルーに会わない方がいい。と反対したけど、トノスカたちは絶対に会いに行くと言って聞かなかった。
トノスカもマカもペスカトーレも、血の約束を破られたことにすごく怒っていた。
特にトノスカは顔を真っ赤にして激怒していた。
アーシャンは大変なことになってしまうと心配して、みんなについてブルーの家に行った。
ブルーの家の前に着くと、アーシャンが珍しく、強い口調で言った。
ぼくがブルーと話をする。
君たちは後ろに下がっていてくれ。
気弱なアーシャンが静かだが断固たる強い決意を持った目ではっきりとそう言ったので、トノスカたちは何も言えずにアーシャンに任せてみることにした。
トノスカは一応はアーシャンに任せたがいざとなればいつでもブルーをぶっ飛ばすつもりでいた。
アーシャンがドアをノックすると、家の中から、誰だい、うるさいねえ。。とブツブツ言う声が聞こえて、ブルーの母親が出てきた。ブルーの母親は虚ろな目で、とても酒臭かった。
アーシャンは、ブルーはいますか?と、母親に尋ねた。
母親は一瞬なにを言ってるの理解できないみたいに、ぼんやりとアーシャンの顔を眺めて、それから家の中に向かって、ブルーを呼んだ。
バカ息子、誰か来てるよ!
すると、ブルーが、うるせえ、誰にも会いたくねえ!と怒鳴る声が聞こえた。
母親は、どうすんだい!?と叫ぶと、ブルーは、追い返せ!と叫び返した。
トノスカが、何か言おうと前へ出ようとするのを、アーシャンは手で制して、失礼します。と言うと、ブルーの母親の横をすり抜けてズカズカと家の中に入って行った。
トノスカたちはアーシャンの行動に驚いたが、後に続いた。
なんだい!あんたたち!人の家に勝手に入るんじゃないよ!!
と、母親が叫んだが、アーシャンはそれを無視して、家の中に進んでいった。
入ってすぐの部屋が居間になっていて、酒瓶やらゴミやらが散らかってとても汚く、すえた匂いがした。居間の奥にはピカピカのバイクが置いてあって、その後ろにあるドアがブルーがいる部屋のようだった。
アーシャンは奥の部屋のドアを開けた。
ブルーは、ものが散らかった床にだらしなく座っていて、突然ドアを開けたアーシャンに驚いていた。
おい、なんだ!おまえ!おれの部屋に勝手に入るんじゃねえ!!
しかし、アーシャンはドアのところに立ったまま、まっすぐブルーを見て言った。
君が水晶を盗ったのかい?
後ろにいるトノスカたちにはアーシャンの足がぶるぶると震えているのがわかった。
ブルーは、アーシャンをまともに見て、だらしなく座ったまま笑って余裕たっぷりに言った。
だったらどうする?
ブルーはアーシャンをなめきっていた。
アーシャンが言い返した。
どうもしないよ。ただ、君がぼくたちの血の約束を破ったのか知りたいだけだ。
はっ、何が血の約束だ?ガキのお遊びじゃねえか。
そうさ、おれがあのくだらない水晶を売っちまったのさ!!
そこにあるバイクを買ったんだ!
でもまだ金は余ってるぜ!隣町に持ってったら、すげえ金で売れたからな!!
でも、お前らなんかに1ペニーもやらねえ!あのクソババアにもな!!
おれが売った金だ!!おれのもんだ!!
ブルーは笑いながらそう叫んで、目は血走っていた。
そして、だらしなく座ったままアーシャンの後ろにいるトノスカを指差して言った。
おい、トノスカ、やるならやるぜ。今日はこないだみてえに甘くねえ、ぶっ殺してやる。アーシャンなんて腰抜けの後ろに隠れやがって、ビビってんのか!?
ブルーはそう言って保安官が使う木の棍棒を持って立ち上がった。どうしてそんなものがブルーの部屋にあるのか知らなかったが、きっと盗んだのだろう。5人の中で一番大きいブルーが、一番背が低くて細いアーシャンの前に立つと、大人と子供のように見えた。
すると、トノスカがアーシャンを押しのけて、ブルーの近くへ行こうとした。
しかし、アーシャンは無言で口を真一文字に結び、トノスカの肩を両手でつかんで、グイグイとドアの外へ押し戻した。
アーシャンは振り返って、ブルーに言った。
ぼぼぼ、ぼっ、ぼくは、君にかなわない。だ、だけど、けっ、けけ、ケンカをしたいなら、ぼくが相手になってやる!!!きっ、きき、きみみたいな卑怯者なんか、ここっ、怖くないっ!!
アーシャンの口元は震えて、歯がカチカチと鳴っていた。
ブルーはアーシャンのその様子を見て、余裕たっぷりに上から見下ろして、警棒をアーシャンの鼻先に突きつけるとでかい声で怒鳴った。
はは!!!!
おまえがおれとケンカするってのか!?
おもしれえ!!!!
かかって来いよ!ママのおっぱい吸ってる赤ン坊野郎っ!!
赤ン坊というのは、アーシャンが小さな身体をバカにされるとき、よく言われる言葉だった。
ぼっ、ぼぼぼくは赤ン坊なんかじゃない。。
そう言ってアーシャンは握り拳を固め、ブルーに向かって一歩踏み出そうとした。
アーシャンの顔は真っ青になっていた。
そのとき、マカが後ろからアーシャンの肩にそっと手をかけた。
アーシャン、もういいぜ。
帰ろう。
アーシャンの細い肩はじっとり汗ばんでいた。
マカはアーシャンの肩に腕をかけてドアの方へ振り向いて、トノスカとペスカトーレに、帰ろう。と促した。
トノスカは今にもブルーに飛びかかりそうなほど、激昂し、ものすごい目でブルーを睨みつけていたが、ペスカトーレがトノスカを制していた。
ペスカトーレがトノスカを押すようにして、帰ろうぜ。と言った。4人がブルーの部屋から出ると、後ろから、ブルーが叫んだ。
おい?腰抜けども!!!
逃げるのか?!!!
町を歩くときにはおれに会わないように気をつけろ!!
今度会ったらぶちのめしてやるからな!!
それを聞いてトノスカが拳を握り締めて、振り返ろうとしたけど、マカとペスカトーレに抑えられて、そのまま4人はブルーの家を出た。
ブルーの母親は居間のソファーにだらしなく座って、子供たちの騒ぎにも関心無く、虚ろな目でボトルのまま酒を飲んでいて、トノスカたちをちらりとも見なかった。
お〜〜〜、、、、なんと、、ブルーの幸せを考えてくれたんですか。。
めっちゃ、優しい。。。(涙)