Nicotto Town



久遠永遠桜の下で【6】かくれんぼ

ついに、ミカエルはルシフェルを討ち果たした!だが、瀕死のルシフェルに手首を掴まれ 下に引っ張られた!

「ミカエル、私と一緒に地獄へ堕ちてくれ…!」
「ごめんなさい、ルシフェル。一緒には行けない。だって、私は もう…」
「翼が透明に…!? ミカエル!キミは あの時 すでに…」
ミカエルは 何も言わず 少し悲しそうに微笑んだ。
ミカエルは 背中の翼だけでなく体まで透けて 光に包まれ 天に昇る。それと同時に ルシフェルは 地に堕ちる。

「ミカル!天界の用事が済んだら 必ず戻ってこいよ!」「クォン・トワ桜の木の下で待ってて、タケル…」
ミカルは 夢の中で悟る。昔、タケルと交わした約束を果たせずに死んだことを…。
「タケル…!タケル!」
ミカルはタケルの名前を呼びながら 勢い良く身を起こす。起きた反動で涙がこぼれ落ちて、布団を濡らした。
コンコン。ミカルの部屋がノックされる。
「ミカルさん、起きてますかぁ?朝御飯を作ったので呼びに来ましたぁ~」
「ありがとう、マリア。すぐ行くわ」
ミカルは 涙を手の甲で拭い、自室を出て 階下の食堂に降りていった。

「ミカルさんが朝食に何を食べるか分からなかったので 一通り作りましたぁ~」
ご飯に味噌汁。厚焼きトースト、カリカリベーコンにスクランブルエッグ。中華粥にザーサイ。
サラダ 焼き鮭 お浸し エビシューマイ チーズ etc…テーブルいっぱいに並んだ和洋折衷の朝食。
「わぁっ、朝からすごいね…!マリア、本当にありがとう…!」
ミカルは 少し涙ぐんだ。マリアが作った和洋折衷スペシャル朝食に助けられた。
「…あとで 買い物行かないとね」「そうですねぇ~」

「もう いいか~い?」「まぁだだよ~!」
シーナガルドの村の子供たちが 森の中でかくれんぼをしている。鬼は「フレア・スカーレット」だ。
「もう いいか~い?」「もう いいよ~!」
「ミヤギくん、み~っけ!」「み、見つかっちまったべ…」
金髪ハーフエルフの男児「ミヤギ・ハーゲン」は、
早く フレアに見つけてほしくて 近くの分かりやすい所に隠れていた。
「ダッチャくん、みっけ!」「えっ!? どうして、バレたっちゃ!?」
ちびっ子忍者「ダッチャ・ワイヤー」は 隠れ身の術で木に擬態して隠れていたつもりが、
隠れ身の布の裏表を間違えて 唐松模様の方で隠れてたために あっさり見つかってしまった。
「ヒルダちゃん、みっけ!」「あ~あ、見つかっちゃった…」
銀髪ボブカットの女児「ヒルダ・ポリアンナ」は 低木の草むらに隠れていたが、足元が見えていた。
「アルヴェくん、みっけ!」「え~、何で 分かったの?」
フレアが「アルヴェ・リッヒ」の胸元で光っているお守りのアメジストを指差す。
「それと その髪の色」「ちぇ~、今回は結構 自信あったのになぁ~」
アルヴェ・リッヒは ダークコーラルピンクの髪を指でいじりながらぼやく。
「あとはピノちゃんだけだね」
フレアたちは ピノを探したが 見つからない。
森の中をあらかた探したが どこにもいない。ピノが出てくる気配もない。
「ヒルダちゃん!ピノちゃん、居た?」「ううん。ピノちゃ~ん!出ておいで~!」
「ピノ~!おめぇがかくれんぼ上手なのは分がったからよぉ~!早く出てきてくんろ~!」
「そうは言うけど ミヤギくん。ピノちゃんの小さな翼まで隠せる所なんてそうそう無いっちゃよ~!?」
「まさか、ピノの奴 森の奥に行ったんじゃ…!」アルヴェは 心配そうに表情を曇らせる。
「ええっ!? 森の奥はマカマカイの森とつながってて危ないから入っちゃいけないのに…!」
フレアは 森の奥への暗がりを見ながら嘆いた。
そうとは知らず ピノはマカマカイの森の中でフレアたちが見つけてくれるのをずっと待っていた。
いくら待っても フレアたちは来ない。隠れるのも飽きてきて ピノはその場で眠り込んでしまった…。

ミカルとマリアは 近所にある雑貨店「マカマカイマーケット」で買い物をした。その帰り道…。
「ピノ~!どこにいるの~?」「ピノ!「かくれんぼ」は もう終わりだよ~!」
ピノの母「タバサ・ヨーク」とピノの父「ジグルード・ヨーク」が 末娘の「ピノ・ヨーク」を探していた。
「ブランさんとノエルさんのお父さんとお母さん!どうして、マカマカイに?」と、マリア。
「マリアさん!娘のピノを見かけませんでしたか?」と、タバサ。
「ピノが友達とかくれんぼしている間に シーナガルドの森の奥に入って マカマカイに迷い込んでしまって…」
事情を説明しているジグルードの表情に焦りの色が見え始めている。
「ミカルさん!」「うん。私も一緒にピノちゃんを探す!」
一旦、買い物の荷物を置きに行こうと ミカルの家に行ったら ロキがすでに家の前で待っていた。
「やぁ。ミカル、マリア…」
「ロキさん!ピノちゃん、見かけませんでしたかぁ?」
「ピノ?…ピノってブランの妹の?…って、ジグルードさんにタバサさん!?」
「しばらくぶりだね、ロキくん。それで、ピノがどこに行ったか知らないか?」
「背丈はこのくらいで 背中にピンク色の小さな翼がある女の子で…」
タバサがロキにピノの特徴を説明している間に ピノ本人が現れた!
「ママ!」「ピノ!」互いに駆け寄り 抱き合うピノとタバサ。
「ピノ!どこ行ってたんだ!? 心配したぞ!」「パパ!」
「あのね、ピノ ともだちともりでかくれんぼしてたら ねむくなっちゃって
めがさめたら ノワールおじいちゃんが…」
「タバサ!子供を自分の目の届かぬ所で遊ばせて放置するなぞ 母親の風上にもおけん!」
「お父様!」
「これ!ノワール!孫の前で何ですか!?」
「しかし、ルミナ…」
「しかしもかかしもありません!
娘のタバサの結婚相手が人間だからという理由で結婚に猛反対して、
ヨーク本家から追い出したのは ノワール!あなたじゃありませんか!
それだけでは飽き足らず 婿のジグルードや孫のノエルとブランまで苦しめておきながら
一番下の孫娘のピノだけは溺愛するなんて虫が良すぎます!」
「ルミナ!言いたいことは それだけか?」
「ふぇ~ん!ノワールおじいちゃんも ルミナおばあちゃんも こわいよぉ~!」
「ピノ、もう帰りましょう。ほら、おじいちゃんとおばあちゃんにバイバイして」
「うん。バイバイ、ノワールおじいちゃん ルミナおばあちゃん…」
ピノは ジグルードとタバサと一緒に帰っていった。
気まずい空気が残る中、三人の後ろ姿が見えなくなり始めた頃 ノワールは話を切り出す。
「おい、ジャバのせがれ。タバサたちをシーナガルドまで送り届けてやれ」
「え?何でオレが?」
「ここからシーナガルドの村まで 歩いて帰るには遠すぎるじゃろうが!
それに、瞬間移動できる奴は ロキ お前さんしかおらん」
「…分かったよ。他ならぬノワールじいさんの頼みだ」
ロキは タバサたちの所に向かった。
「さ、私たちも帰りましょう」
ルミナはノワールと一緒にセイレーンの翼で飛んで帰っていった。
ヨーク家の諍いからは すっかり蚊帳の外になっていたミカルとマリアの二人だけが残された。
「…家の中に入ろう」「はい、買い物の荷物を抱えたまま立ち話してたから 疲れちゃいましたぁ~」

その日の午後。ミカルとマリアは カフェ「エーアイ・カデン」で ゆっくりくつろいだ。
そして、時は流れ 新月の夜を迎える。
メンドーサ隊のチュニスの杖「月齢の杖」の宝珠が『新月』を示していた。

ーつづくー




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