キラとニクラの大冒険 (43)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/11/05 23:56:11
キラとぱっぱっぷすはもう起きていて、浜にあがってくるニクラを見て、大きな声で言った。
ニクラ、海に潜ってたの!?大丈夫!?
キラとぱっぱっぷすは大怪我をしているニクラがまさか海へ潜っているとは思ってなくて、驚いた。
うん、大丈夫!これで朝ごはんを作ろうと思ってたんだ!
ニクラはそう言うと、やこ貝をごろりと砂浜に転がした。
でも、そういえば、夕方まで貝が開くのを待たなくちゃいけないね。夢中で獲ったけど、すっかり忘れてたよ!
ニクラがすっかり元気そうなので、キラとぱっぱっぷすは安心した。
やこ貝はいますぐ食べれないので、こないだと同じ岩のくぼみにつけておくことにして、3人は蜂蜜パンとベーコンをおなかいっぱい食べて朝ごはんをすませた。
それから、これからのことを話した。
なんだかよぅ、このまま宝物なんか探しに行かないで、ここしばらく暮らしてもいいけどな!
と、ぱっぱっぷすが言った。
うん、楽しいよね!ぼくもここの暮らしは好きだよ、昨日、死んじゃうところだったけど!
そう言ってニクラは笑った。
美味しい魚も獲れるし、見たことのないものがたくさんあるし、海がこんなに素敵な場所って知らなかったわ!
キラも笑いながら言った。
3人はしばらくの間、ゆっくりとここで暮らしながら、少しづつ探検して、海のことを知っていくことにした。
そして、もし王様の沈没船の場所がわかったら、行ってみよう。と、話した。
その日から、3人は近くの森へ行ってみたり、海に潜ったりして毎日を過ごした。
森へ行く時はかならず金の粉と黒い泥だんごを持って行くことにして、すばるからくりで海へ入る時はかならず3人で入るようにした。
でも、沈没船がどこに沈んでいるのか、何もわからなかった。
何日か経ったある日のお昼ころ、3人でお昼ごはんの支度をしていた。すると突然、
どどどーん!!!
と、ものすごい音が沖のほうでしたので、びっくりして見ると、茄子のような形の巨大な生き物がつぎつぎに海面から飛び上がってジャンプして水にその巨体を叩きつけている音だった。
その巨大な生き物たちが空中高く飛び上がって海面にその巨体を叩きつける度に、どどどーん!とすごい音がして、ちょっとすると、ニクラたちのいる浜辺にまでその飛沫が雨のように降ってきた。
それはぱっぱっぷすの家より、お金持ちのキラの大きな家より、ニクラが働いていた船工場より大きな生き物だった。
3人でやっつけた黒い魔物よりももっとずっと大きかった。
その生き物がジャンプしているとき、3人がいる砂浜は太陽から隠れて一瞬、影ができた。
3人はあまりに巨大なその生き物の様子を呆然としながら見ていた。ぱっぱっぷすなんて口をぽかんと開けていた。
あとでニクラが「うみのいきもの」で調べたら、それはクジラではなくて、大水竜魚という種族の生き物で、哺乳類と魚類と龍属の混ざった珍しい生き物だった。
名前は、サーラーと載っていた。
サーラーは世界中に生息しているけど、数が少なく、普段は深い海底で暮らしていて、あまり見ることができない生き物で、どんな生き物なのかほとんど知られてなかった。
3人が海の中で吹き飛ばされた原因はサーラーたちだった。
海の中の崖の大きな洞窟は、この浜辺から少し離れた他の湾とつながっていて、サーラーたちの通り道になっているようだった。
それを知らなかったニクラたちが洞窟のそばにいたときが、たまたまサーラーたちがそこを通る時間だったのだ。
サーラーたちを見てからまた何日か経ったある日、ニクラの提案で海岸線を探索して他の浜辺や湾を探してみることになった。
3人はこの浜辺に今日中に戻ってこれるかわからないので、ひさしぶりにテントをたたんで馬車の荷台に積んだ。馬車では砂浜に車がめり込んで進めないので、もと来た丘の上まで馬車の荷台を3人で押した。
ポルコはその横をゆっくりと登っていた。
やっとのことで、丘の上に馬車をあげて、すばるからくりも全部積んだ。3人とも汗びっしょりになっていた。
それから一息つくと、ポルコにハーネスをつなげて、やっと出発した。
海岸線沿いに回り込むように続く獣道は細くて、たまに木がせり出して進めないところがあるので、その都度ニクラは馬車の前に降りてナタで木を切りに行った。
そのうち、道に張り出している木はずいぶんと多くなってきて、3人とも馬車から降りてナタやナイフで木を切って道を作った。
しばらく木々の中を進むと、こんどは道が開けて、短い草ばかりの丘に出た。
見晴らしがよく、丘の下は断崖絶壁の崖が連なっていて、とても下へはおりられなかった。
お昼になって、3人は浜辺から持ってきたやこ貝とじゃがいもでスープを作って食べた。
お腹いっぱいになって、3人は草の上に寝転がって休憩することにした。
海って、でかいんだなぁ~。
ぱっぱっぷすがあおむけに寝転んでそう言った。
うん、わたしが想像してたより、ずーっと大きい!
町の外がこんなに大きくて広くていろーんな生き物がいるなんて知らなかったわ!
キラも嬉しそうに両手を広げてそう言った。
うん、ぼくも世界がこんなに大きくて素敵で危険なところだなんて、知らなかったよ!
ニクラも大きな声で言った。
本当に3人はもうすでに町の大人たちやぱっぱっぷすの部族にいた大人たちよりも多くの未知の体験をしていた。
ニクラとキラは寝っ転がって空を見ながら、今までの旅のことを思い出していた。
ぱっぱっぷすはもう昼寝をして、ぐうぐういびきをかいていた。
空は青くて高いところにいくつかの小さな白い雲が浮かび、とんびがその近くを旋回して円を描いていた。