Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


キラとニクラの大冒険 (22)

キラもニクラもこの時はわかっていなかったが、ふうせんばくだんを作るあの巨大な機械を動かしていたとんがりぼうしは大きな力を持っていた。
そのとんがりぼうしのおかげで白いいきものたちは、魔物たちから襲われることが無かったのだ。
しかし、とんがりぼうしが消滅したことで、森のバランスは崩れ、魔物たちは前よりもずっと活動的になり、白いいきものたちも襲われるようになった。
そして、魔物たちは夜も昼も関係なく動くようになってしまっていた。


ニクラとキラは、なんで白いいきものたちが黒い魔物に襲われ、朝に魔物がぱっぱっぷすの村を襲ってきたのか、はっきりとはわからないけど、ふたりがふうせんばくだんを止めたことが原因だと思った。
ふたりはそれをぱっぱっぷすに話した。

ぱっぱっぷすは言った。

そのふうせんばくだんとか、よくわかんねぇけどよぅ、でも、とうちゃんとかあちゃんが死んだのは、おまえらのせいじゃねぇ。
黒い魔物はもっと前からおれたちを襲ってたし、それに、おまえらは精霊や森のためにやったんだ。とうちゃんが、精霊と森はとても大事なものだ。守らないとダメだ。って、いつも言ってたもんな。

ふたりはぱっぱっぷすになんと言えばいいのか、わからなかった。
ただ、キラが、ごめんなさい。と、言った。

黒い布に覆われた部屋は、まだ夕方なのに、真っ暗になった。
ぱっぱっぷすはランプを持ってきて明かりを灯した。

おまえら、今夜はここで寝るか?
布をかぶせたから、黒い魔物に襲われないと思うけどよぅ。

ニクラとキラは、黒い魔物が少し怖かったけど、今から出発してもすぐに夜になるからここに泊まることにした。
ニクラは思い出して、キラに言った。

そうだ、ポルコに土を塗らなくちゃ。

ニクラとキラはバルバルの木からおりて、ポルコの身体に土をなすりつけた。
すると、なにか音が聞こえた。

くるくるくるくる。。。

ポルコのおなかがなっているのかと思ったけど、そんな音ではなかった。
でも、音はたしかにポルコのおなかから聞こえる。
ニクラはポルコのおなかに耳をあてた。
キラは、ポルコ、どうしたの?だいじょうぶ?と、ポルコに声をかけた。
ポルコのおなかから聞こえる音は、身体の中を移動しているようだった。
やがて、音はポルコの顔のあたりに移動した。
ポルコはくすぐったそうに、ぶるるっ、と鳴いて、顔を少し震わせた。
すると、ポルコの鼻の穴から、ぴょーん、と、なにかが飛び出した。
地面に落ちたそれを見ると、とてもちいさな生き物だった。
身体が薄く透けた緑色で、2本足で立つ子豚のような姿をしていた。

その生き物はキラを見て、話しかけた。

ざっぱ、じおじお、ぐりんぼ、てけてけ、まんがんぼ、めーけ。

精霊の言葉だった。

キラは顔を輝かせて、その緑のちいさなちいさな子豚のような生き物に言った。

てってぐりんぼ!
(あのときの精霊なのね!)

キラはニクラに言った。

ニクラ、このこ、わたしたちにふうせんばくだんを止めてって、お願いした精霊なの!ありがとうって、お礼を言いにきたのよ!

そうなんだね!それで、精霊たちは今はだいじょうぶなの?

キラは精霊に聞いた。

てけてけ、まがんぼ、とっぷる、ぐりんぼ?
(そのあと、精霊たちはだいじょうぶ?)

精霊は答えた。

るる、じっぷぜっぺ、ぷりーてっつぅらっけ。

キラはニクラに言った。

うん、おかげさまで、みんな元気になったって。

キラは精霊に言った。

くゅー、てらてら、ぼぼぼ、ぃえっつぇ?
(どうして、馬のおなかに入っていたの?)

精霊は答えた。

けーしー、ちょっぽ、ぼぼぼ、やこぶ、ゔぃーゔぃいーぃーー。
おぅ、わーわーわー、ふいぷいふいぷい、ままままままま、ぐり、ぶいぷい、とむちん。

精霊は、お礼を言いたかったけれど、ふうせんばくだん工場が無くなったあと、白いいきものたちが力を無くした途端に、黒い魔物や他の邪悪な魔物たちに襲われて森の中が混乱したので、なかなか会いに来れなかった。と言った。
白いいきものたちはみんな無事に逃げたらしい。

ふーももも、ぼぼぼぼ、ちゃっぷる、ぐりんぼ、ずずっ、てるちぱかぱかぱか、しんしん、きーす、えつぺっ、ぶ、ぶぶぶ、たろたろ、ままま、じゅー、でいでい。

だけど、今、君たち近くに黒い魔物がいて、魔物はあなたたちをねらっているから、それを伝えに来たんだ。ぼくたちは生き物の体内に移動することができる種類の精霊なんだ。

キラは驚いて聞いた。

ぺっつぇる、けっぺ、み、ぐりんぼ、すーぷ、ちゅりん?

(もしかしたら、あなたはわたしが小さなときに助けてくれた精霊なの?)

精霊は答えた。

み、てんめい、ぐりんぼ、しちゃしちゃ、えええぇいいいぃ、てむてむ、ぱちょ、ゔぉるふ、きら。

キラを助けたのはぼくでもあり、ほかのみんなでもあるんだ。ぼくたちの種類の精霊はひとつの記憶や意識を共有するので、ひとりひとりでもあるけど、みんなでひとつの存在でもあるんだ。

ぜっぺ、きーす、ごー、ぱかぱか、ちゅう、ぅぎゃ、ぼぽぼぽ、ぴーち、まーえい、ぎゅち、じーまじーま。ぷるっす、きまわ、ちちしちしし、けぺ、ふこぷこ。

黒い魔物は今、君たちの近くにひそんでいるよ。今夜、この家を襲うつもりだよ。ぼくたちはきみたちを守る。でも、魔物の力は強く、ぼくたちではどうすることもできないかも知れない。
早くここを離れたほうがいいよ。

ちょうどそのとき、バルバルの木の上から、ぱっぱっぷすの声が聞こえた。

おーぅい、おまえら、なにやってるんだ?もうそろそろ暗くなるから、家に入れよう!

ニクラは上を見上げて、ぱっぱっぷすに言った。

今、精霊が黒い魔物のことを教えてくれていたんだよ。ぱっぱっぷすもおりておいでよ!

ぱっぱっぷすは縄はしごをおりて、緑のちいさな精霊を見て言った。

おっどろいたなぁ!
この精霊はおれが小さいときはたまに見たけど、さいきんはすっかり見ないから、もういなくなってたのかと思ってたよ!
おまえら精霊の言葉話せんのか?

ニクラは答えた。

うん、ぼくは話せないけど、キラが話せるんだ。

ぱっぱっぷすは緑のちいさな精霊をまじまじと見ながら言った。

そうか、おれも少しだけど、話せるんだ。ほんのちょっとな。かあちゃんが教えてくれた。

み、ぱっぱっぷす、てらてら。
(おれ、ぱっぱっぷす、よろしくな。)

ぱっぱっぷすは、そう言ってぱっぱっぷすは精霊に笑いかけた。

精霊はぱっぱっぷすにキラに言ったことと同じことを言った。
ぱっぱっぷすは途中でわからない言葉があると、キラに聞きながら真剣に話を聞いた。

今夜ここに魔物がやってくるという話を聞き終えると、ぱっぱっぷすの目つきが変わっていた。目には怒りが満ちて、奥歯をぎゅっとかみしめた。

ぱっぱっぷすは固い表情でふたりに言った。

そうか。おまえら危ないから、今すぐどっかに行け。その生き物、ポルコだっけか?そいつに乗って早く行ったほうがいい。

キラが聞いた。

ぱっぱっぷすはどうするの?

ニクラも言った。

ぱっぱっぷすも危ないから、ぼくらと一緒に行こうよ。馬車にはもうひとりくらい乗れるよ。

ぱっぱっぷすは言った。

いや、おれは行かねえ。ここで黒い魔物を迎え撃つ。やつが今度来たら、必ずとうちゃんとかあちゃんのためにあいつを殺すって決めてんだ。
おまえらがいたから、布を家にかぶせたけど、ほんとは今日は布をかぶせないつもりだったんだ。

ぱっぱっぷすはそう言うと、ひとりでさっさと縄はしごを登って、家に戻ってしまった。




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