キラとニクラの大冒険 (36)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/10/29 07:22:00
となりの小さな入り江まで行って来たんだよ。そこまでずっと海底の砂浜が続いてるんだ。
と、ニクラが言った。
そこで、ニクラが組み木の上にある蜂の巣に気づいてキラに聞いた。
この蜂の巣、どうしたの?キラが採ってきたの!?
キラが、こくんと頷くと、ニクラもぱっぱっぷすも驚いた。
こんなに大きな蜂の巣、見たことないよ!どこで採って来たんだい?!キラ、すごいね!!
ハナ婆が蜂の巣はめったに取れないって言ってたよぅ!!
蜂蜜はおれの大好物だけど、たまにしか食べれなかったんだ!!
こんなにたくさんの蜂蜜!!
すげえなあ!!キラは蜂蜜取りの名人だなあ!!
と、ニクラとぱっぱっぷすが口々にたくさんほめるので、キラは自慢したかったけど照れてしまって、顔を赤くして、コクコクとうなずいてばかりいた。
自分一人で成し遂げたことを人に褒められるなんて初めての経験だった。ましてや、名人なんて言われて、すごく嬉しくてすごく恥ずかしくて、どうすればいいかわからなかった。
うまそおだなあ!これ!!
と、ぱっぱっぷすが言って、
きれいな蜂蜜だなぁ!
と、ニクラが言って、蜂蜜の瓶をのぞきこんだ。
キラは恥ずかしいのに我慢できずに言った。
それより、ふたりともたくさん魚を獲ってきたのね!
そうだ、魚のことを調べなくっちゃ。
ニクラは思い出して、「うみのいきもの」を開いた。
ニクラとぱっぱっぷすが獲ってきた魚たちは10種類以上あって、そのうちの2匹は毒のある魚だった。
ぺんぺらという魚で、皮と内臓に毒があり、食べると身体がしびれてしまうらしい。
ニクラは2匹のぺんぺらを海にかえして、さあ、ごはんにしよう!と言った。
3人はテントの前の砂浜に焚き火をこしらえて、魚を焼いた。
23匹もあったので、半分は明日に取っておいた。
魚が焼けるのを待つ間、セイゲンさんのパンに蜂蜜をつけて食べてみた。
花のような香りのする蜂蜜で、セイゲンさんの焼いたパンとすごく合って、いくらでも食べれた。3人とも久しぶりに食べる甘いものに喜んで夢中で食べた。
その間もニクラとぱっぱっぷすが何度もキラをほめるので、キラはその都度こそばゆい気持ちだった。
ニクラもぱっぱっぷすも、モリもうまく投げれない華奢なキラがひとりで素敵な蜂蜜を取ってきたことが自分のことのように嬉しかった。
魚が焼けてきたころ、キラが口の横に蜂蜜をつけたまま言った。
そういえば、貝はどうするの?
ニクラもぱっぱっぷすも貝を岩場のくぼみの水につけておいたことをすっかり忘れていた。
そうだそうだ!!すっかり忘れてたなぁ!!
うん、忘れてた!
3人は焼きあがった魚を火からはなして、岩場へ貝を見に行って見ることにした。
くぼみの水の中でやこ貝は、ぱっくりと開いて横向きに転がっていた。
貝の身は白や透明や緑や黒が入り混じって美しく、ぷっくりとしていてとても大きかった。
3人は、どうやって食べようか?と顔を見合わせた。
くぼみの中からやこ貝を出すのは手を挟まれそうだったので、いったん、貝から身を出すことにした。
ニクラは適当な流木を拾ってくると、貝殻の裏側をコンコンと優しく叩いた。
はじめはじっと動かなかったけど、しばらく叩いていると、やこ貝の身はくにゃっと動いて、そろそろと貝殻から出ていった。
そこで待ち構えていたぱっぱっぷすが素早くやこ貝の身を捕まえて、鍋に入れてしまった。
ぱっぱっぷすははじめて獲った海の大きな貝に興奮して言った。
どうやって食べようか?!
大きな身なので、半分を生で食べて、半分を焼いて食べることにした。
キラは、ひいおばあちゃんに教わったカルパッチョという外国の料理を思い出しながら、やこ貝の身を薄く切った。でも、オイルやお酢もサラダも無いのでカルパッチョはできないけど、きれいに葉っぱのお皿に切り身を並べた。
ぱっぱっぷすは待てなくて、キラが切ってる横から切り身を一枚、さっと取って食べてしまった。やこ貝の刺身は噛むとしこしことしていて、甘いジュースがたくさんあふれてきた。
うまいぞぉ!!この貝!
そう言ってぱっぱっぷすはもう一切れ口に放り込んだ。
今日の夕ごはんはとても豪勢だった。
生のやこ貝を薄く切った刺身、やこ貝の焼いたもの、いろんな種類の焼き魚、蜂蜜とパン。
3人は特に蜂蜜とやこ貝を気に入った。
生のやこ貝は、しこしことした歯触りで甘く、焼いたやこ貝は身がしっとりと柔らかくなって美味しくて、大きなやこ貝を全部ぺろりと平らげた。
おなかも気持ちも満たされた3人は、片付けを終えたあと、すぐに寝てしまった。
次の日、朝早くに目覚めると、蜂蜜とパンの朝ごはんを食べてから、ニクラとぱっぱっぷすは昨日獲った魚の残りを干物にする仕事に取りかかった。
キラは、もう少し木の実が食べたいわ。と言って、またポルコと小さな森へ探しに行った。
前にぱっぱっぷすが作った木枠に干物を吊るし終えるころにキラが戻ってきた。
キラは今度はたくさんのベリーを摘んできた。
昨日行った巨木よりもう少し奥へ入ると、たくさんのベリーがなっている場所を見つけたのだ。
それから、3人はすばるからくりに乗る練習をすることにした。
馬車から3つのすばるからくりをおろして、波打ち際に運んだ。
3つのすばるからくりは、ニクラが作ったイルカとツキ、それとぱっぱっぷすが作ったこすもすだ。
ニクラはセイゲンさんからすばるからくりの乗り方を教わっていた。
すばるからくりはにゃ、はじめゆっくりと水につけてやるんだゃ。体の下半分が水につかるくらいでいいんだゃ。それから、手で水を体にかけてやるんだゃ。
したら、すばるさ、うごきはじめっから、乗れ。
すばるさ、勝手に水ん中入ってくから、そのまま乗ってけ。
空気の膜できっから心配しなくていいぞゃ。
あとは、水ん中で乗りながら覚えるんだゃ。
ニクラはそれをキラとぱっぱっぷすにも伝えた。
3人はその通りに、まずすばるからくりの体の下半分がひたるように海につけた。
ぱちゃぱちゃと手で水をかけてやると、キラのツキがまずはじめに動き出した。
魚のように身体をくねらせている。
キラ、もうそれで乗っていいはずだよ。
と、ニクラが言ったとき、イルカもくねくねと動き出した。
でも、ぱっぱっぷすのこすもすはいつまでたっても動かないので、まずはキラとニクラだけですばるからくりに乗ってみることにした。
ふたりがまたがると、ツキとイルカはゆるゆると海へと入っていく。
ふたりはそのままツキとイルカにつかまって、頭まで海の中へ入っていった。
顔が海に入るとき、ふたりとも大きく息を吸って止めた。
2頭のすばるからくりは、ふたりを乗せて海中へ潜っていく。
はじめ、空気の膜ができないので、ふたりとも目を固くつむって息を止めて苦しくなってきた。このまま空気の膜ができないのかと思って不安になってきたけど、少しするとツキとイルカの体から、ぶくーーーーー、っと、空気の玉が生まれて、キラとニクラをそれぞれ包み込んだ。
すると、空気の玉の中はあたりまえに呼吸ができて、海中の様子も見ることができた。
ツキとイルカは、遊んでいるようで、お互いに近づいて交差したり、宙返りみたいにまわったりした。
そして、ツキはすぐにキラと意思の疎通をはじめていた。
セイゲンさんの言っていた通り、なぜかキラにツキが慣れるのはとても早かった。
おれも久しぶりに読み返してみると、めっちゃ美味しそうで、食べてみたいです!
特に蜂蜜とセイゲンさんのパンとやこ貝、めっちゃうまそう。。
私にはもったいないお褒めのお言葉、ありがとうございます!!
嬉しいです!
この物語の作者さんは人の心をあたたかく見ていて、生の喜びを深く知っているなあ、という感慨も湧きました。美しい文字列を読ませてくださってありがとうございます。