久遠永遠桜の下で【3】リンゴリンゴ リンリンゴ
- カテゴリ:自作小説
- 2024/04/07 09:55:17
「カフェ『エーアイ・カデン』にドーナツを納品したら マカマカイでの仕事は終わりか…」
3国のお姫様たちを見送った後、クリーム色したメスのクマ「クマ・タイヨウ」が ぽつりと呟いた。
「あ!いけない!すっかり忘れてた!」
クマ・タイヨウの何気ない言葉を聞いて ミカルは「あること」を思い出した。
「今日は「リンリンゴの森」で火吹きリンゴを採って「火吹きリンゴのアップルパイ」を作って、
カフェ「エーアイ・カデン」に持っていくんだった!」
そして、ミカルは 心の中で こう 呟いた。
(お父さんとお母さんの所にも「火吹きリンゴのアップルパイ」を持って行ってあげよう…)
「ミカルちゃん!ボクも 付き合うよ!カフェ「エーアイ・カデン」に 一緒に納品しよう!
それと…火吹きリンゴのアップルパイ、ボクも 食べたいな!」
クマ・タイヨウは ミカルの手を取りながら 笑顔で提案した。
「うん、いいよ。ありがとう、クマ…」ミカルも 笑顔で承諾した。
リンリンゴの森。その名の通り、リンゴが鈴なりになっている木がいっぱいあって、
季節問わず いつでも 多種多様 色とりどりのリンゴが収穫できる。
「火吹きリンゴは 真っ赤に熟しているのを採ってね」「は~い!わかりましたぁ~!」
ミカルは マリアに火吹きリンゴのことを教えながら さらに付け加えて言う。
「熟してない白い火吹きリンゴは生で食べると それこそ本当に死ぬほど辛いから 食べないようにね」
「中には 白い火吹きリンゴしか食べない物好きな奴もいるけどな」と、ミツル。
「ああ、アグニ君ね」と、ココア。
身体が真っ赤な炎で出来ているフレイム族の男「アグニ・ヒノカグツチ」は、
真っ白な火吹きリンゴを ひとつ もいで そのまま食べる。
「うおおおーーッ!!! キタキタキター!! 激辛ファイヤー!! ガボアット!! マハラギオーン!!」
巨大な火柱が上がるが如く とことん燃えあがるアグニ。ミカルたちにとっては 見慣れた暑苦しい光景である。
「あっ!金ピカのリンゴ、み~っけ!」
クマ・タイヨウが 木になっている黄金のリンゴを見つけ 採ろうとして 手を伸ばした途端…
黒豹族の男「ジャガー・オリオン」が 黄金のリンゴを先に取ってしまった。
「エリス!ほら 黄金のリンゴだぞ!」「わぁっ!ジャガーくん!ありがとう~♪」
魔族の少女「エリス・ラドン」は ジャガーが採った黄金のリンゴを さっそく食べ始めていた。
「エリスちゃんは 本当に黄金のリンゴが好きだね~」
ジャガーとエリスの「いつものやりとり」を見ていたカンナが 感想を述べる。
「ジャガーさん?姿や声が似ていたので てっきり ラシードさんかバトラーさんかと思っちゃいましたぁ~」
「ロキやミスティって言わないだけ まだマシだな。ココアにクリソツな看護兵さんよ。
ん?…ということは あの虎人族の双子の兄弟と知り合いか?」
「はいっ!ラシードさんもバトラーさんも メンドーサ隊の一員ですぅ~!」
「ジャガーくん!今度はあっちの「ナナツカゼリンゴ」取ってよ~!」
マリアと仲良く話しているのが気に入らないのか エリスはジャガーをちょっと小突いた。
「ちょうど 二つなってるな。一緒に「ナナツカゼリンゴ」を食べよう エリス」
「わ~い!食べよ食べよ♪」
ジャガーは りんご飴状のリンゴ「ナナツカゼリンゴ」を二つ取って、ひとつをエリスに渡した。
エリスとジャガーは 二人仲良く横に並んで 木の根元に座って「ナナツカゼリンゴ」を食べている。
エリスとジャガーの仲睦まじい姿を見て ふと ミカルは思い出す。
(昔、タケルと何かを分かち合ったような…)
「リンリンゴの森は 火吹きリンゴ以外にも色んなリンゴが なっているんですねぇ~」
マリアは 火吹きリンゴを収穫しながら リンリンゴの森を見渡した。
「中には 毒りんごや食べられないリンゴもあるけどね~」と、カンナ。
「リンゴの色を見れば すぐに分かる。美味しそうな色してないからな」と、ミツルが補足する。
「この『ボムリンゴ』も そうですねぇ~。実物を見るのは 初めてですぅ~。
もし、手りゅう弾を切らした場合は「ボムリンゴ」で代用しなさいって、
「白衣の戦乙女隊」の『マクロ・ファージ隊長』が 教えてくれたんですぅ~」
「ヌイ~!やっぱり、ボムリンゴは美味い!セルティック王国で食べた20mmライフル弾も美味かったけど」
マリアが解説しているそばで ネコペンギン族の少女「ヌコ・アデリー」は
ボムリンゴを丸飲みにして 満足そうにしていた。
「アグニくんも そうだけど、ヌコちゃんも たいがい マニアックね」と、ココア。
「ココアだって、飲み物のココアに関してはマニアック!他人のこと、言えない!」
「あら、言ってくれるわね。その口に「DDパイナップル」を詰めてあげようか?」
「ヌイ~!木っ端微塵になる食べられないパイナップル 大好き~♪」
「この間、ユミコさんと一緒に 火吹きリンゴを採りに行った時、
ユミコさんは「ウワキシナイリンゴ」を探してたの…」と、ミカル。
「ウワキシナイリンゴ?食べたら浮気しなくなるんですかぁ?旦那のロキさんに 食べさせたいですねぇ~」
マリアは ウワキシナイリンゴの効能を あっさり言い当てた。
「ええ、ユミコさんも 同じ事考えてたわ。
でも「ウワキシナイリンゴ」って 数が少ない上に
『ウワキシチャウゾリンゴ』が群れてる中に ひっそりと なっているの」
「ウワキシチャウゾリンゴって、まさか…」
「ええ、マリアのお察しの通り ロキに食べさせちゃダメなリンゴよ。
ロキの浮気が これ以上ひどくなったら…考えただけでもゾッとするわ」
一方その頃…。
「へっくちゅん!」ロキが クシャミをした。
「ロキは クシャミまで カワイイなぁ~♡」
ぐすっと鼻をすするロキを見ながら セトは嬉しそうに笑う。
「それで、ユミコさんは「ウワキシナイリンゴ」を見つけて ロキに食べさせたけど…全然 効果無し!」
ミカルは 身振り手振りを交えながら オチを話した。
「あらら~」マリアは 苦笑いした。
「ナカナオリンゴやナカヨシリンゴは 試してみたのか?」と、ミツル。
「ホレグスリンゴやリョウヤクリンゴ、魔女の毒りんごは 効き目あるけど
「ナカナオリンゴ」や「ナカヨシリンゴ」は ゲン担ぎみたいなものだよね~」
カンナは そう言いながら 子供の時のことを思い出していた。
「子供の時、一度は試すよね。誰かと一緒に食べてさ…。結果はどうあれ 要は気持ちだよね」
ココアは 子供の頃 ナカナオリンゴやナカヨシリンゴを 誰かと一緒に食べたようだ。
ミカルたちが背中にしょっている5つのカゴは どのカゴも「火吹きリンゴ」で いっぱいになっていた。
「火吹きリンゴ、いっぱい採れましたねぇ~」
「この間、メンドーサ隊に送った火吹きリンゴも リンリンゴの森で採ったんだよ」
「だけど、火吹きリンゴのアップルパイを一度にたくさん作るには ミカルの家のオーブンだと小さすぎるな」
「だったら、アン・ダンテちゃんの家の台所を借りて作れば~?」
「そうと決まれば アン・ダンテに電話しないと…ダイヤルアップル、見っけ!」
ココアは 電話ダイヤルが付いたリンゴをもいで ダイヤルアップルの上部分の受話器を取って、
電話のダイヤルを回し、アン・ダンテの屋敷に電話をした。
リンリン♪リンリン♪
「もしもし、ダンテです」
ベル・ダンテが 電話に出た。
ーつづくー