キラとニクラの大冒険 (40)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/11/02 08:10:01
キラはこすもすの背にも手を置いた。
キラは、もうすでにツキだけではなく、こすもすとも感覚を共有していた。
空気の玉を一つにしたあと、キラはいつのまにか、自分の体の中にこすもすの感覚もあることがわかったのだ。
キラはツキとこすもすと、もっとはやく!もっとはやく!という意識を共有した。
じょじょにスピードをあげていった2頭のすばるからくりは、しだいに今までにないほど速いスピードに達していた。
それでもまだまだニクラのいる場所は遠いことをキラは感じていた。
キラには、どうやってこの大きな力を発揮するか、わかっていた。
ツキとこすもす、そしてキラのみっつの力を共有したときに、この大きな力が生み出すことができた。
キラは片方の手をこすもすから離して、こんどは何も言わないでぱっぱっぷすの手を強く握った。
ぱっぱっぷすは耳のうしろに突然強い電流が走ったように感じて驚いてキラを見た。その感覚はとても強くぱっぱっぷすの頭がしびれるほどだった。
キラは必死になってぱっぱっぷすの力も共有しようとしていた。
キラはぱっぱっぷすにありったけの思いを込めて感覚を送り続けた。
ぱっぱっぷすは頭がしびれて、耳のうしろがじんじんと痛かったけど、がまんした。
それから、キラはぱっぱっぷすの両手をつかみ、右手をこすもすに、左手をツキに置かせて、自分はぱっぱっぷすの左腕をしっかりとつかんだ。
すると、ぱっぱっぷすの頭のしびれや、耳のうしろの痛みはおさまって、とてもすっきりした感覚が身体の中を通り抜けていくのがわかった。その感覚は、自分とこすもすと、そして、キラとツキの身体を通って循環しているものだった。
ぱっぱっぷすは、空を飛べそうだ。と思うほど、身体が軽くて気持ちの良い流れの中にいるのを感じていた。
4つの力を共有させたことによって、そのスピードはどんどんどんどん速くなっていく。
2人と2頭を包む空気の玉は流線形になって、これほど速いスピードなのに、キラとぱっぱっぷすはあたりの海底の風景がスローモーションのようにくっきりと見えていて、とても不思議に思った。
すると、しばらくして遠くの海底にニクラとイルカが小さく見えた。
ぱっぱっぷすは、
ニクラだ!!!!と、声をあげた。
ニクラの姿はどんどん近づいて、あっという間にたどり着いた。
イルカがニクラを守るように寄り添って、ニクラは静かに眠っているように見えた。
キラとぱっぱっぷすは、ニクラは死んでしまうのではないかと不安になった。
でも、すぐにイルカから、ツキとこすもすに、このこどもは眠ってかいふくしている。という意識が伝り、キラとぱっぱっぷすにもそれが伝わってきた。
二人はようやく安心した。
よかったなあ!!ニクラ、死ななかったなあ!!!
ぱっぱっぷすは嬉しそうにキラに言った。
キラは目に涙をいっぱいにためてうなずいた。
それから、キラとぱっぱっぷすは空気の玉をイルカのものとも同化させることにした。
3つの空気の玉がひとつになると、ぶっくりと大きくふくらんで、海底に半球体の空気の玉になった。
2つ、3つ、と力が集り、混ざり合ってひとつになったとき、ただひとつ分の力が増えるのではなくて、倍以上の、もっと大きく新しい力が生まれるようだった。
海底にできた大きな丸い空気の玉の中で、キラとぱっぱっぷすはツキとこすもすから降りることができた。まるで、海底にできた空気の部屋のようだった。
ふたりはニクラに近づいて見ると、ニクラの左腕は裂けて、白い骨が見えていた。すでに血は止まっているようで、傷口のまわりに固まった血がこびりついている。
頭にも傷を負っているようで、髪の毛が少し血で固まっていた。
こんなにひどい傷でも、もう血が止まっているのは、イルカのおかげなのだろう。と、ふたりはわかった。
キラは急いで着ていた服を脱いで上半身裸になると、ぱっぱっぷすにナイフを借りて服に切れ目を入れて、いくつか縦に引き裂いた。キラは服の切れ端を空気の玉の外に出して、海水に浸した。
それをしぼってから、ニクラの腕の傷のまわりにこびりついた血ををていねいにふきとった。
それから、残りの布を細く割いて、ニクラの腕と頭に巻いて包帯の代わりにした。
ぱっぱっぷすはキラが突然服を脱いだので、母親やハナ婆以外の、しかも若い女の子の裸を見たのが始めてで、顔を真っ赤にしてそっぽをむいた。
キラがニクラの腕に包帯を巻き終えると、ぱっぱっぷすは自分の服を脱いで、キラに渡しながら言った。
おい、キラ、おめえ、これ着ろ!
キラはニクラを助けたくて夢中だったからためらいなく服を脱いだけれど、ぱっぱっぷすの顔が真っ赤なのを見て、はじめて自分が上半身裸でいることに気がついて恥ずかしくなってしまった。
ぱっぱっぷすはいいの?
キラがそう聞くと、ぱっぱっぷすは、いいから!!着ろ!と、そっぽをむいたままキラに服を押し付けた。
キラは、ぱっぱっぷすの優しい気持ちが嬉しくて、ありがとう。ぱっぱっぷす。と言って、服を着た。
ぱっぱっぷすは、それには返事をしないで、大きな声で、ああ!腹がへったなあ!!と言って、真っ赤な顔のまんま、空気の玉の中でなにか食べられるものを探しはじめた。
キラはぱっぱっぷすの服を着ると、眠っているニクラの隣に座って、ニクラの身体にそっと手を当てた。
すると、力を失ったニクラの身体にイルカはずっと力を送り続けていることがわかった。
キラは自分もそうしたくて、イルカが力を送っているその流れを感じ取ろうとしていた。
すると、キラもほんの少しではあるけど、その流れに乗せて自分の力も送ることができた。
キラ、うめえぞ!
ぱっぱっぷすはそう言うと、キラにも切り身を渡した。
キラはニクラの身体に手を置いたまま、もう片方の手で切り身を受け取って、ありがとう。と言って食べた。
ふたりともかなり体力を消耗していて、おなかがへっていた。
それからふたりは貝の殻もあけて、生のままで食べて、いくつかをニクラにも取っておいた。
ニクラは静かに眠り続け、キラとイルカはずっとニクラに力を送り続けていた。
それから、ぱっぱっぷすはキラの横に並んで座った。
ここがあの崖の洞窟からかなり離れている沖合ということは、ツキたちの感覚を通じてわかっていた。
空気の玉の中からあたりを見わたすと、少し離れた場所に海藻が群生しているのが見えた。
海藻たちはとても背が高く、見上げてもその先が見えなかった。
そこから先は海藻で出来た森になっていて、鬱蒼と暗く、先が見えなかった。
海藻の森には様々な生き物が暮らしているようで、見たことのない奇妙な生き物や、魚たちが森に出たり入ったりしていた。
海って、すげえなぁ。。
ぱっぱっぷすはめずらしく静かにひとり言を言った。
Wow! そんなに嬉しいお言葉、ありがとうございます〜〜(^▽^)
出版しちゃおうかしら〜!?うふふ。
ありがとうございます