キラとニクラの大冒険 (42)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/11/05 10:16:24
それからぱっぱっぷすはサメをさばいて、3人で生のまま食べてみた。
サメの肉は脂っこくて、少しくさくて、あんまり美味しくはなかった。
あんまりうまくねえなぁ。。
ぱっぱっぷすは残念そうに言ったけど、やはりどうしてもお腹がへっているようで、ひとりでもう少し食べ続けた。
でも、やっぱり匂いが我慢できなくて、まもなく食べるのをやめてしまった。
それでも、ぱっぱっぷすはサメを解体して、骨や鋭い歯を取っておくことにした。
肉も細切れにして、罠のエサに使うと言って取っておくことにした。
浜辺まで持って帰るのに袋がないので、ぱっぱっぷすはズボンを脱いで腰ひもだけになった。
ぱっぱっぷすはズボンの片足に骨を入れて、もう片方に肉を入れて、ズボンを縛った。
それからしばらく休憩すると、サメの肉を食べたおかげか、ようやくニクラは立ち上がれるようになった。
キラ、ぱっぱっぷす、もう大丈夫だよ。浜辺に戻ろう。
ニクラがそう言うと、
わかったわ。じゃあ、ニクラとイルカもいたら、きっとさっきより速くなるから、力をひとつにして帰りましょう。
そう言って、キラとぱっぱっぷすもツキとこすもすにまたがった。
キラはニクラの右側に、ぱっぱっぷすはニクラの左側になって、ニクラを真ん中にした。
弱っているニクラを真ん中にしたほうがいいと思ったのだ。
キラは二人に言った。
ぱっぱっぷすは片方の手をイルカに当てて、ニクラは片方の手をツキに当てて。
そして、キラはニクラの怪我をしてないほうの右腕をつかんだ。
キラはそうやって3人と3頭の感覚をつなげて、みんなの身体のなかを力がうまく循環するようにしたのだ。
ニクラもぱっぱっぷすももうすでにイルカとこすもすと感覚を共有することができるようになっていたので、今度は出発したときからすでにそうとうな速さだった。
しかも、今度はニクラとイルカが増えたので、その速さはじょじょにものすごいスピードになっていった。
そして、それほどすごい速さなのに、生き物や岩や海藻をすべてよけながら泳げるのは、3頭のすばるからくりはこの短いあいだに急激に成長していたからだった。
キラ自身も気がついていなかったけど、それはキラのおかげだった。
キラが自分の力を他者に伝えると、その相手は、魂に宿る純粋な力を自然に引き出されるようだった。
キラはいつのまにか3頭のすばるからくりと、さらにニクラとぱっぱっぷすの魂の力も少しづつ引き出していた。
ぱっぱっぷすがさっき感じたしびれや、しびれのあとの身体の中を通り抜けるすっきりした感覚はそのためだった。
それから、3人と3頭は思ったよりずっと早く、あっという間にはじめに流された崖の洞窟にあたりまで来た。
ニクラとイルカが加わった力は素晴らしい速度を生み出していた。
辺りに巨大な生き物の姿はなく、今となってはあれが7つの頭を持つ蛇なのか、どんな生き物だったのかわからなかった。
それから、3人はゆっくり崖の上まであがって、浜に戻った。
海から上がると、もうすっかり空は赤く夕暮れになっていた。
今日は一日中、海の中にいたのだ。
3人は3頭のすばるからくりを馬車の荷台に運ぶと、真水できれいに洗ってから、乾いた布で拭かなければならなかった。
いつまでも、潮水がすばるからくりに付いているのは良くなかった。
これもセイゲンさんが教えてくれたことだった。
さすがにニクラはもうふらふらで、それでも自分でやろうとしてたけど、ぱっぱっぷすが強引にニクラをテントの中に入れてしまって、包帯で傷口をぐるぐる巻きにしてから言った。
おまえは寝ろ!
それから、ぱっぱっぷすがこすもすとイルカの2頭の世話をすごい早さで終わらせてしまった。
ぱっぱっぷすとキラは洗いながら、すばるからくりたちの疲れと、身体を洗われる気持ちよさを共有していた。
ポルコがテントから少し離れた砂浜に寝転んでいた。
ぱっぱっぷすは、夕ごはんを食べよう!!と、言ったけど、ニクラはすでにテントで寝てしまっていたし、キラはもう何をする体力も残っていなかった。
キラは、ぱっぱっぷすにおやすみ。と言ってテントに入ると、すぐに寝てしまった。
眠るよりも夕ごはんが食べたいぱっぱっぷすはひとりで蜂蜜パンや魚をたくさん食べた。
ぱっぱっぷすはどんどん口に食べ物を詰め込んでは飲み込んで、すごい勢いで食べ続けた。
やがておなかがいっぱいになって、ぱっぱっぷすは焚き火の前で両手に串刺しの魚を持って口にパンのかけらを入れたまま眠ってしまった。
次の日の朝、3人はいつもより遅くに目が覚めた。
はじめに目が覚めたのはニクラで、テントの中にぱっぱっぷすがいないことに気がついて、きっともう起きて、魚でも獲りに行ってるんだろう。と思った。
立ち上がると、もう足元はふらついたりせずにちゃんと歩けた。
ただ、とにかくおなかが減っていた。
テントから出ると、すでに消えている焚き火の前でぱっぱっぷすが座ったまま頭を地面につけて寝ていた。
ニクラはぱっぱっぷすが両手に魚を持っているのを見てクスリと笑うと、みんなの朝ごはんのスープを作ることにした。
やこ貝を使おうかと思ったけど、そういえばこないだ獲ったやこ貝はその日に全部食べてしまったことを思い出した。
ニクラはモリを持って海へ入ることにした。
海へ入ると、海水に触れたとたん、左腕の裂傷がびりびりと痛んだ。
ニクラは自分が大怪我していることをすっかり忘れてしまっていた。ニクラは包帯をめくって、傷口を見た。あんなに大きく開いていた傷口はこんもりと盛り上がって、もうふさがりかかっていた。傷口の肉は黄色く変色して、触ると干物みたいな硬さだった。
縫ってもいないのにもう傷が治りかけているのは、イルカとキラがニクラの身体に懸命に力を送ったからだった。
ニクラは傷口を触りながら、そう思っていた。
それからニクラはいったんテントに戻ると、バックパックからハナ婆にもらった塗り薬と包帯を出した。傷口を真水で洗ってから拭き取って、薬を塗って包帯をきつく巻いて、セイゲンさんが作ってくれた潜水服を着込んだ。
はじめて着たけど、ニクラの身体にぴったりと合って動きやすかった。
潜水服を着て水に入ると、傷口は痛まなかったし、裸よりもなめらかに泳ぐことができた。
ニクラはしばらく水面を泳いで浜辺の右手にある岩場のほうに行くと、海底の岩にやこ貝を見つけた。ニクラはやこ貝を目指して潜水して海底にへばりついているやこ貝に脱いだ服で覆ってから、力一杯引っ張ってはがそうとした。でも、やこ貝はしっかりと海底の岩にへばりついて、びくとも動かなかった。
ニクラはいったん海面に顔を出してめいっぱい息を吸い込むと、またやこ貝のところまで潜って、モリを貝と岩の間に差し込んだ。
ニクラはもう一度海面に顔を出して息を吸い込むと、一気に勢いをつけて潜った。
ニクラはそのままの勢いでモリの持ち手を体重をかけて思いっきりふんずけた。
すると、ごぽりと大きな気泡が貝殻のしたから出て、ごろりとやこ貝を岩から外すことができた。
ニクラはやこ貝を服でくるんだまま抱えて海面にあがり、砂浜まで泳いで戻った。
そうだね、キラは面白いね。
そのうち、キラ個人について、もっと掘り下げて書こうかな?とも思ってるよ〜(^-^)
うん、セイゲンさんは初めからキラのことを見抜いてたと思うよ!
セイゲンさんもこうなる事を知ってた感じです^ ^