キラとニクラの大冒険 (17)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/10/04 11:57:58
キラとニクラはどうにか精霊たちの思いを彼らに伝えたかった。
キラは頭の中で精霊と話したときのことをできるだけ強く思い出した。そうすれば、きっといきものたちに精霊の気持ちが伝わると思った。
するといきものたちは、ふたりに頭の中で伝えた。
あなたたちの気持ちも精霊たちの気持ちもよくわかります。
でも、わたしたちが生きるためにしかたのないことなのです。
ごめんなさい。
キラはどうすることもできなかった。
ニクラもどうしたらよいか、わからなかった。
8人のいきものたちはすこしためらったようにふたりにもう一度言った。
どうか、帰ってください。
そのとき、ニクラが気づいた。
とんがりぼうしになにかがくっついている。
ニクラの外套の内ポケットにいたはずのあめしらずがいつのまにかとんがりぼうしにくっついているのだ。
よく見ると、外側にくっついているのではなくて、透明な三角ぼうしの内側に入り込んでいた。
あめしらずの青い光は揺れるように放たれていた。
そのことに気がついたいきものの1人がたいへんにあわててとんがりぼうしに近づいた。
ほかの7人のいきものたちもそれに気がついて、言った。
触れてはいけない!!
その言葉はとても強くキラとニクラの頭の中にも伝わってきた。
とんがりぼうしのなかであめふらしは形を変えた。
とんがりぼうしと同じ形になったのだ。
とんがりぼうしの中がきゅうきゅうにいっぱいになるまで、あめしらずはそのからだを大きくふくらましていった。
8人のいきものたちはとんがりぼうしに触れることが出来ないらしく、とても不安そうにあめしらずを見ているしか、ほかにどうすることもできないようだった。
キラとニクラに、8人のいきものたちの心のなかがめちゃくちゃに混乱していくのが伝わってきた。
やがて、とんがりぼうしいっぱいに隙間なくふくらんだあめしらずは、青から赤に光を変えた。
とたんにとんがりぼうしからゆるゆると細い煙が立ちのぼり、すこしづつとろとろと溶けていった。
やがて、とんがりぼうしは煙とともに消えて無くなってしまった。
あめしらずを連れてくるなんて。。。
キラとニクラの頭の中に、いきものたちの絶望的な気持ちが伝わってきた。
いきものたちの心のなかで何かが決壊したのか、このとんがりぼうしのひみつがキラとニクラの頭の中にどっと流れ込んできた。
いきものたちはもともと地球のいきものではなくて、はるか昔に、遠い星から移り住んできた。
いきものたちが住んでいた星では他の生き物たちの残虐な争いが増えて、地上に恐怖が蔓延したために、住めなくなってしまったのだ。
最初に地球に移り住んできたとき、地球にはまだ人間はいなかった。
でも、さるたちが火を使うことを覚え始めたとき、いきものたちは不安を覚えた。
もしかすると、このさるたちは将来巨大な暴力を生み出すかもしれない。
そう心配に思ったいきものたちは、またいつでも他の惑星に移り住めるように、自分たちにひつような種類の空気を作るためのふうせんばくだん工場の原動力となるとんがりぼうしを作った。
完成したとんがりぼうしは、もうだれも触れてはならない神聖な力を持った。
とんがりぼうしは離れた場所にあるいくつかのふうせんばくだん工場を同時に動かすことができた。
精霊になり、地球の森や湖で自然を守り、共存することを選んだのだ。
だから、あめしらずにとって、自然や他の種類の精霊たちを守るために、ふうせんばくだん工場の原動力となるとんがりぼうしを壊すことはあたりまえのことだった。
だから、いきものたちはあめしらずをぜったいにとんがりぼうしに近づけないことを細心の注意で気をつけていた。
ところが、ニクラもキラも、あめしらずのことをまるで考えていなかったので、いきものたちはニクラの外套にあめしらずが入っていることにだれも気がつかなかった。
8人のいきものたちはそこに立ちつくしていた。
もう彼らからは灰色の空虚な心しか伝わってこなかった。
キラとニクラもあまりのことに驚いて、ぼうぜんとしていた。
そして、8人のいきものたちはふたりのほうを見もせず、何も言わず、外へ出ていった。
キラはその背中に向かって頭の中で言った。
ごめんなさい。。
でも、いきものたちは何も答えずそのまま階段をのぼっていった。
部屋に取り残されたキラとニクラはなにも言えなかった。
ニクラはとんがりぼうしのあったところの地面に転がって丸くなってるあめしらずを外套の内ポケットにしまって、キラに言った。
ぼくたちも外へ出よう。
長い階段をのぼり、機械の足元へ出ると、そこにはもうだれもいなかった。
ニクラとキラは縄はしごを登り、来たときのほら穴の入り口に立った。
ふたりともうしろを振り返って機械を見た。
機械はもう湯気を立てておらず、ただの巨大な灰色の抜け殻のように見えた。
ふたりは長いほら穴を戻って、もと来たはげた地面の真ん中に出た。
ほら穴の途中に住んでいたいきものたちの家族に機械が止まったことを知らせに行こうとも思ったけど、なぜかふたりともその気持ちになれなかった。
二人はしばらく無言で元来た道を小川に沿って戻り、そして、キラはニクラにつぶやくように言った。
わたしたちはほんとうに正しいことをしたの?
ニクラはわからなかった。
わからない。ぼくも彼らのしていたことは間違っていると思う。でも、いったい、だれが間違っているとか、正しいとかなんてことを決めることができるんだろう。
それからふたりはまただまって、森の中を歩いた。
ポルコが待ってる道まで戻ったときには、もうすっかり日が暮れて、真っ暗になってしまっていた。
ポルコは道からすこし離れた木の陰でうずくまって寝ていた。
ふたりは荷台からテントを出して、ポルコにまた土をなすりつけてからテントに入り、横になった。
しばらく眠れなかった。
ニクラ、もう寝た?
ううん、なかなか眠れないんだ。
わたしたちはあめしらずが三角ぼうしを壊すことを知らなかったわ。でも、わたしたちもふうせんばくだんを止めようとしていたし、結局それができたわ。
ねえ、それ以外に方法があったと思う?
ニクラはしばらく考えてから答えた。
きっとあったのかもしれない。だけど、その方法は彼らをもっともっとがまんをさせる方法なんだと思う。
すでに彼らはきっと地中でしか生きられなくなっていた。
だからぼくは彼らがもうこれ以上耐えられないと言ったのは、本当にもう、限界だったと思うしその気持ちが伝わってきた。
だから、もう彼らにとっての方法は他の惑星に移るしかなかったんだと思うんだ。
ぼくにはどうしたらよかったのか、本当にわからないよ。
キラとニクラはまた黙って考えた。きっと考えても答えの出ることじゃないとわかっていたけど、考えずにはいられなかった。
読んでいただいて、ありがとう〜(^-^)
はい、そうだと思います。
いろんな出来事は離れて存在しているのではなくて、なんらかの形で繋がっているのが、この世界であり、自然であるとおれも思います。
はい、本当におっしゃる通り、この小説に限らず、実際にもそうゆうことって多くあって、誰が正しいなんてことを決められるのだろう?と考えることがあります。
みんなが共存できね方法があるといいのだけど
いろんな出来事がきっと繋がってるんだね
難しいテーマですね・・・