キラとニクラの大冒険 (19)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/10/08 01:39:38
道はすこしづつ下り坂になっていった。
昨日ほら穴へ行く途中に岩の上から見たとき、ずっと遠くの森の終わりに海が見えたから、これからはずっと下り坂なんだろう。
ポルコは坂道をゆっくりと下った。キラとニクラは荷台にゆられながら、あたりを眺めていた。
あれから3日が経って、心の中にはやっぱり白いいきものたちのことがあったけど、今はふたりともそれを話さなかった。
ニクラは思い出して、木箱を開けてあめしらずの様子を見てみた。
こないだ、あれほどすごいことをしたあめしらずは大丈夫なんだろうか、と気になったのだ。
あめしらずは木箱の中で、小さく丸く白っぽくなっていた。
きりふきで水をふきかけてやると、あめしらずはすこし動いてゆるゆると平べったく形を変えた。
ニクラは大丈夫そうだと思って、安心した。
キラもそれを見て、にっこり笑った。
空はよく晴れていて、大きな白い雲が連なって上空をごんごんと風に流されていた。
途中、お昼ごはんを食べるために、馬車を止めた。
ポルコの手綱やハーネスを外すと、ポルコは草をはんでお昼ごはんを食べはじめた。
ニクラとキラも木陰に座って、ベーコンとチーズのサンドイッチを食べた。
すると、なにやら少し遠くで、かーん、かーん、と響く音が聞こえる。
ニクラとキラは顔を見合わせて、なんだろう?と首をかしげた。
音は一定のリズムでしばらく続き、止んだ。
お昼を食べ終わって、ふたりが出発しようと、ポルコにハーネスをつけているとき、また音がなりはじめた。
それから、坂を下っていくにつれて、音はじょじょに大きく聞こえるようになっていった。
どうやら、キラとニクラは音のするほうに進んでいるようだった。
音はしばらく続いて、止んで、またしばらく続くのを繰り返していた。
きつつきにしては音が大きいし、滝や川の音でもなかった。
進んでいくにつれて、また別の音も聞こえてきた。
かーん、かーんという音がしばらく続いたあとに、どしーん、と何かが倒れる音も聞こえてきた。
ニクラはキラに言った。
きっと、木こりが木を切っている音じゃないかな?
でも、町から海へ続く森の中に誰かが住んでいるなんて話は今まで町の誰からも聞いたことがなかったし、セイゲンさんもそんなことは言ってなかったよね。
音はもうだいぶ近くなっていた。
どしーん、という音の前に、めきめきめきめきがさがさ、という音も聞こえるようになった。明らかに大きな木が倒れる音だ。
森には馬を食べてしまう魔物の他にも、赤目や棒人といった様々な危険な魔物や生き物がいるとセイゲンさんが言ってたから、ふたりは緊張しながら、あたりを見渡した。
どうやら道の左手の森の奥で音がなっているようだった。
また、めきめきどっしーん!と、かなり大きな音がした。
ふたりは驚いて、音のするほうを見ると、その辺りの10本くらいの木がすでになぎ倒されているように見える。
ふたりは早くこの場を立ち去った方がいいかも知れない、と迷っていると、木々のすきまからちらっと生き物が動くのが見えた。
大きさは分からないけど人か猿みたいにも見えた。
キラは怖くなって、ニクラ、早く行こう。と言った。
ニクラはどんな生き物が何をやっているのか、興味もあったけど、キラの言うとおり危険だと思った。
うん、そうだね。ポルコに急いでもらおう。
ニクラはポルコにゼッコ(馬に指示を出す口の鳴らし方)で、速く進むように合図した。
そのとき、音のした方から誰かが呼んだ。
おうい、待ってくれよぅー!
見ると、さきほどちらりと見えた生き物が走ってくるのが見えた。
まだだいぶ遠くだし、木々に隠れてよく見えないけど、どうやら人のようだった。
ニクラとキラは顔を見合わせて、どうしようか?と迷った。
すると、ポルコが合図もしてないのに勝手に止まった。
ニクラはあわててポルコに急いで出発するようにゼッコで合図を出したけど、ポルコは動かなかった。
おーーーーぅい!待ってくれよーぅ!!
声はすぐそこに来ていた。
あの距離をこんなに早く近づいてこれるなんて、異常だった。
ニクラはあわてながら何度もポルコにゼッコを繰り返したけど、ポルコは動かなかった。
ふたりは恐る恐る振り返ってみると、そこにはふたりと変わらないくらいの背たけのこどものような奇妙な人間がいた。
おかしなことにこどもくらいの身体の大きさなのに、ヒゲがボウボウに生えていて、黄土色の髪の毛が爆発してるようにボサボサで、腕や脚も太く筋肉が異様に盛り上がっていて、日焼けしたような肌が茶色くて、ところどころ日焼けで皮がめくれたようになっていた。
彼は、ぜぃぜぃと息を切らしながら、馬車に近づいてきた。
に、逃げようとしなくても、、いいじゃないかよぅ、、
ニクラが恐る恐る言った。
君は誰だい?こんなところで何をしてるんだい?
彼はまだ息苦しいようで、
そ、それより、み、水をくれないか?
キラは怖かったけど、持ってきた陶器のカップに水をそそいで渡してあげた。
すると、ぐびぐびとあっという間に飲み干して、
もういっぱいおくれ。と言った。
もういっぱい飲んでやっと落ち着いたようで、カップをキラに返しながら、堰を切ったように話し始めた。
おれ、ぱっぱっぷすっていうんだ!とうちゃんと同じ名前だ。とうちゃんとかあちゃんは黒い魔物に喰われて死んだ。だからおれはひとりぼっちなんだ。黒い魔物に家を壊されたからさ、今住んでるのよりもっと頑丈な家を作ろうと思ってさ、それで木を切ってたんだ。そしたらさ、へんてこな乗り物に乗ったおまえらが見えてさ、あわてて走ってきたんだよ。だってさ、おれったら村のやつらの他に自分とおなじ生き物と会うのがはじめてなんだ。だからぜったいに話したいと思ったんだよ!おまえらはなんて名前だ?
すごく早口で話しているけど、どうやら、悪いひとじゃなさそうなので、キラとニクラは安心した。
キラが言った。
わたし、キラっていうの。
はじめまして、ぱっぱっぷす。
ニクラも言った。
ぼくはニクラ。君はこの森でずっと暮らしているのかい?
ぱっぱっぷすは言った。
きみじゃないよ、ぱっぱっぷすだ。うん、おれ、この森で生まれてずっとこの森に住んでる。
でも、こないだとうちゃんとかあちゃんが死んだから、ずっとさみしかったんだ。だから、おまえたちと会えてすっごくうれしいんだ。なあ、おまえたちはどこに行くんだ?この生き物はなんだ?それにおまえたちなんでへんな身体なんだ?細いしへんな色だ。それに話す言葉もへんだ。
ぼくたちは海へ行くんだ。海でイランっていう宝物を探すんだ。
え~と、それから、ぼくたちはまだ12歳でこどもだから身体が細いんだよ。あと、ぼくたちの産まれた町では、ぼくたちとおなじ身体の色の人たちがたくさんいて、ぼくたちと同じ言葉を話すよ。だから、ぼくもぱっぱっぷすのような身体の色のひとと会うのははじめてなんだ。
ニクラもぱっぱっぷすにつられて、少し早口で話した。
うん?その生き物は、ウマっていうのか?ポルコっていうのか?どっちだ?
読んでいただいて、ありがとう〜!
そうですね、もっとたくさん色々出てきます〜(^-^)
また気が向いたら、読んでみてください〜。
途中色々なキャラクターが出てきて面白いです♪
これからまた、魔物とか危険な生き物が出てくるんでしょうね・・・あめしらずのように、ぱっぱぷすが今後色々助けになってくれるのかな、と思います^^