キラとニクラの大冒険 (46)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/11/09 09:54:08
お昼を食べたあと、3人は細長い砂浜の一番はしまで歩いてみた。
砂浜の向こう側はゴツゴツした岩場が続いていた。
ぱっぱっぷすは岩場の上に乗って、何かいないか探し始めた。
すると、岩と岩のすき間にカニがいるのを見つけて捕まえた。
ニクラとキラもたくさんカニがいるので夢中になって捕まえた。
キラはカニを捕まえるのがはじめてで、はしゃいでいた。
ぱっぱっぷすもカニが大好物でよく川で沢蟹を捕まえて食べていたけど、海のカニを見たのははじめてだった。
ぱっぱっぷすは、ずっと、うまそうだなあ!と言いながら、カニをとっていた。
その日の夕方、キラがカニのスープを作って、ぱっぱっぷすは残りのカニや魚を焼いた。ニクラはその間、モリやナイフを研いでピカピカにした。
3人はおなかいっぱいカニや魚を食べた。海のカニは味が濃くてとても美味しいものだった。
テントの上には昨日よりも大きな月が浮かんでいて、3人は眠った。
。。。。。
夜中、海は月の明かりにてらてらと照らされて揺らめいている。
一羽のカモメが沖の方で波にゆられながら眠っている。
小さな波が浜辺に打ち寄せる音の他には何も聞こえない。
一匹のイワシがぴちっと跳ねて海面に飛び出した。
すると、そのあとに続いて、数匹のイワシが、ぴちっ!ぴちっ!と、海面に飛び出してくる。
。。。
それから間も無くとてつもない数のイワシが、
ぴちぴちぴちぴちぴちぴちぴちぴちぴちぴちぴちぴちぴち!!!!
ざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざざ!!!!!
と、海面に飛び出して、みんな浜の左手の崖の方向に逃げて行った。
波間にゆられながら眠っていたカモメがそれに驚いて、あわてて夜空に羽ばたいて飛んでいった。
すると、そのあと、あらゆる魚や海の生き物たちが、海面に飛び出して逃げていった。
あまりに大量の魚たちがいっぺんに海面に飛び出したので、ものすごい音が辺りに響いた。
どどどどどどどどど!!!!!!
魚たちはみないっせいにイワシたちが逃げたのと同じく崖に向かって逃げていた。
崖にたどり着いた魚たちは海中にあるサーラーたちの通り道の小さな砂浜の湾に続く洞窟に逃げ込んでいるようだった。
魚たちが海面に飛び出したとき、あまりにすごい音がしたので、ニクラとキラもぱっぱっぷすもびっくりして目を覚ました。
3人とも、目をこすりながらテントから出て辺りを見渡した。
3人がテントから出たときはすでに魚たちが通り過ぎた後で、見えるのは、魚たちが飛び出したときに起こった無数の波がゆらゆらと揺れる穏やかな海と、夜空に浮かんでいる大きな月だけだった。
そしてすぐに、キラがその異様さに気がついた。
波が無いわ。
たしかに、さっきまで月明かりに照らされて揺らめいていた海面の波がいつの間にか見渡す限りひとつも無くなっている。
ただ黒いまっすぐな鋼鉄の板のような海面が水平線まで続いているだけだった。
3人はあまりに不気味な光景を何も言えないで見つめていた。
すると、何か沖のほうから
ピーーーーーーーーん。。
と、張り詰めた音が聞こえてくる。
すると、
さーーーーーーーーーーーーーー、っと、海の色が風に吹かれるように変わってゆく。
黒い鋼鉄のようだった海面はみるみるうちに銀色に変わってしまった。銀色になった海面は冷たく静かに輝いていて、まるで磨かれた鏡のようだった。
しかし、その銀色の海面には夜空も月も映っていない。
ただ冷たく、のっぺらぼうな銀色に光り輝いている。
沖のほうに誰かが立っているのが見えた。
若い男の人だった。
3人はそれに気づくとあまりの恐ろしさに凍りついたように固まってしまった。
男は銀色の海面を歩いてこちらへ向かってくる。
いや、よく見ると、足が動いていない。彼は滑るようにして、こちらへ向かって来るのだ。
彼は金髪で痩せて精悍な顔をしていて、身体は細く引き締まり、背が高かった。
上半身は裸で、下には大昔の船乗りが履いていたポッコリと呼ばれていたズボンを履いている。
若者が3人がいる砂浜の目の前まで来た時、3人とも、この人は生きていない。ということを強く感じた。
生きていない人間が目の前の銀色の海面に突っ立ってこちらを見つめている。
それは身体の芯が冷たくなるような今まで感じたことも無い恐怖だった。
おい!!なんだ!おめえ!!!!
あまりの恐怖にたまらず、ぱっぱっぷすが喧嘩腰でそう叫んだ。
待って!ぱっぱっぷす!
キラはぱっぱっぷすを手で制して言った。
この人、なにか言いたいのよ。
キラはそう言って、若者の目を真剣に見つめた。
すると、若者は口を動かさないで言った。
蛇が来るのだ。お前たちは呪われる。。。
3人に、その声は聞こえた。
おめえ!!!!なに言ってんだ!!?このやろう!!!!!!
ぱっぱっぷすが動揺して言った。
7つの頭を持つ蛇がこの湾に来るの?
ニクラが静かに若者に聞いた。
もうそこにいる。お前たちは喰われるか、呪われて、、死ぬのだ。
若者はそう言った。
ニクラ!ぱっぱっぷす!逃げましょう!!
キラは危険がすぐそこに迫ってることに気づいて言った。
うん、急いで荷物をまとめよう!!
ニクラがそう言うと、3人はテントに走り出した。
波打ち際に立っていた亡霊はいつの間にかいなくなっていた。
3人は急いで荷物を馬車の荷台に積んで、テントをたたんだ。
ニクラがテントをたたみながら海を見ると、銀色だった海はもう普通の夜の海に戻っていた。
ニクラとぱっぱっぷすは大急ぎで荷台にテントを積むと、ポルコにハーネスを付けて馬車とつないだ。今度の丘は低いので、そのまま馬車に乗って道に戻れる。
ポルコも異様な雰囲気を感じ取っているようで怯えていて、3人が馬車に乗り込むと誰も合図をしていないのに走り出した。