キラとニクラの大冒険 (34)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/10/26 09:48:48
次の日の朝早くに3人は起きた。
キラとニクラはぺきぺきの茎で歯を磨きながら、昨日の出来事を思い出していた。
ぱっぱっぷすは口にぺきぺきの茎をくわえたまま、さっそくかみつきの肉を焼いて朝ごはんのしたくをはじめていた。
ぱっぱっぷすは歯をさっさと磨き終えると、かみつきの肉を火で炙りながら唐突にふたりに言った。
おれだってさ、こいつのあかんぼうは今腹をすかせてるんだろうなってことくらい考えるんだよぅ、でもよ、ハナ婆が言ってた。生きることは借りることだってよ、他の生き物たちから命を借りて、んで、またいつかおれたちも命を還すんだってよ。
ぱっぱっぷすはふたりがなにも言わなくても、ふたりの気持ちがわかってるみたいだった。
キラはぱっぱっぷすに言った。
わたしはこんなふうに大きな生き物を殺して食べることがはじめてだったの。どうしても怖くなってしまって、あんなふうにうろたえてしまったの、ごめんなさい。
でも、わたしはぱっぱっぷすのおかげで、生きることがどうゆうことか、少しわかったと思う。
ニクラも言った。
うん、とても怖いことだったけど、でも、大事なことなんだね。
ぱっぱっぷすは、まだ半生の肉にかぶりつきながら言った。
うん、それより、うめえぞ!おまえらも食えよなぁ!!
朝ごはんを終えて、3人はテントを片付けて、出発した。
それから3人は、魚を突いたり、鳥やうさぎや野ねずみを狩りながら、ゆっくりと海へ向かった。
ニクラは弓矢の扱いが上手になって、ぱっぱっぷすと同じくらい獲物を射ることができたけど、まだキラだけは弓矢で動物を射ることができなかった。
キラは練習で的を狙って射るのはとても上手だったけれど、じっさいの獲物に狙いを定めると、どうしても矢を放つことができなかった。
ニクラもぱっぱっぷすも、無理して狩りをしなくていい。と言ったけど、キラは弓矢で獲物を獲ろうすることをしばらくやめなかった。
でも、とうとうキラは一度も生き物に向かって矢を放つことはできなかった。
それからキラは、狩りをやめて、ベリーやきのこや野草を集めることにした。
ぱっぱっぷすとニクラにどのきのこや野草が食べられるかを熱心に教わって、すぐにさまざまな種類のきのこや野草を覚えた。
きのこや野草獲りを覚えると、キラはぱっぱっぷすとニクラが獲ってきたうさぎや魚とうまく組み合わせて、ふたりが今まで食べたこともない外国風の料理を作るようになった。
やがてキラは、採ってきた豆を発酵させてソースまで作るようになった。
ぱっぱっぷすはキラとニクラに、モリや弓矢の狩りのほかにも、枝やツルを編んで作る魚獲りの仕掛けや、鳥を捕まえる罠の作り方も教えた。
そのころは、セイゲンさんの家を出発してから、16日が経っていた。
17日目のお昼ころに、3人は小高い丘の上に出た。
そこから、坂を下ればもう海で、白い砂浜が見えていた。
荷台はニクラとぱっぱっぷすの2人で抑えながらゆっくりと下ることにして、キラはその後からポルコの手綱を引いて下り坂をおりた。
砂浜に着くと、3人は喜んで海へ走って行った。
はじめての海はギラギラと痛いくらいに眩しく輝いて、ざっぷんざっぷんと波が打ち寄せていた。
ニクラとキラは、7つ頭を持つ蛇や邪悪な魔物たちがどこにひそんでいるかわからないので、不安があったけど、ぱっぱっぷすはそんなことはおかまいなしにそのまま海へ突っ込んで行った。
ザブンと頭から海へ飛び込むと、おい、ニクラもキラも早く来いよぅ!!気持ちいいぞぅ!!
と、叫んだ。
ニクラとキラは、ちょっと怖かったけど、恐る恐る海へ入ってみた。
はじめ、浅いところだけで足だけ入っていたけど、危険な気配が無いとわかると、少し深いとこにも行ってみた。
ニクラはたまに船工場の湖で泳いでいたので、キラに泳ぎ方を教えた。
キラはすぐに覚えて、じょうずに泳いだ。
ぱっぱっぷすはすいすい泳いでいたけど、溺れてる犬のようなとても不恰好な泳ぎ方で、どうやったらそんな泳ぎ方で前に進めるのか不思議なくらいだった。
とってもへんてこだったけど、ぱっぱっぷすは自分では格好良く上手に泳げているつもりらしく、得意気に、やっぱりすばるからくりなんていらないんじゃないかー?と笑って言った。
3人はしばらく海で泳いで遊んでから、浜辺に戻った。
ポルコは浜辺から少し離れた草むらで草をはんでいた。
この浜辺に何日かテントをはって、海の様子を見よう。
ぼくたちは海のことをなにも知らないから、急に潜ってイランを探しに行くのは危ないと思うんだ。
それから、すばるからくりの乗り方も練習しようよ。
と、ニクラが提案すると、キラもぱっぱっぷすも賛成した。
浜辺は砂で地面が柔らかいので、浜辺から少し丘のほうへ戻った草むらにテントをはることにした。
おい、ニクラ!海の中にはうまい魚や貝がいるんだろう?!
ぱっぱっぷすがお腹をすかせて、早く魚獲りに行きたがった。
うん、でも、食べれない生き物もいるし、触っただけで死んでしまうような毒を持つ生き物もいるんだ。だから、手で触らないで、モリで突いて獲るほうがいいよ。
獲ってきたら本で調べよう!
ニクラはそう言うと、バックパックから1冊の本を取り出した。
「うみのいきもの」という詳しい絵の描かれた図鑑だった。
荷物が重くなるので本は持ってこないつもりだったけど、この本だけは1冊だけ持ってきていた。
それを聞いてぱっぱっぷすはすぐに、
そうか、わかった!!
と言いながら、モリを掴んで海へ入って行った。
ニクラも海で魚を突くことにして、キラは、ポルコと一緒に近くで木の実やきのこを採ってくることにした。
キラがポルコのところに行こうとして、ニクラが海へ入ろうとしたとき、ぱっぱっぷすが早速獲物を捕まえたようで、海からザブザブと出てきた。
両手で巨大な貝を抱えている。
ぱっぱっぷすの頭よりも大きかった。
おうい!すげえでかいのを獲ったぞぉ!!!!
ぱっぱっぷすはそう言いながら、ニクラの近くに来て、ずどん、と、貝を砂浜に転がした。