レストラン (1)
- カテゴリ:自作小説
- 2023/09/10 10:20:12
うわ〜、一年くらい前に書いてて、続きを書き忘れていた小説があった!
その小説、個人的にかなり好きで、楽しく書いてたんだけど、いろいろ忙しくなってしまって、書かなくなっちゃったんだよね。
う〜ん、また続きを書きたいかも。
それとは、別にまた短いのを見つけて、これも結構好きなので、載せてみます。
気が向いたら、読んでみてね。
「レストラン」
チャックとベリーはフランスの田舎町を歩いていた。
空には黄色い太陽がさんさんと輝いて、一面に広がる麦畑を照らしていた。
ふたりの影はさっきまで真下にあったけど、もうお昼を過ぎているので、少し西へ伸びていた。
おい、チャック。 ベリーが言った。
なんだ? チャックが言った。
ベリーは地平線のあたりに見える小さな白い建物を指差して言った。
あそこに行ったら、昼飯にしよう。しばらく、まともな飯を食って無いからな。
そうだな、あれはレストランかい?
チャックが小さな建物に目を凝らしながら言った。
うん、たぶんレストランかカフェだと思うよ。
それからしばらく歩くと少しずつ建物がはっきり見えてきた。
やはり、どうやら小さなレストランのようだ。
チャックとベリーは久しぶりにまともな食事にありつけると思って、少し足早になった。
レストランに着くと、こんな田舎町にしては珍しく、ちょっと洒落た造りのきれいなレストランだった。白い壁に緑色の窓飾りが可愛らしい。
ふたりはドアを開けて、中に入った。
レストランの中には誰もおらず、しんと静まり返っていた。
料理を作る音や匂いもしなかった。
チャックとベリーは顔を見合わせて、いぶかしく思った。
すいません、誰かいますか?昼飯を食べたいのですが。
ベリーが奥に向かって声をかけた。
しかし、何の音沙汰も無い。
ベリーはもう一度、今度はもっと大きな声で同じことを言った。
しかし、やっぱり誰もいないのか、答えは無かった。
誰もいないみたいだな。 チャックがベリーに言った。
ちょっと座って待ってみようか。 ベリーがそう言って、4つある丸テーブルのひとつの椅子に腰掛けた。
チャックも同じテーブルの椅子に座った。
ふたりはなんとなくレストランの様子を見渡した。
4つあるテーブルには白くきれいなテーブルクロスがかけられていて、テーブルの中央にはひとつづつ違う形の小さな花瓶があって、それぞれに違う花が活けてあった。窓がふたつあって、そのくぼみには小さな観葉植物がバランスよく配置されていた。壁にはひとつだけ小さな絵が額に入って飾られていた。
妖精のような生き物が星のまたたくパリの夜空を飛んでいる色とりどりの油絵で、このレストランにとてもよく似合っていた。
カウンターが備え付けられている壁の向こうにはキッチンがあるようで、壁に開いた差し出し口からぴかぴかに光る上等な鍋がいくつか見えた。
そんなふうにふたりが店内を眺めていると、カランと、ドアベルがなって誰かが店に入ってきた。
ふたりが振り向くと、両手に買い物袋を抱えたヒゲを生やしたやせて背の高い男が立っていた。
ああ、すいません!ほんのちょっと買い物に行っていたんです。今の時間はあまり客が来ないものですから。
男はそう言いながら、カウンターにドサドサと買い物袋を置いた。
昼飯、できますか? と、ベリーが聞いた。
はいはい、もちろんですとも!うちはメニューが無いのです。その日、市場で一番のものを使って作りますので、毎日決まったメニューが無いのです。
それでもよろしいでしょうか? と店主が言った。
ええ、なんでもいいです。久しぶりにうまいものが食いたくてね。 とベリーが答えると、 そちらのお方も同様で? とチャックにも聞いた。
はい、かまいません。 と、チャックも答えた。
店主は、急いで作りますので、少々お待ちくださいね。と、言って、店の奥のキッチンへ入っていった。
なんだかおかしなレストラだなあ。 と、チャックが言って、ベリーも うん、ずいぶん気の良さそうな親父だけど、変わってるな。 と言った。
それからしばらくまたふたりはあちこちを眺めたり、今から行くところの話なんかをしながら料理ができるのを待った。
かちゃん、と音がして、カウンターの壁の差し出し口に手だけが出てきて、料理の乗った皿が置かれた。
すると差し出し口から店主の顔半分だけがのぞいて、
お客さん、すいませんが料理を持っていってもらえますか?なにぶん1人でやってるもんで、給仕がおらんのです。
いいですとも。と、言ってふたりは立ち上がった。
カウンターに置かれた料理はもうもうと湯気を立てた大盛りのムール貝の蒸し焼きで、海の香りとニンニクのいい香りが店じゅうに広がった。
ふたりはそれぞれの皿を持ってテーブルに運んだ。
うまそうだな! ベリーはがまんできないといった様子で席につくなり手づかみで食べ始めた。
それは今まで食べたどんなムール貝よりも美味しかった。
ぷっくりとした分厚い身にはたくさんの海のジュースが含まれていて、噛むと口いっぱいに広がった。それにニンニクもまた今まで食べたことのないような香りで、ふたりともひとつ食べて、あまりの美味しさに驚いて無言で顔を見合わせた。
このあたりの地方では貝を食べたら床へ貝殻を落とすのがあたりまえだけど、あまりきれいなレストランで、ふたりともどうしようかと迷っていると、カウンターの差し出し口から店主が言った。
うまいもんでしょ?この地方の海のムール貝は特別なんですよ。
店主はそう言いながら、カウンターに殻入れの器を置いた。
殻はこれに入れてください。
ふたりは腹も減っていたこともあって、夢中でムール貝を平らげた。
ちょうど食べ終えるころ、店主がまたカウンターに皿を置いて言った。
次の料理です。すいませんが、皿がからになったらカウンターに持ってきてもらえますか?
ふたりはからになった皿とムール貝の殻入れをカウンターに持っていった。
はい、このレストランの場合は、主人がその日の朝の市場で仕入れる時に良いと思った食材を元にメニューを組み立てるようです。
いわば、即興で毎日作っているようですね。
はい、今夜にでも続きを載せますね!
また気が向いたら読んでみてください(^-^)