犬のレビュー②
- カテゴリ:30代以上
- 2024/07/04 06:38:39
背中かゆい犬 ★★★★★
先日、蕎麦屋から出て歩道を歩いていると、前から来たゴールデンレトリバーが俺とすれ違うかのように店に入って行ったんで、
ペットも入っていい蕎麦屋なんだ?
と思って振り返ったところ、
その蕎麦屋の入り口に、踊り場のようなスペースがあって、そこにジュウタンが置いてあるのですが(砂や水を切るための、よくあるやつ)
ゴールデンレトリバーはそのジュウタンに寝転がって、背中をグリグリこすりつけ始めたのです。
「ひゃー! 背中めっちゃかゆかったんやけど、これで生き返るわぁ!」
といった感じで、ベロを出しながらのた打ち回ってるわけですよ。
それでガラス扉の向こうにいる蕎麦屋の店主がそれを見て笑ってるんですけど
それから犬が何分か背中をこすりつけたあと
「ああ、最高でしたわ~」
みたいな顔してクルクル回りはじめ、そのとき飼い主が店員に向かってペコリとおじぎをしたんですが、そのおじぎの仕方が
「ウチの子がいつもすみません」
的な感じだったんで、もしかしたら散歩のたびにこれやってるんじゃないのかって思いました。
そういえば、階段をあがってくる犬の表情が
「やっと、あのジュウタンの店に着いたわ!」
みたいな感じで、テンションが尋常じゃなかったんですよね。
(番外編)
サクラ ★★★★★
この犬は、学生時代に、自分がペンションにアルバイトに行ったときに出会った犬で、そのペンション経営者の自宅で飼われていたパグです。
この家では、トイプードルとパグが飼われていましたが、トイプードルは部屋の中で飼われており、逆にこのパグのサクラは外で飼われていました。
その理由を主人に聞いたら
「サクラは臭い」
ということだったのですが、臭いをかいだら、これがマジで臭いんですよ。
それに対してトイプードルは可愛らしい臭いがして、しかもこの犬はすごい芸達者な犬で、エサの時間に立ち上がったり、ジャンプしたりして、愛嬌を振りまきまくって、家族にめっちゃ愛されていたんですよね。
ただ、この2匹の格差を見ていると、可愛らしくて愛されるトイプードルは、中学高校時代に女子校生にモテていたイケメンの尾関や吉田であり、
誰からも愛されず、熱い夏も、寒い冬も、家の外の小さな犬小屋の暗がりの中にいるサクラは、中学高校時代のほとんどの時間をゲームセンターの狭い暗がりで過ごした自分と重なって見えて、
もう、いてもたってもいられなくなり、アルバイトが終わってから店主に
「サクラを洗わせてください」
と願い出たんです。
それでその家の近くに露天風呂があったので、サクラをそこに連れて行って、その時サクラは散歩に連れていってもらえると思ったみたいで、ずっと尻尾を振りながら、
グヒグヒッ
と鼻を鳴らしながらついてきたんですが、このグヒグヒッていうのは鼻の低い犬はみんなそうなるみたいなのですが、そのことを知らなかったので
(ああ、この犬は喘息まで持っているのか……)
と心配になり、
「サクラ、俺が、お前の人生を変えてやるからな」
と使命感を燃やし、ボディシャンプーで体中をガンガン洗っていき、チンチンもアナルも完全に洗い上げていったのですが、
その間、サクラはとくに嫌がることなく、ときおりグヒッグヒッと鼻を鳴らすだけでおとなしく洗われており、
その様子に俺は、
「賢い子だ……」
と感動し、
それは、「もののけ姫」で、シシ神の住む場所の手前でヤックルが立ち止まったのを見て、サンが「賢い子ね」と言ったのと酷似していたわけであり、
いよいよこの犬を座敷犬としてデビューさせられることにワクワクしながら1時間近くかけ念入りにサクラを洗い、
家に戻ってタオルで全身を拭いて臭いをかいだら
めっちゃ臭かったんですよね。
「なんでだ!」
と声に出して叫びましたからね。
洗ったはずの場所から、もう芳醇な香りが漂いはじめていて、どういう原理で臭ってるかまったくわからないんですよ。
それで俺は、
「どうしてお前は臭いんだ……」
とがっくりしてたんですけど、サクラはグヒッグヒッと鼻を鳴らしながら僕の顔を無邪気にペロペロと舐めてきました。
そして、そのときサクラがこう言った気がしたんですよね。
「一刻くん、グヒッ……僕の人生は君が思っているほど、グヒッ……悪くないんだよ」
そしてサクラは言いました。
「たしかに俺は犬小屋暮らしだけど、家族の人たちはちゃんとご飯を食べさせてくれるし、たまに散歩を忘れられるけど、その分散歩してもらえる日が楽しいし、
それに、みんなは僕の臭いが嫌いみたいだけど、
僕は自分の臭いが、そんなに嫌いじゃないんだよね」
(そうか、そうなのかサクラ……)
このとき俺は思いました。
サクラを苦しめていたのは、俺自身なのかもしれない。
なぜなら、
俺はサクラの人生を「変えよう」として体を洗い始めたけど、
誰かを「変えよう」とする行為は、裏を返せば、その人の今の状態が「嫌い」ということに他ならないのだから。
それから俺は、アルバイトが終わるとサクラの散歩に行きました。
身体を洗うのではなく、サクラの好きな散歩の時間に使うことにしたのです。
サクラは散歩の時間、短い尻尾を振りながら楽しそうに歩き続けました。
それでも、アルバイトの最終日、どうしても我慢できなくなった俺は、
サクラを露天風呂に連れていきもう一度洗ってみたのですが、やっぱりサクラは臭かったので
「やっぱりお前は、臭いねぇ」
と言って頭をなでてやりましたとさw
少なくとも猫は、特にオスはすごく嫉妬深いんですよ。
くさい犬サクラは匂いフェチの飼い主のところにいってたら幸せだったかも。
その匂いは実はフェロモンの一種だったりして、犬の世界ではモテモテだった可能性もあります。
一刻さん犬好きだったんですね。
オチが秀逸ですねw
読んでてほっこりしました( ◜‿◝ )
さすが一刻さんw誰にでも(犬でも)興味を持って考えたり接したりするんだねえw
私はトイプードルなので、自分がかわいがられることしか考えてませんwww