キラは耳をすまして言葉を聞き取ろうとした。

。。。ざく、、ぶーぶーふらい、ちゅるぉ、おん、、がっがっが、、ぜっぜ、ぜっぜ、、、、くぷ。。

会話ではなくて、ひとりで誰かに向かって話しているような感じだった。

キラは途中聞き取れないところもあったけど、そのおおよその意味がわかった。

地球、生まれてきた、私たちの子孫、、悲しい気持ち、嬉しい気持ち、土の中

キラはその声から、悲しくてさみしいような感情を受けた。

ニクラ、わたし、言ってることがわかるわ。この人は何かを伝えようとしているのよ。きっと。

キラは穴から顔をあげてニクラを見て、言った。

なんだかとてもさみしそうなの。
わたし、話しかけてみるわ。

ぷろぷろ、せみ、どっつく、きら、ほーほー
(こんにちは。わたしはキラ、誰かいるの？)

すると穴の奥からまた声が聞こえた。

べーた、、、、あいらぶ、、ぶぶぶぶぶ
。。。すーぷ、すーぷ、すーぷ

小さな声だったけど、キラは聞き取ることができた。

僕、あいらぶ。お願い、お願い、お願い、、、

キラは話を続けた。

ぺったん、ちゃ、ころっく
(どうしたの？困っているの？)

するとまた小さな声で返事があった。

ぺぺぺぺ、、。きぃきぃ、ぜっぺ、ぜっぺ、、ひんとぅーる。。。

僕たち、土の中、中、腐る
と言っているようだ。

キラはもう一度聞いた。

えぺ、ぜっぺひんとぅる、わ、かつ、ぷーす、ぺったん、ぐりんぼ
(なぜ土の中が腐るの？あなたは土の精霊？)

すると、今度はもう少し声が大きく聞こえた。

。。。。ざっぱ、ざっぱ、、、、じおじお、ぐりんぼ。。。。

土の中に住む精霊だ、と言っているようだ。

キラは、はじめて精霊の声を聞いたので、驚きながら言った。

ぐりんぼ！みゆ、せぷ、ぷとぷと。
(精霊なのね！私たちに何かお手伝いできるかしら?)

すると、しばらく穴から声が聞こえなくなった。

キラは不安に思って、もう一度声をかけた。

てぺっつぇ、きー、すかー、にくら、どうむ、せぷ
(ここにニクラっていう私のともだちもいるの。きっとニクラも手伝ってくれるわ。)

少し待ってから、また穴から声が聞こえた。

。。。。わかわか、、、じゅ、じゅじゅじゅじゅじゅじゅ、、、、、、、、ぶるぶるじゅぺっつぇ。。。。。

キラはそれを聞いてあわててニクラに言った。

大変！土の中で精霊たちが死にかけているの！！ニクラ、どうしよう！

ニクラはキラの様子に驚きながら言った。

うん、たしか土の中に住む精霊は、人間が鉄砲を作るときの水銀で死んでしまうんだ。
きっとこの森の近くで鉄砲を作っているはずだよ！
ぼくも手伝うよ！

キラはそのことを精霊に聞きたかったけど、水銀なんて難しい言葉まではわからなかった。

えっちん、えっとん、しーぱ、せんどる、ちゃまんがい、ぷーぷー、ぐりんぼ。
(精霊たちにとってわるいものが土の中にあるのね。私たちはどうすればいい？)

すると、またしばらく待ってから、声が聞こえた。

どゅるばっは、まんがんぼ、、、、、てけてけ、、、、、、、、、、
。。。ゔぉーおーゔぉーおーぅおぅおぅお。。。。

キラは思わず自分の言葉で言った。

わかったわ！！

それから、言い直した。

ちゃっぷ！！

すると、今度はごく小さな声が穴から聞こえた。

。。。。ずーす、、、、、けっぺる、、、、、、

それからキラはしばらく耳をすまして、何度か呼びかけてみたけれど、それっきり穴から声は聞こえなくなった。

キラはニクラに言った。

ニクラ、私たち、ふうせんばくだんを止めなくちゃいけないわ！
そうしないと、土の中にいる精霊たちが死んでしまうの！

ニクラは聞いた。

ふうせんばくだんって、戦争のときに使われた風船爆弾のことかい？
でも、風船爆弾が戦争で使われたのは、もうずっと昔のことだよ。
今はもう作られていない

わたしもわからないけど、とにかくふうせんばくだんって言ったの。早くふうせんばくだんを止めないとみんな死んじゃうって！
それから、けっぺるに行けって言ったわ。
けっぺるっていうのは、底とか、深いって意味なの。

ニクラは考えた。
ニクラが読んだ本には50年前に遠い国で起こった戦争にひんぱんに風船爆弾が使われたと書かれていたし、この国で起こった戦争では風船爆弾は使われてないはずだ。

きっとふうせんばくだんってぼくたちの知らない危険なものなんじゃないかな。
とにかくそのけっぺるに行けば、きっと何かわかるよ。
ぼくたちの旅は急ぐことはないから、けっぺるを探そうよ。

キラはもちろん賛成だった。