キラとニクラの大冒険 (57)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/11/21 11:54:24
ポルコはハナ婆の家の方向へ走り出した。
ニクラとキラとぱっぱっぷすは、誰かに追われてないか?と、時折後ろを振り返ったが、誰も追ってくる様子は無かった。
ブルーベリーの藪が両側に茂ってるところを通り抜ける時、突然、ポルコの足は何かに絡め取られてつんのめった。
唐突に、バサッと目の前に何かが被さって、ポルコは馬車の荷台ごと転倒し、土煙が舞った。
ドドドドドォーッ!!
魚を捕まえるための投網のようなもので、馬車全体を覆われて、ポルコの足にも絡まってしまっていた。
荷台は横倒しになり、ニクラとキラとぱっぱっぷすも荷台から放り出されてそれぞれ網に絡まりながら地面に転がった。
それは男たちの仕掛けた罠だった。戦争のとき、敵の兵士を捕えるときに使う仕掛けだった。
道の周りにある木々についた鈴が、ガラガラガラガラ!!とけたたましく音を立てる。
ニクラもキラもぱっぱっぷすも、すぐに罠だとわかり、必死になって自分の身体や荷台に絡みつく網をナイフで切って抜け出そうとした。
しかし、網には針金が編み込まれていて、なかなかすぐには切れないようにできていた。
そして、鈴の音に気づいた警察署長たちが馬を駆けて道の向こうから走って来るのが見えた。
彼らは浜から続く道のどちらの方向の道にも両方罠を仕掛けて、少し離れた場所でずっと待ち構えていたのだ。
3人は急いで網を切って逃げようとしていたけど、間に合わなかった。
警察署長たちがニクラたちの馬車のまわりを取り囲み、馬の上から火薬銃を向けて叫んだ。
ニクラだな!
動くな!!
しかし、ぱっぱっぷすは火薬銃を見たことが無かったので、おめえら、これを外せ!このやろう!!と、叫びながら暴れていた。
すると、男のひとりがぱっぱっぷすを容赦無く撃った。
ぱっぱっぷすは肩の辺りから血を吹き出しながら、網の中で吹っ飛ばされて倒れた。
ぱっぱっぷす!!!!
ニクラとキラが同時に叫んだ。
ふたりはぱっぱっぷすを助けたかったけど、絡まった網のせいで身動きが取れなかった。
ぱっぱっぷすは死んでしまったのか、ぴくりとも動かなくなってしまった。
ニクラは怒りの声をあげて、猛烈な力で網を引きちぎった。ぱっぱっぷすに近づこうとしたそのとき、銃声がしてニクラの身体も吹っ飛んだ。
キラは、やめてえっ!!と叫んだ。
銃弾はニクラの肩をかすめた程度だったが、それでも初めて銃に撃たれた衝撃は相当なものだった。
銃弾にふっ飛ばされて、地面に転がったニクラはうめき声をあげながら、それでもぱっぱっぷすに近づこうとしていた。
キラは、ニクラ!と叫んで泣きながら必死になって網を切ろうとしていた。
男たちは一斉にニクラに銃口を向けたが、ひげを生やした背の高い軍人のような男が厳しく命令した。
殺すな!!
軍人のような男はそう言って腰から拳銃を抜くと冷静にニクラの右足のふくらはぎを撃ち抜いた。
ニクラを生かしたまま捕えるように政治家から命令を受けていたからだ。
ニクラはうめき声をあげながら、地面をゴロゴロと転がった。
捕らえろ!!
ひげの男が命令すると、警察署長や自警団員の男たちはニクラに別の網をかぶせて、袋にして縛り、担ぎ上げた。
しかしそれでもニクラは異様な力で網を引きちぎると、その隙間から目の前にある警察署長の顔を思い切り殴った。
ニクラが人を殴ったのはそれがはじめてだった。
ニクラのとてつもない力で放った拳をまともに受けた警察署長の鼻は折れて、大量の鼻血が噴出した。
ぐわあっ!と、叫んでよろめいた警察署長が手を離したので、網の袋に入れられたニクラは地面に落ちた。
激怒した警察署長は立ち上がり、鼻血が出てる鼻を手でおさえながら、ニクラの頭や腹をめちゃくちゃに何度も蹴飛ばした。
鼻を強烈に殴られたので所長の目からは涙も出ており、真っ赤に怒ったその顔は涙と鼻血でぐちゃぐちゃになっていた。
キラは馬車の上から、ずっと叫んでいた。
やめて!ニクラを殺さないで!
ひげを生やした軍人のような男が警察署長を一喝した。
やめるんだ!馬鹿者!!
警察署長は、それでようやくニクラを蹴るのをやめた。
不服そうな警察所長に、軍人のような男は冷たく言った。
なにをしに来たのか忘れたのか?
愚かなやつだ。
ニクラは頭や顔から血を出して地面にうずくまっていた。
軍人のような男が馬に乗ったまま近づいて、ニクラを見た。
まだ死んでいない。
縛り上げて連れて行くぞ。
その小娘がキラだな。
そいつも縛っておけ。
軍人のような男はこの少しの時間でキラは誘拐されたのではなく、自分の意思でここにいることをわかっていた。
ニクラとキラは両手両足を縛られて、大砲の乗っている荷台に転がされた。
ニクラ!ニクラ!
キラは目の前にあるニクラの顔に向かって叫んだ。
ニクラはうっすらと目をあけてキラを見たけど、何も答えられなかった。
ぱっぱっぷすはまだ投網の中で地面に転がったまま、動かなかった。ポルコは投網から抜け出そうともがいていた。
引き上げるぞ。
軍人のような男が命令すると、7人の男たちはぱっぱっぷすとポルコをほったらかしにして、キラとニクラを連れて、町へ向かって出発した。
第一章、完
読んでくれて、ありがとう〜(^-^)
はい、人間の悪い面について書く場合は、よりシリアスになりますね。。
なんだか子供相手に銃使ったり、血が出るまで蹴ったり・・・ほんと下のコメントでおっしゃっている通り、人間のほうが嫌になりますねぇ・・・
おっしゃる通りですね。
魔物よりも人間の方が怖いです。
おれも書いてて思いました。