Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


キラとニクラの大冒険 (24)

ぱっぱっぷすが叫ぶと、魔物は大量のよだれをぼたぼたと垂れ流しながら、ぱっぱっぷすのほうに振り向いた。
ぱっぱっぷすは魔物の顔が自分に向いた瞬間、もう一度渾身の力でモリを放った。
モリは魔物の顔と腕の間に突き刺さった。
しかし魔物は大きな叫び声をあげながら、ぱっぱっぷす目がけて腕を振り回した。
ケガを負っているぱっぱっぷすはそれをよけられるほど素早く動けなかった。
巨大な爪がぱっぱっぷすの目前に来た時、ニクラがぱっぱっぷすに突進しなが飛びついた。ニクラはぱっぱっぷすを抱きかかえながら、間一髪で魔物の爪をかわした。

すると、魔物はすぐにすごい速さでしっぽを振って攻撃してきた。
しっぽはぱっぱっぷすとニクラのふたりの体に当たり、吹っ飛ばした。

キラはあわてて倒れてるふたりに駆けよった。
ニクラはすぐに立ち上がった。
ニクラはすごい速さで飛んでくるしっぽに気がついたとき、とっさに自分から後ろへ飛んで、衝撃をやわらげていたのだ。しかし、まともに攻撃を受けたぱっぱっぷすは吹っ飛んだ衝撃で気を失ってぐにゃりと地面に倒れていた。
ニクラとキラはあわててぱっぱっぷすの身体を引きずって必死に逃げようとした。
しかし、魔物はまたすぐに3人を目がけて攻撃してきた。
口を大きくあけて、3人をまるごと食べようと噛み付いて来たのだ。
ぱっぱっぷすに気を取られていたニクラとキラが気づいたときには、もう魔物の口はすぐそこに来ていた。
ニクラとキラは巨大な口が目前に迫っている恐怖で身体が固まってしまった。

もう食べられてしまう!!!!と、思ったその瞬間、突然、魔物は糸が切れたように横向きに倒れた。

どどどどーーーーーおん!!!!

と、大きな音と共に、下敷きになった木々がバキバキと折れて、大量の砂ぼこりが舞った。

魔物は、グルグルグルグル、と喉の奥で鳴きながら、地面の上でのろのろと立ち上がろうとしている。でも、すぐによろめいてまた倒れた。
倒れてもまだ意識はあるようで、ぎゃぱっぎゃぱっ!と、おかしな音を出しながら、しっぽをぐねぐねと動かした。

ニクラとキラは呆然とその様子を見ていた。

すると倒れている魔物の口が急に、ぐっぱあ!とげっぷのような音を出しながら大きくあいた。
口の中はのどの奥まで丸見えになった。鋭い歯がのどの奥までずらりと列になって並んでいた。
すると、暗いのどの奥から、ちいさなちいさな緑の子豚のような精霊が、よいしょ、よいしょ、と、出てくるのが見えた。
精霊は口の中の鋭い歯をよけながら歩いてきて、ぴょんっ、と地面に飛び降りた。
それから、精霊が5人、同じようにして口の中から順番に出てきて、二クラとキラの前に並んだ。

精霊のひとりが、

ぴっぷ、つー、ふりーと、くるまち。

と、ふたりに言った。

苦労したけど、何とかなったよ。

と、言ったのだ。

どうやら精霊たちは幼いときのキラを助けたように、その生き物の体内に入って命を救うこともできるけど、その反対に命を奪うこともできるようだった。
しかし、そのときのニクラとキラにはなにがなんだかわけがわからなかった。

精霊たちはとても疲れている様子で、なんだか緑の色が濃くなっているように見えた。
彼らは、ニクラとキラがふうせんばくだんを止めてくれたから、ふたりを助けてあげたかった。と話した。

ニクラもキラも、まだなにがどうなったのかわかっていなかったけど、キラが言った。

ぷるっく、しんどれいつ、びーた?
(あなたたちはケガはないの?大丈夫?)

ぜうつぶるっく、にーな。

精霊は、わたしたちはケガをしない。と言った。

それから、精霊は言った。

うんとい、うんとい、ちかみん、びーつ。

(命を奪ったけど、この魔物はまだ動く。)

つぇっぺる、ぽこぽこ、にゃ、き、ち。

(魔物は命が無くなっても憎しみの力で動く。)

ぷーすっくる、ぶとー、てれてれ。

(だから、魔物が起きる前に逃げて。)

精霊たちはそう言うと、身体の色がどんどんと濃くなって黒くなって、固まり、動かなくなってしまった。
精霊たちは魔物の腹の中ですべての力を使い果たしてしまったのだ。
それからすぐに、精霊たちは、みるみるうちに消えて無くなってしまった。

すると、魔物から、ぐぱぐぱという音が聞こえてきた。
魔物はまだ口を大きく開けて倒れたままで動かないけど、いつまた動き出すかわからない。

ニクラとキラは急いでぱっぱっぷすを馬車に運ぼうとした。
けれど、気を失ってぐにゃりと身体の力が抜けたぱっぱっぷすはとても重くて早く運べなかった。
ニクラはキラに、馬車をこっちに持ってこよう!と言った。
ふたりは走ってポルコのところへ行き、ハーネスでポルコと馬車をつなぎ、ニクラがゼッコで合図すると、ポルコは駆け足で走り出した。
馬車をぱっぱっぷすの近くに止めて、ふたりは急いでぱっぱっぷすをなんとか馬車に担ぎあげた。
ニクラは、すぐに馬車を出した、そのとき、背後で魔物が動き出す音が聞こえた。
魔物は、ごぷっ、、ごぽっ、と腹の中から音と一緒に土色のドロドロとしたものを口から吐き出しながら、のろのろと起き上がろうとしている。
ものすごい臭気が辺りに立ち込めた。

キラは後ろを振り向いてニクラに言った。

魔物が起きるわ!

ニクラはポルコにもっと速くとゼッコで合図を出した。

ポルコは力の強い馬ではあったけれど、速く走ることは苦手だった。
それでも、ポルコは精一杯走った。
ポルコはふたりを守りたかった。

ポルコはぱっぱっぷすの家から、もと来た海へ続く道へと走った。
魔物はもうほとんど立ち上がって、苦しそうに口から食べたものをごぷごぷと音を出して吐き出しながらニクラたちを探していた。
魔物は馬車の走る音に気づくと、猛然と馬車に向かって走り出した。
大きくて太い足で木などおかまいなしにぐしゃぐしゃに踏みつぶしながら、どっしん!どっしん!とすごい勢いで突進してくる。
ポルコは必死に走った。


ニクラとキラは荷台を軽くするために、テントと2つのすばるからくりを荷台から落とした。
ポルコはそのおかげで少しは速く走れたけれど、魔物はどんどんその距離を詰めてきた。
もう少し走れば、道に出る。
もう追いつかれそうになってきたとき、誰も気づいていなかったけど、ニクラの内ポケットからあめしらずがはい出して、キラの肩によじ登っていた。
あめしらずはキラの肩にじわじわと入り込んだ。緑の精霊のように体内へテレポートして入り込むのではなく、あめしらずは生き物の身体の一部に同化することができた。
キラの身体に同化したあめしらずはキラにメッセージを送った。

左へ!

キラはどうしてその声が聞こえるのかわからなかったけど、なぜかその声が正しいものだと感じて、ニクラに叫んだ。

ニクラ!左へ行って!

ニクラはなぜキラが左というのはわからなかったけれど、とっさにポルコにゼッコで左へ行くように指示を出した。

急に左へ曲がった馬車に魔物はついて行けずにそのままの勢いで真っ直ぐ森の中を突進して行った。
ポルコは木の枝や地面の石で身体中に細かい切り傷を負っていたけど、かまわずに全力で走った。
背後では急に曲り切れなかった魔物が怒りの咆哮をあげながら、大きく迂回して、こちらへ向かってこようとしていたけど、馬車との距離はだいぶ離れた。




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