Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


夢 (1)

ウィリアム・テリー、51歳、1973年6月8日生まれ、B型の双子座、白人、ニューヨーク生まれ、妻と7歳の娘と5歳の息子がおり、ニューヨーク州アップステートの高級住宅地、イーストハンプトン在住、コロンビア大学経済学科卒業、髪は金髪で歳の割にはまだフサフサと豊かな毛量で、ビジネスマンらしくサイドは短くトップを長めにして清潔に撫で付けている髪型で、目は二重で冷静な落ち着きを感じさせる青い色をしており、多少顎が張っており(しゃくれてるという程ではなく頑強な形の顎と言えるだろう)、鼻も高く、唇は薄く横に少し広いが口の横には大人の余裕を感じさせる笑い皺があった。
体躯は大学時代にやっていた水泳(州大会で3位になったこともある)の影響でがっちりしており胸板が厚く金色の胸毛が生えており、プールサイドでは風にそよそよとなびくのだが、彼の妻は密かにそれが彼のセクシーさだと思っていた。足は長くて強靭で、背も高い。

打ち破れることのない強く静かに目的まで確実に達成する意志の強さを持ち、先を見通す冷静さと知性を兼ね備えたエリートタイプ。 目先の状況にオロオロせず、自分の才能におぼれず、謙虚で打たれ強い性格な男。
人当たりは良く、自然に顔にたたえる笑顔は人を安心させて、「この人なら大丈夫」と信頼させる印象があった。世間的に恥ずかしくない程度の友人付き合いもあったが、それほどベタベタとしたタイプではなく、適度にドライなところもあった。

これはこの男に実際に起きた奇妙な物語である。










夢を見ているのだ。
そうに決まってる。
体はうまく動かないし、空にはピンクの豚が群れで飛んでいる。
頭上には太陽が燦々と輝く南国のようにすっきりとした夏の晴天だが、西の空は月が浮かんでいる黒が滴っているような夜だ。
おれは砂浜にいて、仰向けに寝転がっている。
波の音が心地よく、体がとてもスローにノロノロとしか動かない。
おれは海に入って泳ぎたいと思っている。
だけど、どうしても体がうまく動かず、もう1時間も砂浜の上だ。
それよりも前の記憶は無い。
自分の名前も住所も何もわからない。

ベルアンドセバスチャンの”Mornington Crescent “が流れている。

https://www.youtube.com/watch?v=sCbhUrNOybA

お~ぉい。。と、誰もいないことはわかっているけど、音のするほうへ力無く声をかけてみる。
声もノロノロとしか出てこない。
音のする方にはやはり誰もいない。
横たわったままノロノロとなんとか首を曲げてよく見ると、20メートルほど先に砂に埋もれてる黒いラジオらしきものが見える。
どうやら歌はそのラジオから聞こえてる。

はぁ、、

おれはいろんなことが面倒になってゆっくりと頭を戻して大の字になって空を見る。
さっき飛んでいた豚の群れはもうどこかへ飛び去ったようで、今はただ青い空が広がっている。
おれはポケットからペンを出して、ノロノロと空に自分のシグネチャーを書き記した。
シグネチャーと言っても、おれは自分の名前も知らないので、波打った線を書いて一度気まぐれにくるりと回転させた。
なんとなく、今のおれにできることはそんなことしか無いと思ったのだ。
シグネチャーは風に吹かれてあっけなく消えていった。

だけど、記憶がすっかり何もないというのはどうにも不安定なものだ。
床が砂で出来ている空っぽの一戸建てのように。
大海に投げ出されて一人ぼっちの海亀の幼い子供のように。

でも、悪い気はしない。
記憶が無い分、すっかりと空っぽな頭には、とても新鮮に真新しい”今”が心地よく染み込んでいく。
まっさらな白いヘチマのスポンジに新鮮な山の水が染みていくみたいだ。
作りたての良い香りのする小麦粉に冷たく澄んだ水を入れているみたいだ。


。。。


なにやら、くるぶしの辺りが痛痒い。
ノロノロと起き上がって足首を見ると、小さくて美しい白と黒の縞模様の蛇がくるぶしの横に噛み付いて、とても細い体をくねくねとくねらせている。

おお~。。。。

おれは少しめんどうな気持ちで、蛇を手のひらでノロノロと払い落とした。
縞模様の美しい蛇は、砂浜に落ちてゆっくりうねうねと動いてる。
くるぶしの横と下に4つ、小さな穴が開いて、ぷっくりと血が出てる。
痛いというよりかゆい。
何か無いかとポケットを探ると、お尻のポケットにティッシュペーパーが入っていた。
おれはノロノロと傷口にティッシュを当てて、しばらくそのまま抑えておいた。
水平線の辺りを見事な毛並みの焦げ茶色の美しい馬が疾走している。

まあ、夢なら別に覚めなくてもいいか。。

この不思議で美しい世界にいるのも悪くはないかも知れない。
人はいないけど、その代わりに澄み切っているからだ。
何もかもが純度の高いものばかりだ。

1分も抑えてからティッシュをどけると、もう血は止まっていた。
ほんのちょっぴりの赤い穴がくるぶしの横と下に4つ開いてるだけだ。
もう痛痒さも消えていた。
そういえば、さっきの蛇もいつのまにかもういない。

なんだか体が軽い。
蛇に噛まれてから、さっきよりもっと動きやすくなっている気がする。
腕がすいすい動くし、首もよくまわる。
おれは試しに起き上がってみるととてもスムーズに立ち上がり、歩けた。
体が本当に軽い。
蛇に噛まれたのが良かったのか。
これでようやく海へ入れる。
ウキウキした気持ちで波打ち際までの一歩づつごとに、もうすぐ冷たい海に浸かれるということへの楽しみな気持ちが急速に高まって、海に入る直前には軽く勃起さえしていた。
一歩目、足が海に入ると冷たく心地よい感覚が、すわぁ、っと全身に広がる。

あぁ、、

快感の声がもれて、そのまま海へ入って行く。
肩まで海水に浸かると、ふぅっ、と、体から全ての力が抜けて、自然に海中へと入っていった。
そのまま、海の中をすい~っと、泳いで行く。
バタ足もほとんどせずに自然に進むことが出来る。
記憶のどこかで、おれ、泳げないはずだったのになぁ。。となんとなく思った。
20メートルも進んだ辺りで、すい~っと海面に浮かんでみる。
くるりと体を回転させて、仰向けに浮かんだまま、空を見た。
高い空には雲が一つもなく、澄み切った青だ。
西の夜の空は、さっきよりもますます星が瞬いているようだ。

その全ての一つ一つが真新しい記憶として、脳の隅々に気持ちよく染み込んでいく。

おれは全く力を入れずに大きな海の上に浮かんでいる。
もうまるでおれは海の一部のようだ。
海と自分との境目もよくわからない。

もう浜辺のラジオの音は聞こえない。
浮かんだままゆるやかな海流に乗って、少し浜辺から離れたようだ。
どれくらい離れたかな?と思ったけど、首をあげて浜辺を見るのはやめて、やっぱりただ浮かんだままでいた。

そのうち、すぐ近くでイワシの群れが海面を跳ねていて、キラキラと輝いている。
おれの右から左へとイワシの群れが泳いで行っているようで、時折、おれの体を飛び越えたり、ぶつかってきたりした。
ぴちぴちとイワシが跳ねる音が心地よい。
イワシの群れが通り過ぎるとまた海は静かになる。

とても静かだ。

このまま、どこまでも流されて行こうか。
もうきっと浜辺も見えないくらい遠くに来ただろう。
もしかすると、この世界にはあの小さな浜辺しか無くて、あとは全てが海なのかも知れない。

おれは声も出さず、ただ海に任せて浮かんでいる。
そのうち、眠くなってきてしまった。

アバター
2024/03/09 22:31
ロワゾーさん、

何これ〜!?すごいー!!
そのイラスト、ほとんどおれのイメージにかなり近い。。
そうゆうアプリがあるの??

めっちゃ面白い試みをしてくれて、ありがとう!!
アバター
2024/03/09 14:59
ウィル氏のらくがきを生成AIにしてもらってみました。お見逃しを。
冒頭の文章を読み込ませて、サンドマンのようなアメコミ風で、と指示。

https://photos.app.goo.gl/udcTRJQvTrXZkgbE7

アバター
2024/03/07 11:05
べるさん、

ふふ、どうでしょう?
また続きを載せますので、気が向いたら読んでください〜(^-^)
アバター
2024/03/05 12:51
非の打ち所がないエリートタイプ、というところで本当は窮屈に感じてた部分もあるんだろうなぁ~と思います。

こんな経験をした後に現実に戻ると、人生観変わりそうですね^^



Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.