アーティスト紹介(29)
- カテゴリ:アート/デザイン
- 2024/06/04 23:25:02
久しぶりのアーティスト紹介。
今回は、Delcy Morelos。
まず、Dia:Beaconとか、Dia:Chelsea って聞いたことある?
1974年に、ニューヨークで設立され、アーティストを世に出すことを目的としてるDiaという(ギリシャ語で「通す」という意味らしい)財団なのね。
まず、Dia:Beaconとか、Dia:Chelsea って聞いたことある?
1974年に、ニューヨークで設立され、アーティストを世に出すことを目的としてるDiaという(ギリシャ語で「通す」という意味らしい)財団なのね。
んで、実際に、Robert Smithson, Michael Heizerなどのアーティストたちを世に出している。
その財団が作った美術館が、Dia:BeaconやDia:Chelseaなの。
特にDia:Beaconは、ニューヨークシティよりも北へ行ったBeaconという小さな町にあり、展示されている作品は、通常の美術館よりも大掛かりなものが多い。
もし、ニューヨークに遊びに来ることがあれば、オススメの場所。
Beaconの町も可愛らしいお店がたくさんあって、歩くのも楽しい。
んで、Dia:Chelseaは、2021年にChelseaにオープンした小さめの美術館。
特徴的なのは、スペースをかなり贅沢に使うこと。
今、行われている、このページで紹介するDelcy Morelosの作品は、各スペースに一つづなの。
Delcy Morelosは、コロンビア人の女性アーティスト。
作品のコンセプトは、自然環境と人間の繋がりに注目させるようなものが多い。
彼女は、地球の自然は人間が所有するものではなく、一つの生き物。という考え方を持っているらしい。
学術的な研究も行ってるのかな、たぶん。
ここに書いたこの簡単な説明だけでは全然彼女のコンセプトのほんの触りくらいしか紹介できていないのだろうけど。
現在、Dia:Chelseaへ行くと、彼女の作品が見れる。
まず、美術館のロビーへ行き、チケットを購入しようとすると、今はタダらしい。(やった〜!)
そして、本などが置いてあるコーナーを通り過ぎて、ドアを開けると、そこはとても暗い。
そして、本などが置いてあるコーナーを通り過ぎて、ドアを開けると、そこはとても暗い。
入ってすぐに気づくのは、その作品の醸し出す独特の雰囲気。
そのスペース全体の床に黒い土を基盤としたインスタレーション作品が展示されているのだ。
作品は、左右に分かれていて、中央を観客が歩けるようになっている。
たぶん、木か鉄板の薄いベースがあって、その上に黒い土が敷き詰められている。
そして、彼女がコロンビアの土からできた黒い粘土で作った手のひらに収まるくらいの奇妙な象形文字のような形の彫刻が丁寧に並べられていたり、黒く錆びた鉄パイプが丁寧に並べられていたり、あちらこちらにオブジェクトが点在している。
それ全体で一つの作品というわけだ。(こうゆうスペース全体にものを置いて、空間全てを作品にするような芸術表現形式がインスタレーションと呼ばれます。)
見た瞬間にその雰囲気に圧倒された。
実は、事前に写真で見た感じではそれほど期待していなかった。
よくあるちょっと学術的なインスタレーションアートかな?くらいにしか思ってなかった。
しかし、実際の作品の中に足を踏み入れる(この作品の場合はまさに作品の中に入るのである)と、その土の持つ、または大地の持つ深淵な呼吸を見事に再現していて、本当に素晴らしかったのである。
おれは感動して、そのスペースで、一つ一つのオブジェクトを点検し、確認し、また椅子に座って全体を眺め、写真を撮り、また作品の中を歩いてみたり、としばらく時間をかけて作品を味わった。
それから、次のスペースはまた、ドアを開けて入る。
すると、初めの作品のスペースとは打って変わって、今度は、とても明るい。
ガラス張りの部屋で太陽の明かりが燦々と降り注いでいる。
急に昼になったかのよう。
次のスペースに入った途端に感じるのは、ムワッとした枯れ草と土の匂い。
なぜなら、そのスペースの中空全体に巨大な土と枯れ草の塊があるからなのだ。
地面より50cmくらい開いた中空にそれは展示されている。
土を塗り固めて、それに枯草も混ぜている。
枯れ草は乾いた土の表面からあちらこちらに飛び出している。
それは壁のように聳え立っていて、周りをぐるりと一周しながら作品を鑑賞するのだ。
そして、スペースにはDia:Beaconの職員がいるのだけど、彼女に「優しくなら触ってもいいよ。」と言われた。
作者のDelcy Morelosの意向で、この作品は触れる作品のようだ。
触ってみると、土の乾きと枯れ草のカサカサのテクスチャーを感じられる。
そして、作品の周りを後方まで回っていくと、後方部分は、作品が鋭角な三角形に分かれていて、その間に入ることができる。
入っていくと、三角形の頂点に近づくにつれて当然狭くなっていく。
左右の土と枯れ草が自分に近くなる。
当然、その匂いもより強く感じられるようになっていた。
この作品の場合は、匂い、触った感触、土の存在感、自然のものを使っているから、経年変化も、全て含めての作品なのだと思う。
実際に、Delcy Morelosは、季節を変えてまた変化を見に来てほしい。と言ってて、作品は長期展示されているから、そろそろもう一度見に行ってみようかと思う。
このアーティストは、残念ながら、写真や動画ではとても伝わりにくい。。
きっと、見ても、その迫力も雰囲気も感じにくいと思う。
ふーん、って感じになってしまうかも。。(涙)
でも、実際の作品は本当に素晴らしい。
もし、見る機会があれば、ぜひ。
動画もちょっと見つけたけど、正直、あの作品の良さを全然伝えられてなくて、写真の方がまだ良いので、写真が載ってるDia:Chelseaのリンクを貼っておくね〜。
https://diaart.org/exhibition/exhibitions-projects/delcy-morelos-el-abrazo-exhibition
https://diaart.org/exhibition/exhibitions-projects/delcy-morelos-el-abrazo-exhibition
はい、これはほんとに実際に見ないとなかなかわからない作品だと思います〜。
先日見て、感動したから紹介したけどね。
おれがNYに来る以前の日本は現代アートはあまり見れるところが少なかったけど、それからはちょっと多くなってきてる印象。
そんなには知らないけど。
東京とかではインスタレーションを展示するようなギャラリーももしかしたらあるのかな〜。とか想像します。
実際見たら面白そうですけどね~。
それが仮想でなくリアルに存在するものなら尚更。
こういう分野は特に日本のアーティストは不利な気がする。(そもそも発表の場がそういったものを想定していないから)