「契約の龍」(124)
- カテゴリ:自作小説
- 2009/10/25 02:57:39
次の日の午前中は、クリスの引越しの手伝いでつぶれた。
国王の新年の謁見もつつがなく終わったようだ。
夕食後、リンドブルムを部屋の中に放して、課題を片づけにかかる。セシリア一人がいないだけで、妙に部屋がだだっ広い。…いや、もともとだだっ広い部屋なんだが。
リンドブルムは、最初、周囲にセシリアもクリスもいないことに戸惑ってようだったが、すぐにあちこち「散歩」を始めた。ふと気配を感じてそちらに目をやると、リンドブルムの「自分をかまえ」と訴える視線に出くわすので、少し閉口した。
結局、切りの良いところで構ってやるのだが、こんな甘え癖をつけたのは、いったい誰なんだ、責任者出て来い、と訴えたくなる。
何回目かの休憩中に、ドアを敲く音がした。
リンドブルムに「ハウス」と命じ、ドアを開けると、そこにクリスが立っていた。
「…えーと…クリスの部屋は、今日引っ越ししたと思うんだけど?」
「…迷惑、だったか?」
よく見れば身にまとっているのはガウンで、襟元を掴んでいる手は、白くかじかんでいる。
「…部屋が片付かなくて寝る場所に困っている、という訳では、ありませんよね?」
「ついでに言うと、昨日までいた部屋と間違えた訳でもない。…追い返すなり、中へ入れてくれるなり、早く決めてくれないか?」
声が震えているのは、寒さゆえか、他の理由でか。
「…どうぞ。散らかってますが」
今日はもう課題を進める事は出来ないだろう。
下から見上げる緑の目が、怯えてこわばる様を、何度も見た。…だから、今度もそうなる事を、半ば覚悟していた。
だが、行為のさなか、きつく閉じられたまぶたが、うっすらと開けられたとき、そこに怯えの色は見えなかった。
「愛してる」
腕の中で丸くなって、息を整えている彼女の耳元へ、そう囁いてみる。
もしかしたら眠ってしまったのでは、と思うほどの間が開き、彼女がこちらを見上げて、こう言った。
「そんな言葉が、この口から聞ける日が来るなんて、思わなかった」
酷い言われようだ。
「…きっと、冬至祭の空気がまだ残ってるのね」
雰囲気のせいにされてしまった。
「……でも、そういうところも含めて、……愛しているわ」
そうつぶやいて頭を凭せかけてくる。
「…祖母のお迎えを、お願いしたいの。アレクでないと、頼めない。…理由は…行けば解る、と思う」
外が明るくなり、寝間着姿になった彼女が、ベッドの縁に腰をおろしてそう言った。
「頼まれるのは構わないが…どこへ?」
だいたい、どうやって来るのか、も聞いていない。
「学院へ。学院の周囲を囲む森に入って、その辺をうろついているのを捕まえて、「森」の「守護者」を迎えに行きたいんだけど、どこへ行けばいい?って聞けば、案内してもらえる、と思う」
逆光になっているせいで、彼女の表情がよくわからない。
だが、学院を囲む森、というと…
「…もしかして、前に行ってた、普通じゃない方法?」
「そう。…引き受けてもらえないと、とても困る」
とても困るって……どうしてだろう?
先ほど読んできました^^。
1人でニヤニヤしながら読んじゃいましたわ^^;。
あ~チビが昼寝中でよかった♪。
(なに笑いよん??どうしたん?って聞かれるからねぇ^^;)