キラとニクラの大冒険 (33)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/10/25 05:52:43
3人は馬車に乗り込み出発した。道は左に下りながら曲がっていて、脇には大きな藪があった。
馬車がその藪の近くに来たとき、
ガサガサ、、と、藪から音が聞こえると、突然、藪の中から大きな動物が道に飛び出してきた。
目の前にあらわれたポルコよりも大きな黒い塊はかみつきだった。
ポルコは驚いて後ろ足で立ち上がり、そのまま横に転倒してしまった。
ポルコが急に立ち上がったので、かみつきも驚いて威嚇の唸り声をあげていた。今にもポルコに襲いかかりそうだった。
ポルコは、起き上がろうともがいているけど、転倒したときに絡まったハーネスが邪魔でうまく起き上がれなかった。
ニクラはとっさに馬車の前に飛び降りて、腰から出したナイフで急いでハーネスを切った。
ぐわぐわ!と、唸り声をあげながら、かみつきはポルコとニクラに近づいてきた。
ニクラはかみつきの迫力にひるんだけど、ポルコを助けなきゃ。と戦う覚悟を決めた。
かみつきは、ぐわあ!!と、大きく口を開けて吠えると、ポルコめがけて突進してきた。
ニクラはナイフを構えて、ポルコの前に立とうと動いたとき、かみつきのひたいに、ずばっ!っと、2本の矢が刺さった。
馬車の上からぱっぱっぷすが2本同時に矢を放ったのだ。
ぱっぱっぷすは素早く次の矢を構えると、今度は首に2本命中させた。
かみつきは、ぐるるるるるる!と痛みの声をあげながら、立ち上がって天を見上げると、ドサリと後ろに倒れてしまった。
ぱっぱっぷすはすぐさま馬車の上からジャンプしてポルコとニクラを飛び越えると、起き上がろうとして動いているかみつきの上に馬乗りになった。
ぱっぱっぷすはかみつきの頭を掴むと目にも留まらぬ速さでナイフで首をかき切った。
首からはおびただしい量の血が吹き出して、かみつきはすぐに絶命した。
かみつきが馬車の前にあらわれてからわずか1分たらずの間だった。
呆然としながらその様子を見てたニクラとキラに、ぱっぱっぷすが言った。
おい、おまえら!見てないで手伝えよ!キラ、丸木の器を持ってこい!早く!
丸木の器とは、木をくりぬいて作ったボウルである。
キラは血の気の引いた真っ青な顔でうろたえながら、あわててぱっぱっぷすのバックパックから器を出してぱっぱっぷすに渡した。
ぱっぱっぷすはかみつきの首から流れ出る血を器で受けた。
それから、ニクラとキラに手伝わせながら、かみつきのおなかを切り裂いて、中身を出した。大きな葉っぱを何枚も地面にしいて、そのうえにひとつひとつの内臓を置いていった。
ぱっぱっぷすの動きはとてもきびきびとして素早かった。
葉っぱの皿に乗せられた大人の頭ほどもある大きな心臓はまだどくどくと脈打っていた。
ぱっぱっぷすは、ニクラに、右足を持て!とか、キラに、頭を抑えろ!とか、次々に指示を出しながら、どんどんかみつきの毛皮を剥ぎ、肉を切り分け、部位ごとに並べていった。
ふたりにとって、かみつきのような大きな生き物を殺して、解体するというのは、とても辛い作業だった。
とくにキラは恐ろしさで身体がこわばって、手が震えていた。
でも、顔も腕も血や脂まみれにしながら、真剣な目で丁寧に肉を選り分けているぱっぱっぷすから、命をもらう者の真摯な姿勢が伝わってきた。
そこには命を食べて生きる現実があった。
だから、キラは吐き気をおさえて必死になって手伝った。
ぱっぱっぷすは木の棒を組み合わせて船の帆のような骨組みを作ると、部位ごとに分けた肉をひとつひとつ串に刺して、その骨組みに干した。
3人は長い時間働いて、やっと全ての解体と肉の分割を終えた。
作業が終わったときには、もう夕方近くになっていた。
お昼も食べないで作業したので、3人ともおなかがぺこぺこだった。
さあ!食おう!!
ぱっぱっぷすはそう言うと、ひとつの肉片を生のまま口にひとつ放り込んで、大きな肉のかたまりを3つ焼き始めた。
油がしたたって、パチパチと火花が散った。
さすがにぱっぱっぷすも疲れたようで、3人はあまり話すこともなく、焼きあがった肉を食べた。
キラとニクラは、肉を食べながら、思った。
きっと今、かみつきの赤ん坊は腹を減らせて母親の帰りを待っているだろう。
かみつきは赤ん坊を守るために、ニクラたちを攻撃したのだろう。
そして、ぱっぱっぷすはニクラとキラとポルコを守るために、そして、かみつきを食べるために、かみつきを殺したのだ。そして今、キラとニクラはかみつきの肉を食べているのだ。
キラとニクラにとってこの経験は大きな意味を持った。
この夜、テントの中で横になって眠れないで宙を見ているとき、生きること、死ぬこと、殺すこと、食べること、が、じっと、ふたりの身体に染み込んでいった。
せっかくコメントしてくれて、申し訳ないんだけど、ここにはあまりそうゆう残酷な事件のこととは書かないでほしいです〜。。
おれ、そうゆうの聞いたり読んだりするだけでだいぶ落ち込むので。。
お願いします。
暗澹たる気持ちになりました。1匹は脚を骨折して入院中。骨折した子は自分も激痛だったろうにもう一匹の体をずっと舐めていたんだって・・・。自分のストレス(?)発散のためだけに小さな生き物の命を奪うような人間はこの世界に生きる資格はないと思う。食べるために殺すのとは全く違う。