Nicotto Town



一輪の花

終戦から5年、昭和25年(1950年)米海軍のアーレイ・バーク提督は

占領軍海軍副長として、日本にやってきました。
彼が東京の帝国ホテルにチェックインした時です。

「バーク様、お荷物お持ち致しましょう。」

「やめてくれ、最低限以外、わたしに関わるな!」

彼は大の日本嫌いで、公式の場でも「ジャップ」「イエローモンキー」
などと日本を侮辱する呼称を平気で使うような人物でした。

(この黄色いサルどもめ、腹立たしい限りだ。)

部屋に入ると、そこはベッドと鏡台と椅子だけの質素なものでした。

(なんて、殺風景な部屋だ・・・)

彼は一輪の花を買ってきて、コップにさし机に置きました。

(これで、すこしはマシになったか・・・)

翌日、バークが夜勤から帰ってみると、その花が花瓶に差し替えられて
置かれていました。
バークはフロントへ行き、余計なことをするな、と苦情を言いました。
しかしフロントでは覚えのないことだと困惑してしまいます。

「いいか、とにかく、私に構うな!」

さらに数日後、花瓶にまた新しい花がさされていました。
その後・・さらにまた新しい花が飾られていました。

「誰がこの様なことをしてるのか、調べてくれ」

バークは再びフロントへ行き、そう要求しました。
その結果、部屋のルームメイキングをしている女性が自分で
花を買い、飾っていたことが判明しました。
バークは彼女を呼び出し、問い詰めます。

「君はなぜ、こんなことをしたのだ?」

「・・花がお好きだと・・思いまして・・」

「そうか、ではその代金を支払わねばならんな。受け取りたまえ。」

そうやって、お金を渡そうとすると・・

「いえ、受け取れません。私はただお客様に心地よく過ごして
 頂こうと思ってしただけですから・・・」

「??」

彼女はどうしても受け取らなかったそうです。

(どういうことだ? メイドがチップをもらうために仕事をして
 いるのは当たり前じゃないか?なぜ彼女は金をとらない??)

不思議に思うと同時に、何かを感じたバーク提督は、
彼女といろいろ話をしてみることにしました。

彼女の夫は駆逐艦の艦長で、先の大戦ではソロモン海峡で
艦と共に海に沈み、命を落としていたのでした。
奇しくも、ソロモン海峡で米海軍の英雄となったバーク提督とは
戦火を交えた相手だったのです。

「ご主人をこ〇したのは、私かも知れない・・すまない事をした。」

それに対し、彼女は毅然としてこう答えました。

「いいえ、提督。もし提督が戦わなければ、夫が提督の艦を沈めていたでしょう
 誰が悪いわけでもありません。」

バークは考え込みました・・・。

私は戦争をし、勝利してなお、日本人を毛嫌いし続けている。彼女は夫を
亡くしているにもかかわらず、私に出来る限りのもてなしをしている。
しかも、その行為に対し、対価を払おうとした私から、いっさい金を
受け取ろうとしない・・・・。

これは・・何なんだ・・・?

バーク提督は、自分が戦ってきた相手「日本人」について、
極東アジアの、残虐で薄汚い軽蔑すべきサル「日本人」について、
いままで自分が思ってきたことが、果たして正しかったのか?
疑問に思えてきました。そして、

「日本について、もっと学んでみたい。」

そう考える様になりました。

やがて、バーク提督は自ら動き、人と接し、日本の「精神」「文化」について
学び取っていくことになります。

のちにバーク提督はこう述べています。
「彼女の行動から日本人の心意気と礼儀を知った。自分の立場を超え、
 公平に物事を見ることが出来る人たちがいる。親切に対して、金で
 返すのは礼儀に反すること。親切には親切で返すしかないことを学んだ。
 そして、自分の日本嫌いが正当なものであるのか?考えるようになった」

赴任前、
大の日本嫌いだったバーク提督の認識はことごとく反転していきます。
そして、一刻も早くアメリカ軍の占領を終わらせ
日本の独立を回復するようアメリカ政府に働きかけました。

アメリカ国内ではまだまだ反日感情が渦巻く中、バーク提督は
根気よく説いて回り、今日の海上自衛隊の創設に尽力してくれました。
その功績をたたえ、日本から勲一等旭日大綬章を授与されることとなります。

数々の名誉受勲のあったバーク提督でしたが
96歳で亡くなられた彼の棺には、彼の遺言により、
この旭日大綬章の勲章のみひとつ、胸に飾られていました。



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2024/03/11 07:54
コメントありがとうございます^^
このお話はわたしも好きです。
人と人との「心」が通じ合う瞬間というのは
国、人種にかかわらずあるんだなって思います。
ただ、友同士でも考え方が異なるように
国、人種で「違い」もあるんだ、とも思います。

ほんとうの多様性とは、「同じ」と「違う」を共に認め
尊重することだと思うのです。
ちまたで騒いでる「全部認めろ!全部同じにしろ!」という風潮は
あまりに浅薄です。

・・考えすぎるのは・・性格かなw?
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2024/03/11 01:02
こんばんは^^
素敵な話ですね^^

『礼に始まり、礼に終わる。。』
これは、日本の『魂』でもありますが・・・別に、人として、当たり前の事なのですね^^

アメリカ人だろうが、どこだろうが。『心』ですね^^

昨今、おかしなニュースが、氾濫してきましたが・・・これも『時代』ですよね^^
もう一度、人々は、全方位を、『見直す時期』(時代)に、来てるのかも知れません。

そのうち、『AI』が、もっと進化して、進化したAIが、『人間』に『基本』を教えてくれる時代が来るのかもしれませんね^^:
まぁ、あまり、考えすぎも良くないけどねw

勉強になりますw
せんきゅw


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2024/03/10 13:43
コメントありがとうございます^^
私のすきなお話の一つです。
(もっとも、私はいつも悲しい気持ちになってしまうのですが・・)
剣道、されていたんですね?(すごいw)
作法の意味するところは古来からの「日本の精神」に基づくものと聞きます。
時代と共に考え方が変化するのは、仕方ないことかもしれません。
でも、引き継がれるべき大切なもの・・たくさんありますよね。

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2024/03/10 13:19
遺言の下りはしりませんでしたが
このお話、聞いたことあります
日本の精神性、、やっぱり美しいなって思います✿
自分も、中学の時、剣道部で、そういう礼儀作法等も、徹底していて、、
その時にも、武道からも、日本の古来からの精神性、美しいなって感じました
日本の精神性が、様々な要因で、消されていっている感じのする今日この頃、、
何とか、後々にも、引き継がれていってほしいですね



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