キラとニクラの大冒険 (52)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/11/16 11:58:51
邪悪なものの胃袋からキラとぱっぱっぷすを救い出してから、3人は7日間もの間、テントの中で眠り続けた。
ポルコはその間、テントのそばを離れなかった。
8日後の朝、3人は目を覚ました。
最初にぱっぱっぷすが起きて、次にキラが起きた。
ニクラはその後少ししてからテントから出てきた。
3人は、何も食べずにテントのそばにい続けて痩せこけたポルコを見て、ポルコを草むらへ連れて行った。
わたし、水をくんでくる。
キラはそう言ってふらふらと歩いて馬車から一番大きな丸皿を持って行った。
おれ、もっと栄養のあるもの持ってくるよ。
ぱっぱっぷすはそう言って、ふらふらと藪の中にベリーや薬草を探しに行った。
ニクラはポルコにそっと手を当てて、背中を撫でた。
ポルコはたくさんの草やベリーや薬草を食べて、たくさんの水を飲むと、ぶるるるっ、と、いなないて、3人ひとりひとりの顔に首をこすりつけた。
ようやく元気が出てきたようだ。
キラは嬉しそうに笑って、少しよろめいた。
ニクラはキラを支えてふたりに言った。
ぼくらも食べなくちゃ。。。
7日間眠り続けた3人は、もう立っているのもやっとで、魚の干物やセイゲンさんのパンと蜂蜜を残っていた食べ物をほとんどを食べた。
それでやっと元気が出た。
いやぁ!!おれたち、死ぬところだったなあ!!!
ぱっぱっぷすが笑いながらふたりに言った。
うん、ニクラがいなかったらもうわたしとぱっぱっぷすは死んでたわね!
うん、ぼくだってイルカたちやあめしらずがいなかったら死んでたよ!
とキラとニクラも言った。
3人は生きて、また3人でごはんを食べれることが嬉しくて仕方なかった。
おれ、なんとなく覚えてるんだけどよぅ、おれとキラが暗くて冷たい不気味な場所にいたとき、ニクラがずっとおれの心臓を掴んでいてくれたんだ。
だから、おれ、きっとニクラが助けてくれるって思ってたんだよぅ。
うん、わたしも覚えてる。
わたしは夢の中でニクラがずっとわたしの手をぎゅうって、にぎってくれていたの。
ぱっぱっぷすとキラはそう言って、ニクラに笑いかけた。
うん、ぼくは君たちを離すもんか。って、ずっと思ってたんだ。
君たちを離したら、ふたりはきっと永遠に胃袋の中に閉じ込められてしまうんじゃないか、って。
ニクラがそう言うと、
うん、本当にそうだったかもな。
死ぬよりもひどいことになってたかも知れない。
ぱっぱっぷすがそう言って、まだ少し残っていた魚の干物をかじった。
ふたりの魂は暗黒の胃袋の中でやがて邪悪なものに永遠に閉じ込められて、味わわれるはずだったのだ。
邪悪なものは無限の胃袋の中に海難事故があった100年前よりもっともっとずっと前から人間たちや生き物たちの魂を胃袋の中に閉じ込めてきた。
邪悪なものは胃袋に閉じ込めた人間や生き物たちの魂を舐めてその恐怖と悲しみを味わうことで存在していたのだ。
今、邪悪なものの胃袋は消滅して、全ての人間や生き物たちの魂はようやく解放された。
その日は、3人でゆっくり過ごした。
ポルコは3人がやっと元気になって安心して、木の下でゆっくり眠っていた。
お昼頃に3人でベリーやきのこを取りに行った。
まだ海に潜って魚を突くほどの体力は無かった。
いつもキラが取りに行ってた浜辺の近くの藪からもう少し東の小さな森へ行ってみた。
のんびりと歩いていると、その森にはたくさんのきのこがあった。
いつも見つけられるきのこの他にも、めちーる、という町ではとても高価なきのこもたくさん見つけた。
ニクラは火箱を持ってきてたので、そこで焼いて食べることにした。焚き火を作って、めちーるを炙って食べてみると、豊かな香りでむちむちとした歯触りがあって、とても美味しかった。
3人はめちーるや他のきのこを食べながら、話をした。
ぱっぱっぷすが言った。
なぁ、あの船のどれかに宝物があったよな、きっと。
おまえらは見つけに行きたいか?
ニクラが答えた。
うん、あると思うよ。
でも、ぼくは、邪悪なものの目を見つめて、本当のことを知ろうとしてたとき、もうイランのことなんてどうだってよくなっちゃったんだ。だから、もうイランはこれからもずっと海の底でいいと思ってるんだ。
すると、キラもはっきりと言った。
うん、わたしもイランはもういらないわ。
ぱっぱっぷすはふたりの言葉を聞いて、笑顔で大きな声で言った。
そうかあ!よかったぁ!!
おれもよぅ、前はイランってのをちょっと見てみたいって思ってたけど、蛇に食われたり、わけわかんねえ暗いところに閉じ込められたりしてよぅ、それからニクラがおれの心臓を掴んで命からがら助けてくれてよぅ!
今はそんな宝物なんてもう見たくないんだ!ふたりがおんなじ気持ちか知りたかったんだよぅ!!
3人はそんなことを話してから、これからどうしようか、ってことも話した。
すると、話の途中で、誰かがおならをした。
おい!ニクラ屁こいたなぁ!!
と、ぱっぱっぷすが言うと、ニクラは顔を赤くして、
ぼくじゃないよ!
と、ぱっぱっぷすに反対した。
じゃあ、キラがこいたな!!
と、ぱっぱっぷすが言うと、キラも、
わたしじゃないわ!!
と、怒った。
すると、もう一度、
ぷぅ~~~。。。
と、おならの音が聞こえた。
でも、それはニクラからでも、キラからでも、ぱっぱっぷすからでも無かった。
どうやら、木の下に集まっている落ち葉の下から聞こえてくる。
ぷぅ~、ぷぅ。。。
ぱっぱっぷすはそうっと落ち葉を手のひらでよけて地面を見てみた。
すると、落ち葉の下の土の中でなにかが動いている。
3人は息を詰めてじっとそれを見ていると、土の中から、ぽこんっ、と、なにかが飛び出した。
キッチ!
キラが思わず言った。
それはきのこのような形の黒い男の子のキッチだった。
おならのような音はキッチが出していたのだ。
ニクラは驚いてキラに聞いた。
これが、妖精なの?
うん、わたしがこないだ見たのもこの子と同じ妖精なの。
土の妖精なの。
キラはキッチを驚かせないように小声で言った。
すげえなぁ、こんなへんなやつ、はじめて見たぞ。
ぱっぱっぷすもコソコソ声で言った。
すると、土の中から、もうひとり黒い男の子のキッチがもこもこと出てきた。
ふたりのキッチはキラとニクラとぱっぱっぷすの顔をひとりひとり見ていった。
キラはまたキッチに会えたのが嬉しくてにこにこしていた。
ニクラとぱっぱっぷすは不思議そうにふたりのキッチを見つめていた。
ふたりのキッチは3人の顔を見ながら、ぷちぷちぷちぷち、と、変わった音を出して、きのこの傘のような頭をこきざみに動かした。
それから、ふたりのキッチはくるりとふりむいて、走り出した。
キッチが走ると、ぱたぱたと音がした。
ふたりのキッチはちょっと走ると立ち止まって、振り向き、こちらを見た。
もしかしたら、ついて来いって言ってるのかも知れないぞ。
と、ぱっぱっぷすが言うと、ニクラとキラも、
うん、そうかも知れないね。
と言って、ふたりのキッチについて行くことにした。