Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


キラとニクラの大冒険 (53)

ふたりのキッチはぱたぱたと少し走って、また立ち止まり、3人が追いつくと、また走った。

しばらく行くと、小さな森を抜けて、草むらへ出た。

そこは森の後ろに隠れていてこんな場所があることを知らなかったけど、青い草が広がる草原だった。3人とも今まで、こんなに青い草を見たことは無かった。

その広場は丸く木々に囲まれて大きく、そよ風に吹かれて、青い草むらは穏やかに波打っていた。

3人はあまりの美しさに驚いて口々に声をあげた。ふたりのキッチは青い草原を走っていく。
キッチたちは小さいので、青い草がかき分けられているのだけが見えて、キッチたちが通ったあとが道のようになった。
3人はその後について行った。
草むらの真ん中あたりで草がかき分けられるのが止まった。
キッチたちが立ち止まったようだ。
3人が追いつくと、そこにはたくさんのキッチが集まっていた。
20人以上もいるだろうか、男の子の黒いキッチたちも女の子の白いキッチたちも、みんな3人を見ていた。
よく見ると、キッチとは形の違う別の種類の妖精もいた。
ひし形で、身体の色が半透明な妖精だ。

そして、見渡すと、いつの間にかたくさんの様々な色と形の妖精たちが3人をかこんで、青い草むらじゅうにいた。

3人はあまりにたくさんの妖精たちがいっぺんに現れたので、驚きのあまり声を失っていた。

ニクラとぱっぱっぷすはわからなかったけど、キラはその妖精たちの全ての種類を図鑑で見て詳しく知っていた。

透明で小さなひし形のものは水の妖精だった。その隣にいるキラキラとした光るなめくじのようなものはイワシの妖精で、ふんわりと丸い赤いものは、薔薇の妖精だった。

青い草よりも少し背の高い毛むくじゃらのものは樫の木の妖精で、水色の鳥の羽のような形のものは風の妖精。ちろちろと青い炎をゆらめかせている炎の妖精の他にも、たんぽぽやきのこの妖精、ちょっと離れた場所にいる大きくてふわふわしたまだら模様のものは熊の妖精で、オオカミや鹿や猪、かみつきやねずみやフクロウなどの動物たちの妖精、エイやサメ、ボラなどの魚、くらげ、イソギンチャク、蛇、カエル、蜘蛛や蜂やみみずなどの昆虫の妖精もいた。

この辺りに住む数多の妖精たちがみんなその青い草むらに集まっていた。



キラ!こいつらぜんぶ妖精なのか?!

やっとのことで口をきいたぱっぱっぷすがキラに言った。

うん、みんな花や木や水や風や、動物や魚や虫たちの妖精なの。。
こんなにたくさん、、信じられない。。

妖精たちはみんな3人を見つめて微笑んでいた。

すると、最初に3人をここに連れてきたふたりのキッチが、

ちきちきちき、ちきちきちき、、

と、身体を動かしながら小鳥のさえずりのような音を鳴らし始めた。

すると、そのまわりにいる他のキッチたちも、それに合わせて、

ちきちきちき、ちきちきちき、、

と、身体を動かしはじめた。

それから、水の妖精が

ぽこぽこぽこ、、

と、そのキッチの鳴らすリズムに合わせて音を出す。
今度はそれに合わせて薔薇や木や魚の妖精たちも、とんとんとん、たんたんたん、ぴんぴんぴん、ぱちゃぱちゃ、と、それぞれの音を鳴らし始める。

しだいに妖精たちが出す様々な音が重なって広がっていく。

風の妖精がなんとも美しい音色でメロディを奏でる。
メロディは、柔らかく伸びて青い草原をゆるやかになでながら空へ飛んでいく。
風のメロディは広場の上空でのびのびと軽やかに舞い踊る。
やがて風の紡ぎ出すメロディに、かみつきの妖精が低いメロディを合わせる。そして、熊の妖精がもっと低い音程で歌い、オオカミが高い音程で歌い、フクロウとねずみの妖精がもっと高く突き抜けた音でさらにメロディを重ねていく。
そして、虫の妖精たちがユニークな音を出しながら、草むらの上を飛び回り、カラフルな光の線を作った。

メロディはひとつの大きな流れになってあたりを柔らかい渦となって青い草原を包み込んだ。

すると炎の妖精が天高く燃え上がり、パチパチ、ごうごう、と迫力のある音でアクセントを付け加えた。

妖精たちのオーケストラの音楽はこの青い草原から、周辺の森や海や、辺り一体に広く響き渡り、木々が騒いで、水が踊り、やがて動物たちの鳴き声や遠吠えも音楽に重なった。

3人はあまりの美しさに呆然と立ち尽くしている。

妖精たちの音楽は大空に舞い上がり、やがて荘厳な大音量となって宇宙の星たちと繋がっていった。

妖精たちの演奏がクライマックスを迎えるころ、キラもニクラもぱっぱっぷすも、身体の中からすべての悪いものが消え去って、代わりに、清々しい透明な水で身体の中が満たされていた。
そして、身体の中の水は流れ去り、後には美しい風だけが吹いていた。


気がつくと、草むらにはひとりの妖精もいなくなっていて、青かった草は普通の緑色の草になって風がそよいでいた。

3人はしばらくのあいだ、呆然と草むらの真ん中に突っ立っていた。
あたりはまだわずかに音楽の残響と、青い草の美しい香りが残っていた。


我に帰ったキラが言った。

すごいすごいすごい!!
わたしたち!すごいものを見たのよ!!!

キラは興奮して、目が輝いていた。

ニクラとぱっぱっぷすはまだ起こったことが信じられないようで、びっくりした顔のままでキラに言った。

う、うん、、すごかった。。

こ、、こんなの、はじめて見たよぅ。。
びっくりしたよなぁ。。。



妖精たちは、3人が邪悪なものを退治してくれたお礼にコンサートに招待してくれたのだ。
妖精たちの音楽は、3人の身体の中にまだ沈殿していた呪いをすべて消し去って、代わりに純粋な力を送り込んでくれていたのだった。

それから、3人がテントに戻ると、めちーるなどのキノコやベリーや薬草や山菜、それからいろんな種類の魚やイカやタコやカニやエビや貝などがテントに山盛りに詰め込まれて周りの地面にまではみ出していた。
それも全部妖精たちからのプレゼントだった。

ひやぁああ!!すげえぞ~、こんなに食えるかなあ!!

ぱっぱっぷすは歓声をあげた。

ニクラとキラはびっくりして、唖然としていた。




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