Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


キラとニクラの大冒険 第二章(6)

まず、刑が執行される直前に、セイゲンさんがキラを病院から助け出す。
ニクラが処刑されるとき、あめしらずを絞首台に忍び込ませる。透明になったあめしらずが、ニクラの首と縄の間に挟まって身体を支えて、ニクラの首が締まるのを防ぐ。
処刑が終わり、ニクラが死んだとみなに思い込ませた後、妖精たちに広場を襲撃させる。
妖精たちはニクラたち以外の人間には見えないだろう。
妖精たちが大挙して恐ろしい音を出しながら地面に揺らし、広場を襲撃するのだ。
土や風やマグマの妖精たちもいるので、そんなことは彼らにとってたやすいことだった。
そして、この作戦に参加したのは、キッチやケップツップ、カムリ、シューケリッヒポントゥ、テルチ、ドルドル、ゼルゼル、ミューといった海や空や土や森のあらゆる妖精たちみんなだった。

地面を揺らして絞首台を倒したら、ニクラが逃げる。
そして、かみつきに乗ったハナ婆とぱっぱっぷすがニクラを助け出し、ポルコに乗ったセイゲンさんとキラがその援護をする。
ニクラを助け出したら、そのまま町から森へ走って逃げる。

これが作戦だった。

警察署の独房にいるニクラと、病院にいるキラにその作戦を手紙で伝えた。

ニクラは暗い地下の独房の中で両ひざの間に顔を入れてうずくまっていた。
撃たれた肩やふくらはぎ、警察署長に蹴られた頭や腕のケガは簡単に治療されただけで、まだ完治してなくてズキズキと痛かった。
ニクラは両ひざの間から冷たい床を見つめていた。
見張りには警官では無く、軍人が立っていた。シュコピッポ大佐の命令だった。
鉄格子の外から見たニクラは打ちひしがれて無気力にすべてを諦めているように見えた。

しかし、ニクラには考えなくてはならないことがたくさんあった。判決が死刑に決まったこと嘆いている暇なんて無かった。
どうやってここから抜け出して、どうやってキラを助け出そうか?
ぱっぱっぷすは死んでしまったのか?いや、僕が一瞬だけど見えたぱっぱっぷすの傷は肩だったはずだ。きっと、ぱっぱっぷすは撃たれたショックで気絶しただけだ。どうにかぱっぱっぷすにキラを救い出すことを知らせることはできないだろうか?

ニクラはありとあらゆる方法を考えた。
しかし、どうしてもほんの少しでも可能性がありそうな方法を見つけ出せなかった。
それでも、ニクラは考えることをやめなかった。
ニクラは夜も寝ないで、ずっと考えた。

執行日があと2日後に迫った夜、ニクラの両ひざの間にある灰色の床石から、ゆっくりと緑色の2本足で立つ豚のような精霊が現れた。
ニクラの両足の間に隠れているし、見張りの軍人にはきっと精霊を見ることが出来ないから、見つかりっこ無かった。
ニクラは突然のことに驚いたけど、身動きひとつしなかった。
精霊は手紙を持っていた。
ニクラに向かって手紙を広げると、ニクラが読み終わるまで、そのまま待った。
精霊はニクラが手紙を読み終わって、きちんと内容を理解したのを確かめると、今度は手紙を床に置いて、ニクラの足にくっつくと、ゆるゆると足の中に入っていった。
ニクラは身体の中、とくにケガを負っている頭や肩や腕やふくらはぎがじんわりと暖かくなっていくのを感じた。
それからじょじょにケガをしたところの裂けた皮膚と筋肉や切れたいくつもの細かい血管も全てがひとつひとつなめらかに気持ちよくつながっていくのを感じた。精霊はニクラの身体から出て、また床の上に立つと、手紙を折りたたんで、そのまま消えていった。
包帯の下でケガはすべて完治していた。


キラは病室のベッドの上の掛け布団の中で怒りに震えていた。
ニクラの死刑が決まった日の夜だった。
必ずニクラを助け出す。どんな手段を使っても絶対にニクラを助け出す。と思っていた。
キラもまた、掛け布団の暗闇の中でニクラを助け出すありとあらゆる方法を考えていた。

すると、掛け布団の中に何かがもこもこと入ってくる。
キラは驚いて掛け布団を床に跳ね飛ばした。
すると、キラのベッドの上に緑色の2本足で立つ豚のような精霊がきらきらと輝きながら立っていた。
精霊はキラに向かって手紙を広げた。
そして、キラが手紙を読み終わるのを確認すると、キラのほっぺに素早くキスをして、薄くなって消えていった。

精霊がふたりに見せた手紙には、いつ、どこで、どうやってふたりを助け出すかのすべてが書かれていた。



。。。。




森の中を疾走するかみつきの上で、ぱっぱっぷすはでかい声で雄叫びを上げた。

いいいいいいいぃぃぃやあっほぉぉーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!!
ざまあみやがれっ!!!!
ばかやろう!!!!!!!!

ハナ婆もそれよりさらにでかい声で笑っていた。

ぶわあっはっはっはっはっは!!!!!!!!!!!!!!

かみつきの隣にポルコが近づいて、キラはかみつきの背中に飛び乗るとニクラに飛びついてキスをした。

ニクラッ!!!!!!!!!!!!

キラは目からたくさんの涙を流していた。

キラッ!!

ニクラはキラを受け止めて抱きしめた。

セイゲンさんは突然キラがポルコの手綱を離してかみつきに飛び移ったから、バランスをくずしてあわてていた。

ニクラも嬉しくて叫んだけど、かなり体力が消耗していて、かすれた声しか出せなかった。
でも、今、ニクラは自分の大切な人たちが全員無事でいることがとても嬉しくて、幸せに思っていた。




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