キラとニクラの大冒険 (45)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/11/08 10:40:57
それからやっと丘の上へ上がると、そこから湾にそってずっと丘が続いている。
丘の先端に向かってゆるやかに湾曲しながら登っているようだ。
途中で丘の端へ行くと、地面が直角に切れて、かなり高い崖の真下には海面があった。
下をのぞくと、あまりの高さにおしりのあたりがむずむずした。
それから、3人はあたりの景色を眺めながら、丘の先端へのんびりと歩いていった。
丘の先端に着くと、もうお昼だった。
3人は草の上に座って、持ってきたお昼ごはんを食べた。
食べている途中、ぱっぱっぷすがまた興味本位で崖の下をのぞいていると、口にベーコンの塊を入れたまま声をあげた。
おい!何かいるぞ!!
それを聞いて、ニクラとキラも崖の下をのぞいた。
ぱっぱっぷすが見たのは何か大きな生き物のようで、海中にしっぽのようなものが見えたけど、すぐに沖に向かって泳いで行ってしまったらしい。
丘の先端の崖はそうとう高く、海面に向かってえぐれながら下りていた。
この辺りの水深はもうかなり深いようで、海水の緑色が濃かった。
3人が地面に腹ばいになって海面を見ていると、3人の真下から、巨大なサーラーがあらわれた。
崖から急にサーラーがあらわれたので、3人は驚いて、わあ!!と、声をあげた。
1頭のサーラーがゆっくりと全身をあらわして、そのまま沖へ泳いでいった。
少しすると、また巨大なサーラーが崖から出てきて、沖へ泳いでいった。
3人が見てる間に、5頭のサーラーが崖から出てきて泳いでいった。
こないだ3人が吹き飛ばされたときよりも、ずっとゆっくりした泳ぎ方だった。
どうやら、この崖にも穴があいていて、ニクラたちがこないだまでいた浜辺の海中にあった崖の穴と繋がる洞窟になっているようだ。
よかったなあ!今、サーラーの通り道が見れて!知らなかったら、また危ないところだったなぁ!
と、ぱっぱっぷすが言った。
3人はお昼ごはんを食べ終えると、丘の向こうに行くか、相談した。湾はこの丘の先端の崖で終わっていて、その向こう側はまたなだらかに丘が下っている。丘が終わったあたりは湿地になっていてその湿地がしばらく続いて、それよりもっと向こうは森になっていた。森は巨大で、地平線の向こうまで続いている。
3人は今日はここで探索をやめて、一度テントに戻ることにした。海で洗濯もしなくてはいけないし、食べ物も獲りに行きたかった。
テントに戻ると、そのあたりにいたはずのポルコがいなかった。
どこに行ったのか、と辺りを見わたすと、なんと、ポルコは海へ入って潜っていた。
3人とも馬が海に潜れるなんて知らなかったので、とても驚いた。
ポルコの潜る姿はユニークで、3人とも嬉しくなって、ポルコと一緒に海に入った。
今日はとても天気がきっとポルコもいいから、きっとポルコも暑いんだね!
とニクラは言いながら、ポルコにまたがったりして遊んでいた。
ニクラの腕は傷跡は残ったけど、今ではもうすっかり大丈夫になっていた。
それから3人は海で洗濯をして、魚を獲りに潜った。
キラはまだそれほど上手には魚を突けなかったけど、ニクラの作ったモリで少しは獲れるようになっていた。
次の日は左手の砂浜を探索してみることにした。
その日もとても暑かったので、3人はたまに海に入って体を冷やしながら進んだ。
お昼くらいに海に入ったとき、ニクラは、お昼ごはんの魚を探して海底を見ながら潜っていた。
海底の砂にはたまにカレイやヒラメが隠れているので、ニクラは注意深く海底を見ていた。
すると、海底の砂に半分埋まって飛び出している木の残骸のようなものを見つけた。
ニクラは潜って海底からそれを引き抜いた。
海面に上がって、それを見てみると、自然のものではなく、あきらかに人の手によって作られたものだった。
まっすぐな木枠のようなもので、木枠には飾りが彫り込んであった。その飾りの中に、半分欠けてはいるが、家紋のようなマークもある。
ニクラは船工場で働いていたので、それが何かわかった。
船の外側に使われる組み木の一部で、よくお金持ちや王族が船を作る時には、こういった飾りを彫らせることが多かった。
ニクラは海面に浮かんでそれを手に持って見ながら、とても興奮していた。
ニクラはもう一度海面に顔をつけて、海底を見てみると、もう少し沖のほうにはもっと大きな組み木の残骸が砂に埋もれているのを見つけた。
あんなに大きな船の残骸は50年前も発見されてないはずだ。
先日、ニクラたちがいた砂浜の小さな湾がたぶん町に1番近い湾だ。
イランを買った王様は、あの湾から出航して、今ニクラたちがいる湾の沖合いで7つの頭を持つ蛇に襲われて沈没したのではないか?
砂浜の小さな湾には、スーラーたちが崖の洞窟から飛び出してくる強い流れが沖に向かっているし、もうひとつ、ニクラが流されたさらに強力な潮の流れも沖に向かっていた。
だから、この辺りで沈没したら、その船の残骸は砂浜の小さな湾にはほとんどたどり着かないのだ。
ほんの少しの小さな残骸だけがスーラーの通り道の洞窟から、あの砂浜にたどり着いたのだ。
だから、町の若者がいくらあの湾内で沈没船を探したって見つからなかったのだ。
ニクラが興奮しながらそんなことを考えていると、ぱっぱっぷすとキラが大きな声で浜辺のテントからニクラを呼んだ。
ニクラー!お昼ごはんができたわ!
おーーぅい!いつまで潜ってんだよぅ!昼めしにしよう!!
ニクラはふたりのいるテントまで駆け寄って、組み木の残骸を見せながら、この湾の沖合いに王様の船が沈んでるかも知れないことを説明した。
だから、きっとこの湾の沖には王様の船が沈んでると思うんだ!!
それを聞いたぱっぱっぷすは大きな声で喜んだ。
やったなぁ!!ニクラ!これでお金っていうのがたくさんもらえんだろ?!お金ってのがたくさんあったら、じゆうってのになれるんだろう?!!
ところがキラは、少し悲しそうな顔をしていた。
ニクラは、キラ、どうしたの?と聞くと、キラは言った。
あのね、、わたし気持ちのはじっこのほうで、宝物なんて見つからなければいいのに。って、思ってるの。もちろん、お金持ちになって、どこか素敵な国へ行って素敵なお家に住んで暮らしたいわ。でも、この旅が終わってしまうのが怖いし、7つの頭を持つ蛇に誰かが殺されてしまうことも怖いの。
もしかすると、わたしは今のままでもいいのかも知れない。って、思ってるの。
ニクラは少し考えてから言った。
うん、キラがイランを探したくないなら、やめよう。
また探したくなったときに探せばいいさ。
ぱっぱっぷすもそれでいいかな?
いいよぅ!おれはもともと宝物なんてどうだっていいしな!!
と、ぱっぱっぷすは笑いながら答えた。
ふたりとも、わがまま言ってごめんなさい。。
キラは沈んだ顔で言った。
ぼくもキラの思ってることと同じことを心のどこかで思っていたんだ。
それより、お昼ごはんを食べようよ、キラ!
と、ニクラが言ってみんなでお昼ごはんを食べた。