キラとニクラの大冒険 (14)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/09/30 09:29:36
入って少し進むと、穴はすぐにまた急激に広くなっていて、大きくて、まあるい空洞になっていて、どこからか光がさしこんで明るかった。
そこがつきあたりだった。
ふたりは空洞に出ると、とても驚いた。
空洞のなかには奇妙ないきものがいたからだ。
ニクラより少し小さく、キラと同じくらいの背丈のいきもので、大きくてまるい頭をしていて、ぜんしんに白い毛をびっしり生やしていた。
空洞のなかには見たこともない白くてやわらかそうな素材の家具のようなものがいくつかあった。
いきものたちは2本足で立ってこちらを見て固まっていた。
ひとりではなくて、4にんいた。
キラと同じくらいの背丈のと、もう少し小さいのがひとり。
それから、もっとずっと小さいのがひとりと、さらに小さいあかちゃんが2番目におおきないきものに抱っこされていた。
目がとてもちいさくて黒く、まるいかおの真ん中にあった。そのしたにねずみのような小さな鼻があって、口からは小さな牙が出ていた。
みんなほとんど同じ顔に見えた。
4にんのいきものたちは、おびえているように見えた。
ニクラは勇気を出して話しかけてみた。
とつぜん入ってきてごめんなさい。ぼくたち、けっぺるというところを探しているんです。
4にんのいきものはなにも答えないで、ただニクラを見ていた。
ぴんとはりつめたくうきの中で、あかちゃんのいきものが、くしゃみをした。
こんどはキラが村の言葉で話しかけてみた。
みーまー、ぶぶぶ、けっぺる。
(わたしたち、けっぺるをさがしているの。)
しかし、やっぱり4にんのいきものはなにも答えないで、キラを見た。
すると、いちばんおおきないきものがキラとニクラに近づいてきた。
ふたりとも驚いてびくっと固くなった。
ふたりのすぐ近くにきたとき、キラとニクラの頭のなかにいきなり写真が現れた。
ふたりの頭のなかで、写真は動いた。
最初の写真は、地上のどこか、色とりどりのきれいな花がたくさん咲いている草原があって、マシュマロみたいなフワフワしている白い建物がたくさんあった。
そのうしろには、鋭く壮大な山々が青く連なっているのが見えた。
少しすると、写真は動きはじめた。
白くてフワフワした建物にはいきものたちが暮らしていた。
白い建物がたくさんある後ろにひときわおおきなドーム型の白い建物があって、たくさんのいきものたちが忙しそうに出入りしていた。
写真は動き、ドーム型の建物の中を映し出す。
ドーム型の建物の中でも大勢のいきもたちが忙しそうに働いていた。
ドームの真ん中には巨大な機械がある。
機械には幾千もの無数の小さな手が生えていて、せかせかとそれぞれが規則正しく動いていた。
機械のてっぺんには銀色に光る金属の球体があり、パイプが8方向に突き出ていた。
パイプからは、青い液体がドロドロと流れ出ており、球体のすぐ下にあるかくはん機でかき混ぜられている。かき混ぜられた液体は粘土状になって、すぐに無数の手によってこねられて青いかたまりに分けられる。
手によって、機械の中央に送られた青いかたまりは機械の内部へと入れられる。
さらに下方にはたくさんの金属の筒があって、その筒からつぎつぎと水色のふうせんがふくらんで出てきていた。
するとまた無数の手があわただしくそのふうせんを手のひらできゅっきゅ、と音を立てて磨いていた。
つるつるに磨かれた水色のふうせんたちはいちばん下にある透明の大きなコンテナに入れられた
つぎつぎと水色のふうせんでいっぱいになるコンテナをいきものたちがどんどんどこかへと運んでいた。
写真がまた動く。
いきものたちが水色のふうせんを空に飛ばしている
数多ものふうせんが飛ばされて、やがて点になり、見えなくなる。
ふうせんは地球を離れて、宇宙をただよう。
いくつかのふうせんは途中で壊れてチリになる。
しかし割れないで残ったふうせんたちはわくせいにたどり着く。
ふうせんたちはわくせいの地面におりて、じわじわと溶けていく。
ふうせんが溶けた場所にむくむくと白いキノコのようなものが生えてくる。
それはやがて大きく成長する。
人間の大人よりも少し大きくなったきのこたちは茎にある無数の放出菅から、濃い気体を放出している。
たくさんの白いきのこは地平線の向こうまで地面を覆いつくしていた。
また写真が動く。
水色のふうせんを作る機械の内部では黒い塊が強力な粉砕機で砕かれて、やがて液体にされる。真っ黒い液体は何度もろ過されて、茶色の液体と青い液体に分けられる。青い液体は水色のふうせんになるのだが、茶色の液体はパイプを通って排水溝に流される。
排水溝は地下を通って、湖まで続いていた。
茶色の液体は湖の底にドロリと泥濘して、少しづつ地面に吸収されていく。
そして、湖のまわりの木々は枯れ、生き物たちも死滅していった。その範囲はじょじょに広がっていき、やがて近隣の森すべてが死滅した。
そこで写真が終わった。
今、ふたりの目の前にいるいきものたちは写真で見たいきものとおなじだった。
ニクラとキラは同時に同じことを言った。
ふうせんばくだん!
ふたりは、このいきものたちは自分たちが作っているふうせんばくだんの危険をふたりに伝えようとしてることがわかった。
写真で見た風景はどこだかわからないけど、きっとこの近くでもふうせんばくだんを作る機械があって、木の穴にいた精霊はきっとそれを止めてほしいのだと思った。
ふたりはいきものたちに、ありがとう!ぼくたち、ふうせんばくだんを止めるよ!と、礼を言って、きた道を戻ろうとした。
そのとき、ふたりの頭のなかに、“気をつけて。”と、声が聞こえた。
彼らは写真を頭のなかに送るだけじゃなくて、言葉も送れるようだ。
ニクラとキラは振り向いて、頭のなかでもう一度お礼を言うと、いちばんおおきないきものと2番目におおきないきものが体をぷるぷるとこきざみにゆらしながら、微笑んだ。
ふたりはまた狭い穴の通り道を腹ばいでくぐり抜けて、さっきのところに戻った。
はい、彼らがふうせんばくだんを作っているのですが、その中に、これはいけないと思って別れた家族がいて、その家族に出会ったんです。
ちなみに、見た目もユニークで可愛いですよ(^-^)
ただ、かなり頭が良くて優れています。
頭の中に直接映像や言葉を送れるなんて、見た目はともかくすごい生物です。